2018.05.28
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道徳一年生(NO.4 「文章を読み取らせるための支援をしよう!」)

特定非営利活動法人TISEC 理事 荒畑 美貴子

 前回、前々回の2回に渡って、教材文を読み取るための支援の仕方をお話ししてきました。挿絵や俯瞰図を使うこと、イラストや漫画などの情報量を制限したり、カラー表示などに気をつけたりすることが有効であるといったことです。これらのことは、今後ICTの環境が進めば、可能性を大きく広げることができるだろうと思います。特に電子黒板やタブレット端末の使用によって、支援が円滑なものになっていくと考えています。

 しかし、それらの環境が全国的に整うまでには、まだ時間がかかるでしょう。それに、私は何もかもを提示することがいいと申し上げているわけではないのです。全てを画像で示すようなことがあると、子ども達が自分でイメージする力は削がれてしまいます。支援をしつつも、力を伸ばしていく配慮も忘れないでほしいと思います。また、長時間にわたって、画像を見続けることの弊害も考慮にいれなければなりません。メリットやデメリットを確認しながら、教師のエネルギーを最小限にしつつ、大きな成果を上げていってほしいと願っています。


 さて、今回は、文章そのものの読み取りに関して、効果的であると思われる支援について考えてみたいと思います。もちろん、これらの支援は国語や他教科の指導でも有効です。ただ、繰り返しになりますが、短時間で内容を読み取るという道徳授業の特徴があるので、支援も効率のよいものを行なっていくといいと思います。

【ルビを付ける】

 漢字を全く読むことができない子どもがいます。また、読み取りには直接関係がないかもしれませんが、数の把握が困難な子どももいます。私が若いころは、漠然と学力が低いのだろうという見立てをしていました。しかし、近年になって困難さを把握するような努力がなされ、本人の勉強不足が原因というよりは、学習障害なども要因のひとつとして見立てることができるようになってきました。

 漢字が読めないのであれば、ルビを付ければいいだけのことです。ひらがなを読んで内容を掴むことができるのであれば、そういった支援を積極的に行っていってほしいと思います。

【読み聞かせる】

 漢字の読みが不自由というよりは、読むことそれ自体に抵抗を示す子どももいます。目から情報を得ることが苦手な子ども達です。しかし、読み聞かせによって耳から情報を獲得し、内容を把握することができることもあります。

【言葉の意味】

 大人であっても同様ですが、文章の中で意味がわからない言葉に出会うことがあります。そのようなときには、前後の文章から意味を推測することもありますし、同じ言葉に何度も出会うことで、次第に意味を理解できるようになることもあります。また、辞書で調べたり、知っている人に聞いたりして理解することもあります。

 ただ、どの言葉の意味がわからないかということは、子ども一人一人の経験や、言葉に対する興味や関心に左右されます。また、短時間で読み取りをしていく道徳の授業では、辞書で調べる時間があるとは思えません。もちろん、道徳の教科書は発達段階に応じて作られていますし、難解な言葉の意味を脚注として示していることもあります。それでも不十分だと思うときには、別の言葉に言い換えて示していってほしいと思います。

【セリフ】

 登場人物のセリフの応酬が続くと、誰がこのセリフを言っているのだろうとわからなくなることがあります。実のところ私は、小説を読んでいると、セリフの流れに戸惑うことがあるのです。これは、私自身が、文章を読み取るのが苦手であるということの証であると思うのですが、同じように戸惑う子ども達もいると思われます。

 短い文章であったり、セリフの数が限られていたりするときはいいとしても、やりとりが数回続くようなときには、誰のセリフであるのかを、確認していくといいでしょう。

【比喩】

 例えば、「森に入ると突然、金色の風が吹いてきた」のような表現があると、風の中に金粉でも入っていて金色に見えるのだと捉える子どもがいます。また、風は金色であるはずがないので、この文章を間違っていると考えることもあります。そのようなときには、「これは比喩という表現で、光があたって、風がまるで金色に見える様子を表しているんだよ」とはっきりと伝えることが有効です。比喩であることを示せば、こだわりをもたせずに済むからです。

 一方、比喩にはメリットがあることを教えていくことも大切です。例えば、「まるで綿飴のような、ふわっとした雪が降ってきた」といった表現によって、雪の様子をイメージしやすくなるからです。

荒畑 美貴子(あらはた みきこ)

特定非営利活動法人TISEC 理事
NPO法人を立ち上げ、若手教師の育成と、発達障害などを抱えている子どもたちの支援を行っています。http://www.tisec-yunagi.com

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