2018.09.24
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「荒れ」と向き合う詩の授業≪実践編≫(7)

子どもたちの「自尊感情」を高め、少しでも「荒れ」が見られる学校の現状を改善しようと、全校全職員で「詩の指導」に注力することが決まったA小学校。その指導法については、校長から「先生方の創意工夫で」という指示のみでした。

今回で、第23期連載の最終稿となります。

なお、これまで本文中で採り上げた児童の作品等につきましては、成年した元児童のものにつきましては基本的に本人に、未成年の元児童のものにつきましては本人および保護者の掲載許諾を事前に得ておりますこと、念のため申し添えます。

大阪府公立小学校 主幹教諭・大阪府小学校国語科教育研究会 研究部長 杉尾 誠

A小学校のその後

「荒れ」が目に見えて進んでいたA小学校。学校の立て直しを「詩の力」で…なんて、半信半疑どころか「零信全疑」くらいの意識で実践を始めました。試行錯誤の一年が経過した頃…本当に、本当に驚くべきことに、学校全体が落ち着きを取り戻しました。それどころか、詩をほぼ毎日読み書きする習慣が身についた子どもたちは、学力もぐんと伸びていったのです。しかも、「詩」の指導に注力したはずが、翌年の「全国学力・学習状況調査」の結果を見ると、なぜか算数の力までもが、大きく伸びていたのです。

ついにA小学校は、メディアで「奇跡の学校」と紹介されるに至りました。校長に「だまされたつもり」で始めた詩の実践は、いい意味で本当に「だまされた」、不思議で素敵な実践となりました。

A小学校を変えたもの

振り返ってみると、この実践が成功した要因は、大きく3つあったと思います。

1.学校全体で継続的に取り組んだこと
どんな教育実践でも、教室単位での取り組みは、その学級のみで効果がとどまってしまうことでしょう。学校全体で共通の目標を立て、同じ思いで粘り強く一つの実践(今回は「詩の指導」)に焦点化できたことは、私自身にとっても大変分かりやすく、ありがたかったです。また、先生方の創意工夫の姿勢が尊重されたことも、それぞれの探求心がくすぐられ、心地よく取り組めたように思います。

2.子どもたちの意欲を高め続けられたこと
子どもたちは、毎時間スモールステップで与えられる課題をクリアすることで、そのたびに達成感を得ることができました。また作品を掲示したり、詩集や学級通信などの媒体で随時紹介することで、その達成感が長く維持され、そしてまた新たな達成感を得ようと、子どもたちは主体的かつ意欲的に学習に取り組むことができました。私もいつしか、子どもたちのおかげで「褒め上手」になっていたように思います。

3.保護者の方々の意識が大きく変わったこと
これまで学校に対して、あまり期待をお持ちでなかったり、やや批判的な姿勢で向かわれていた保護者の方々が、子どもたちの変わっていく様子に合わせて、我々の取り組みに好意的かつ協力的になっていただけました。保護者の方々の温かいご理解は、当然のことなのですが、学校教育を推進する上でとても大きな力となりました。

第24期連載では

今回で、第23期連載は終了となります。お届けしたい子どもたちの作品はまだまだあるのですが、限られたスペースですので、いくつか特徴的なものの紹介にとどめさせていただきました。半年間拙文にお付き合いいただき、またご意見やご感想をたくさんお寄せいただき、誠にありがとうございました。

引き続き、10月から始まる第24期でも、連載を担当させていただきます。今後は少し幅を広げ、全国の先生方にもすぐに追試をしていただける「自尊感情を高めるための、書く力の育成」に向けた、具体的な指導実践の内容を紹介していきたいと考えています。

第24期連載も、どうぞよろしくお願い申し上げます。

杉尾 誠(すぎお まこと)

大阪府公立小学校 主幹教諭・大阪府小学校国語科教育研究会 研究部長
子どもたちの「自尊感情」を高めるため、「綴方」・「詩」・「短歌」・「俳句」などの創作活動を軸に、教室で切磋琢磨の日々です。その魅力が、少しでも読者の皆様に伝われば幸いです。

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