先生にとっての 『何だかとても大切なもの』 先生も時には教育相談 研究授業をするときは「メンタルリハーサル」でちょっぴり不安を減らせるかも(3)
子どもたちと私たちが毎日欠かせない大切なもの、その一つは授業です。でも研究授業の授業者ともなると、やはり緊張したり不安になったりするものですよね。
初任の頃、こうした授業は普段通りにやればよいと教わりました。それから何十年もたったのですが、私にとって普段通りとはなかなか難しいことのようです。あなたはいかがですか。
今回の『何だかとても大切なもの』、それは授業は授業でも研究授業への臨み方のことです。授業内容や教材のことではありませんよ。
静岡市立中島小学校教諭・公認心理師 渡邊 満昭
スポーツの経験から得られたヒント
ところで、私はいまだにあるスポーツを続けておりまして、観客のいる大会に出ることがあります。
はじめのころは緊張のあまり、それこそ地に足が着かないまま試合が終わってしまいました。
長い間、思うように自分の力を出せず試行錯誤が続きましたが、試合への臨み方が整うにつれ、結果が出はじめました。
そこで、ふと思ったのは、「これって学校での研究授業に応用できるかも」ということです。
平たく考えれば、参観者ありの独特の雰囲気のなかで、授業時間いっぱい、子どもたちと共に創造的・体験的な活動を進めるわけですから、共通するところがありそうです。
研究授業への応用! 不安を減らすメンタルリハーサルの効果
さて、私がスポーツから応用しているのは、「メンタルリハーサル」という心理的な技法です。
スポーツのなかでは一般的な方法なので、ご存じの方も多いと思います。
事前に頭の中に教室やグランドの情景を描き、どのタイミングで何を提示し、どう発言するのか、子どもたち一人一人はどんな反応でどう活動してくれるのか、授業のポイントとなる全体の情景はどんな感じか等、順を追って授業のまとめまで思い浮かべていきます。
「ここで、すかさず○○さんがこう言って」など、リアルに浮かんでくるようなら、きっと子どもたちとの関係も良好なのでしょう。
活気ある授業が期待できるのではないでしょうか。
課題となりそうなことも、教材提示を忘れてしまいそうな時も、事前に頭の中で修正しておくと安心できます。
時間があれば予測されることのパターンを変えて、何度か試みるのもよいと思います。
これで絶対大丈夫というわけでもありませんが、先の見通しがもてることで私の場合は不安が減り、ずいぶん授業が進めやすくなりました。
研究授業は、やはり授業者にはそれなりの負荷がかかるものです。
うまくいくこともいかないこともあるでしょう。
ただ、これまでの子どもたちとの記憶を振り返ってみると、授業でのすばらしい動きやほんとうに感心した発言は、研究授業の時のものが多いようです。
「よくぞ活躍してくれたね、ありがとう」ということなのだと思います。
こうして、節目ごとの研究授業で『何だかとても大切なもの』をつかみ、また新しいことを始めることで、私はこれまで先生を続けることができたのかなと思っています。
渡邊 満昭(わたなべ みつあき)
静岡市立中島小学校教諭・公認心理師・学校心理士・環境教育インタープリター・森林セラピスト
いつの間にか、小中学校全学年+特別支援学級+特別支援学校+通級指導教室での担任を経験し、生徒指導主任+特別支援教育コーディネーター+教育相談担当経験も10年を超えていました。すると担任を離れたとたんに何かを忘れてしまって、担任に戻ってみると忘れていたことに気がつくということがたびたびありました。それはうまく言えないけど何だかとても大切なもの。先生を続けていくための糧のようなもの。
その大切なものについて、自分の実践と合わせお伝えしていこうと思います。
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