2022.07.12
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先生にとっての 『何だかとても大切なもの』教育相談のたね (5)

先生はついついよく動く「その子」に注目しがち。それが実は生物としての特性かもと自覚しておくこと。
今回は、先生がついつい陥りがちな「私たちの特性」についてです。題はちょっと大げさですが内容はとてもシンプルな話です。でも大切ですよ。

静岡市立中島小学校教諭・公認心理師 渡邊 満昭

ついついその子に注目してしまうのはなぜ?

連日暑いですね。
近年、教室にはエアコンがつきはじめたとはいえ教室内の温度もどんどん上がります。
それに合わせるように子どもたちの様々な動きも活溌になってきました。
理科で習ったブラウン現象のように、一人の子の動きが他の子に伝わり、授業中であってもみんなにぎやかな光景が浮かびます。

そんなとき、あなたは誰に声をかけますか?  
一つは動き出した「その子」に声をかけるでしょう。
もう一つは「その子」ではなく、全体に声をかけるでしょう。
「あとすこしでだからね。ちょっとがんばるよ」と私もついこのまえクラスで話しました。
 ほかの方法はありますが、声かけはかならず私たちがすることですし、必要なことでもあると思います。

「その子」の動きは良くも悪くも魅力的です。ついつい見つけて声をかけてしまいます。その結果、動きの多い子ほど注目したり関わったりすることになります。視界の中で動きのあるものに反応しやすいのは、私たちの生き物としての特性ですよね。たとえば、デスクトップのアイコンがもしも一つだけ動き回ったら、すぐに注目するでしょう。似たようなことが、クラス全体を見渡しているはずの私たちの眼にも、常に起こっているように思います。

その子の側から考えてみると思いつくこと

さてこのとき「その子」はどう受け止めているのでしょう。

私たちは、強めの指導が必要なときでもあっても、「その子」の受け止めの様子を見守り、またどこかでフォローアップの声かけをするのではないでしょうか。なるべく「その子」が納得し、本来の力を尽くせるように努めるものと思います。

以前話したように、私は街角で卒業生たちから声をかけられることがしばしばあります。思い返してみると、声をかけてくれる子は、それなりによく動き、活溌だった子が多そうです。

なぜそうなるのかと考えてみると、若かった頃は、真っ先に目に飛び込んでくる「その子」に、ためらいなく限られた時間を割いて多くの声かけをしてきました。教育技術が未熟なので、とにかく「その子」を落ち着かせて、授業に参加させることで精一杯だったと思います。結果的に先生とのやりとりが多くなってしまった「その子」は、それでも先生というものにちょっぴり親しみの上乗せをしてくれていたのかもしれません。

落ち着きがなかった子どもの頃の自分にも、たぶん歴代の先生は指導と同時にたくさん声をかけてくれたのでしょう。だからいつのまにか先生になりました。
私の他にもそういう方はいることでしょうね。

でも、この声かけの方法だけではいけないなあと、いつの頃からか思うようになりました。それはまた次回お話ししたいと思います。

渡邊 満昭(わたなべ みつあき)

静岡市立中島小学校教諭・公認心理師・学校心理士・環境教育インタープリター・森林セラピスト


いつの間にか、小中学校全学年+特別支援学級+特別支援学校+通級指導教室での担任を経験し、生徒指導主任+特別支援教育コーディネーター+教育相談担当経験も10年を超えていました。すると担任を離れたとたんに何かを忘れてしまって、担任に戻ってみると忘れていたことに気がつくということがたびたびありました。それはうまく言えないけど何だかとても大切なもの。先生を続けていくための糧のようなもの。
その大切なものについて、自分の実践と合わせお伝えしていこうと思います。

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