2018.06.25
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「荒れ」と向き合う詩の授業≪実践編≫(2)

子どもたちの「自尊感情」を高め、少しでも「荒れ」が見られる学校の現状を改善しようと、全校全職員で「詩の指導」に注力することが決まったA小学校。その指導法については、校長から「先生方の創意工夫で」という指示のみでした。
前回私の学級では「作戦(1)」を実践し、確かな手ごたえを得ました。今回は「作戦(2)+(2')」実践してみます。

大阪府公立小学校 主幹教諭・大阪府小学校国語科教育研究会 研究部長 杉尾 誠

いよいよ、詩作指導実践初日

その頃のA小学校職員室では、「詩の指導」についての話題で持ち切りでした。私より先行して詩を書かせたある先生が、「子どもたちに『詩を書け』って言っても『わからん』の大合唱、反抗されるわ紙を破かれるわで、やっとこさ書いた子もせいぜい数行、もうまいったわ…」という失敗談を語っておられました。同じように、うまくいかないといった声をたくさん拝聴しながら、自分の実践の参考にしようと、ひたすら心の中でメモを取り続けていました。

先生方の貴重な反省を心に刻み、いざ私も担任する教室へと、大量の「作戦(2)」の資料を携えて、詩作の指導に向かいます。

作戦(2)「好きな詩をひたすら視写」

前回の「作戦(1)」で「詩のシャワー」をたくさん浴び、「詩」というものが〈何だか心地よいもの〉と捉えることができるようになった子どもたち。その中でも一番人気だった児童詩を、ありとあらゆるところから集めてきて、オリジナルの「児童詩集」を作り、印刷して全員に配付しました。

その詩集と、「詩作用紙」も同時に配付し、それぞれの心に響いた詩を視写するように指示しました。【学ぶことは真似ること】という格言があるように、詩を書くことを学ぶには、まず詩がどのような形式で書かれているか、どのような心情をもって書かれているか、その世界観を真似して書いてみることが大切だと考えました。

そもそも、学習に向き合うことが難しい子どもたちでしたが、明確な指示のもと、学習課題の道のりがはっきりしている場合は、落ち着いて取り組むこともできるようでした。本時では、読むことに熱中しすぎて書き出しが遅い子は数名いましたが、不満や反抗などの声はほとんどなく、穏やかに、そして和やかな雰囲気で視写に取り組んでいました。また、「先生、もう1枚書いていい?」の声には最大限の賛辞で応え、新しい用紙を手渡しました。

作戦(2’)「好きな詩をひたすら視写+α」

そのうちに「先生、この詩ちょっと変えてもいい?」という子どもが現れました。「よっしゃ!」という歓喜の声を心の中に抑え込みながら、「どうして変えたいの?」と尋ねました。「だって、この△△ってところ、僕は〇〇って変えたほうがいいと思って…そんな気がしたから」とのこと。

何気ない発言のようですが、この子どもは、自分の詩の世界観を構築しようと、大切な一歩を踏み出し始めているのです。「もちろん、あなたがそう思うならいいですよ」と答えると、その子ではなく「え、いいんや!」とあちらこちらから声が沸きました。どうやら、同じことを考えながら視写している子が、かなりいたようです。

それからというもの、用意した詩作の紙があっという間になくなり、急いで職員室へ増刷に走るなど、おおいに視写が盛り上がってきました。いや、厳密には視写と呼べる一線は、すでに越えていました。素敵な既作の児童詩から、新たにまた素敵な児童詩がたくさん生まれたのです。

詩作指導実践初日の成果

子どもたちが視写に+αした作品が、数十点集まりました。一部を同意語に変えただけのものも、それはそれで貴重な作品として紹介し、「もっと変えよう」と取り組み、原型がわからないほどになった作品は、どれが原作か当てるクイズもしました。1時間で終わるつもりの詩作の授業が、当然のように次の時間まで延長していました。

こちらの意図を越えた子どもたちの頑張りに、指導者としてこの上ない喜びを感じました。いや、実際には子どもたちの方がもっともっと、〈不人気〉だったはずの国語の学習で、この上ない達成感を得ていたのでしょう。掲示されたそれぞれの作品を味わいながら談笑し合う姿が、私にそう確信させてくれました。

(続く)

杉尾 誠(すぎお まこと)

大阪府公立小学校 主幹教諭・大阪府小学校国語科教育研究会 研究部長
子どもたちの「自尊感情」を高めるため、「綴方」・「詩」・「短歌」・「俳句」などの創作活動を軸に、教室で切磋琢磨の日々です。その魅力が、少しでも読者の皆様に伝われば幸いです。

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