先生にとっての 『何だかとても大切なもの』教育相談の種~体験活動は、体験をクラスの「共通言語」に置き換えてこそ効果ありかもと~(9)
今回は クラスでの子どもたち同士やと私たちとの意思疎通を図るための方法の話です。クラスとは、なるべく多くの共通言語や 互いの理解に行きつくための方法が見つけてあると、自ずとまとまっていくものなのかなと思うようになりました。そのために体験活動から得られる共通の体験は、とても大切だと思うのです。
静岡市立中島小学校教諭・公認心理師 渡邊 満昭
クラス内で同じ状況を理解し共通して使えることば(共通言語)
毎日の授業を進めながら、時々ふと、クラスの子どもたちが共有する言葉を上手につかめたら、授業を進める大きなうねりのようなものもたぐり寄せることができるのになと思うことがあります。そろそろ私の教職も終盤なので、少し気がつくのが遅かったかもしれませんね。
そんな自分にとって未だ謎だらけの存在が、目の前の子どもたちということになります。
謎だらけなので、以前お話ししたのかもしれませんが、自分にとってわからないことは子どもたちにきいてみることにしています。(このあたり、ためらいも何もなく、聞けるようになったのは我ながら進歩です。)
ただし、聞いてみてもその答えがまた大人の私にはよくわかりません。また状況によっては子ども相互や私の言葉の意味の受け止め違いが、トラブルの元になることもあります。困ったことですね。
そこで、クラス内で同じ状況を理解し共通して使えることば(共通言語)があると便利かなと思いました。
この共通言語の手がかりの一つとしては、どのクラスにも見かける「声のものさし」があります。使い方はいくつか種類があるようですが、あらかじめそれぞれの声のレベルをクラスで共通理解できる場を設け、状況に応じてよりよいクラスのあり方の指標となるよう働きかけるものだと私は思っています。
ですから、あらかじめクラス全体で、レベルごとの声の大きさの共通体験なり意見を交わすなりして、レベルを理解し合うフォーマット(初期化)の作業があってこそ、効果を上げるものです。
あまり効果がないと感じるときの一因は、もしかしたらこの初期化(フォーマット)の作業をとばして、先生側から話し言葉のみで伝えていることもあるのかなと思います。
話し言葉は便利ですが、特に形容詞は人によって受け止めは少しずつ違いますよね。だからこそ、わかり合うためにはフォーマットの作業が大切なのだと思います。もちろんそれぞれの個性は尊重されたうえでですよ。
体験活動から共通言語を生み出す過程はとても大切
クラス開きからはじめて、クラス全体が一つのことを体験するたびに仲良くなったり、わかり合える気持ちが芽生えたりするのはなぜでしょう。これは、体験を一緒にし、それまでのバラバラな感覚をそろえるベースができたのと同時に、互いに話し合って共通の体験をどう表現するのかという、クラス独自の共通言語をつくりあげることができたからなのかなと私は考えています。
この体験をベースにして、通じ合う言語を互いに得たことの効果は計り知れません。
「誰々とどこかへ行ったね。○○したね」といつの間にか先生になった私たちも、ある温かい気持ちを思い出しつつ、旧友と話すことがあると思います。これも体験そのものよりは、もしかしたら体験によるフォーマットの効果によりお互い同じベースでわかり合える共通言語を得たからではないでしょうか。
これからのシーズン、体験的なクラスでの催しが予定されているクラスも多いことと思います。そのときには、クラス全体がわかり合い、しかも思い出ともなり得る「共通言語」を得るためにも、充分な受け止めの時間の確保を是非ともおすすめします。
渡邊 満昭(わたなべ みつあき)
静岡市立中島小学校教諭・公認心理師・学校心理士・環境教育インタープリター・森林セラピスト
いつの間にか、小中学校全学年+特別支援学級+特別支援学校+通級指導教室での担任を経験し、生徒指導主任+特別支援教育コーディネーター+教育相談担当経験も10年を超えていました。すると担任を離れたとたんに何かを忘れてしまって、担任に戻ってみると忘れていたことに気がつくということがたびたびありました。それはうまく言えないけど何だかとても大切なもの。先生を続けていくための糧のようなもの。
その大切なものについて、自分の実践と合わせお伝えしていこうと思います。
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