先生にとっての 『何だかとても大切なもの』子どもとの教育相談のこつ&クラス経営・先生のわかりやすさは安心のもと (2)
繰り返しになりますが、『何だかとても大切なもの』とは、ほんとうに些細なことで、すぐ忘れてしまうようなことだけど、つれづれ先生を続けているうちにふとまた出会う、大切なもののことです。この「先生のつれづれ日記」の主旨もそのあたりにあるのかも。
静岡市立中島小学校教諭・公認心理師 渡邊 満昭
覚えていますか?担任の先生を
エビデンスを得るほどの事例数もないし、はっきりしたデータも得られないでしょうが、先生が、『何だかとても大切なもの』の感覚を持つことで、その子のアタッチメントの一部を担う存在となり、元気を取り戻す子もいるのだと思います。それは温かみのある学級経営を望むのなら不可欠なことです。
その大切なものを、思い出してはひとつひとつ書き留めておきたいと思います。
今回の『何だかとても大切なもの』、それは先生のわかりやすさのことです。
さて、ここで一つ問題です。あなたは小さな頃から今までの、担任だった先生の名前や顔を覚えていますか。私は、全て覚えていることが当たり前と思っていました。ところが身内は憶えていないとのこと。そこで、出身大学で講義をした時に、講座の大学生数百人に聞いてみたのですが、結果は芳しくありません。私たち先生の印象とはそのくらいのものなのでしょうか。
むろん私たちは大人でしかも先生なので、クラスの子どもたちが何人であっても一人一人の名前や顔を覚えているつもりです。当然どの子も、そのくらいの認識で私たちを見てくれると思ってしまいます。
ところが学級の子どもの側からしてみれば、目の前はキラキラとして魅力的な同級生達でいっぱいで、はるか頭上の先生の顔はなかなか見えません。ただ声が遠くからひびいて来るだけです。何も工夫がなければ、その子にとって先生は教室にいるのかも怪しいくらいです。
視線が合わない子や、うつむきがちな子のなかには、人の顔や名前が覚えにくいケースもあります。いつも会って言葉を交わすこともあるのに、なぜか顔がわからず声をかけるのもためらうのだそうです。それなのに、私たちは「何かあったら先生に相談するように」とよく言います。ほんとうに相談支援が必要なその子は、もしかしたらあなたが担任の先生なのかの確証すら持てないでいるのかも知れないのに。
そこで、私の場合は、コマーシャルをすることがあります。子どもたちには「和尚さん?」とよく言われるので、「おしょうさんじゃなくてまんしょう(満昭)。マンション先生じゃなくてときどきアパートさん」というかんじです。ちょっとおもしろい先生だと思ってもらえたらしめたものです。またいつのまにか自分のキャラクターもできました。うつむきがちな子には、その場で自分のキャラクターを描いて見せます。これで少しは覚えてもらえるのではないかと思っています。街角で、もう大人になったかつての子どもたちにたびたび声をかけられるのも、そのわかりやすさのおかげかもしれません。
目の前にいる大人の人が、自分のことをいつも見守り、時として相談にも乗ってくれる先生なんだと確信できることで、その子のクラスや学校での安心度はぐっと高くなると思うのです。
渡邊 満昭(わたなべ みつあき)
静岡市立中島小学校教諭・公認心理師・学校心理士・環境教育インタープリター・森林セラピスト
いつの間にか、小中学校全学年+特別支援学級+特別支援学校+通級指導教室での担任を経験し、生徒指導主任+特別支援教育コーディネーター+教育相談担当経験も10年を超えていました。すると担任を離れたとたんに何かを忘れてしまって、担任に戻ってみると忘れていたことに気がつくということがたびたびありました。それはうまく言えないけど何だかとても大切なもの。先生を続けていくための糧のようなもの。
その大切なものについて、自分の実践と合わせお伝えしていこうと思います。
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