2018.06.06
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「荒れ」と向き合う詩の授業≪実践編≫(1)

前回までの連載(1)(2)につきまして、大変な反響をいただき、ありがとうございました。しかしながら、少し踏み込んだ内容であったため、こちらの意図とは少し違った反響もいただきました。記事で私が伝えたいことが読者の皆様に正確に伝わるように、本稿からシリーズテーマを改題し、実践中心のお話をさせていただきます。引き続き、よろしくお願いいたします。
また、今後本文中で採り上げる児童の作品につきましては、成年した元児童のものにつきましては本人に、未成年の元児童のものにつきましては本人および保護者の掲載許諾を事前に得ておりますこと、あらかじめ申し添えます。

大阪府公立小学校 主幹教諭・大阪府小学校国語科教育研究会 研究部長 杉尾 誠

詩の指導 1日目

子どもたちの「自尊感情」を高め、少しでも「荒れ」が見られる学校の現状を改善しようと、全校全職員で「詩の指導」に注力することが決まったA小学校。その指導法については「先生方の創意工夫で」とのみ、校長から指示がありました。さてどうしたものかと、学年団の先生方と遅くまで話し合い、翌日の実践初日を迎えました。

1時間目の国語の時間、子どもたちに「『詩』を知ってる人はいますか」と聞いたところ、手を挙げたのは五分の一ほど。実は採択教科書には、毎年巻頭詩を含め、数編の詩が掲載されており、授業でも取り扱っているはずなのですが、子どもたちの意識のなかには「詩」というものが何なのか、しっかりと根付いていないようでした。

そういえば、4月の学級開きで「好きな授業」のアンケートを取った際、国語が「ダントツ」の最下位であったことを思い出しました。毎日必ず行われる国語の時間ですが、教科書やノート等の忘れ物が非常に多く、貸し出し用の複写した教科書と、枠線の入ったノート替わりのプリントを、大量に用意し消費している現状もありました。

そこで、昨日から綿密に準備していた「作戦(1)」を実行することにしたのです。

作戦(1)「詩のシャワーを大量に浴びせる」

毎時間の授業には、必ず指導者の「ねらい」があるかと思います。この1時間については、「子どもたちが多くの詩と出合いを楽しみ、一人ひとりの心にそれぞれの響きを」でした。つまり、こちらから意図的に子どもたちに「詩のシャワー」を大量に浴びせ、どこかでそのよさに気づき、そしてじっくり味わわせたい、という願いがありました。

私の手元には、あらゆるところからかき集めた「詩」が数百篇ありました。小学校に入学して、最初に出合った国語の教科書の詩、谷川俊太郎さんや金子みすゞさん、工藤直子さんなどの著名な作家の詩、同じ世代の小学生が作った児童詩など、適宜子どもたちの反応を見ながら、読み進めていきました。

まずは、出所を伏せて1年生の国語の教科書の巻頭詩を読みました。反応はわずかでしたが、気づいた子は「やった(学習した)、知ってる!」と、嬉しそうでした。続いて、美しい表現が散りばめられた詩や、動物や昆虫が一人称で語るなりきり詩、語感豊かで軽妙な言葉遊びの詩などを、次々と紹介しました。読み上げるだけで理解しにくいもの数篇は、拡大コピーをして黒板に貼りました。退屈そうに頬杖をついている子もいましたが、教室全体としては反応が、だんだん賑やかになってきました。

一番人気は・・・

そして、最も子どもたちの反応がよかったのは、意外なことに、小学生児童が創った詩でした。一つひとつ読み上げるなかに、好意的な反応、共感的な反応、否定的な反応など、様々ありましたが、無反応な子どもはほとんどいなかったように記憶しています。必ず「なんやねん」「おもんない(面白くない)」「知らんわ」などと、否定的な言葉でしか反応を示さない子でも、その表情は穏やかだったり、笑顔だったりと、心の中とは裏腹な様子も垣間見えていました。

たった45分の授業でしたが、私にはもっともっと長く、永遠に続いていくような時間にさえ感じられました。新学期以降、これほど子どもたちが生き生きとし、盛り上がった国語の授業はありませんでした。確かな嬉しい手応えを得て、いよいよ2時間目、詩作の指導に入ります。

(続く)

杉尾 誠(すぎお まこと)

大阪府公立小学校 主幹教諭・大阪府小学校国語科教育研究会 研究部長
子どもたちの「自尊感情」を高めるため、「綴方」・「詩」・「短歌」・「俳句」などの創作活動を軸に、教室で切磋琢磨の日々です。その魅力が、少しでも読者の皆様に伝われば幸いです。

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