2026.02.11
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教育活動を「スタンプラリー」にしないために

今年度も残りわずかとなり、来年度の年間行事予定も固まってきている頃だと思います。
ここで一度立ち止まって考えたいのが、教育活動が予定どおり実施すること、そのものを目的化していないか、という点です。
今回は、ある大学の先生にかけていただいた印象的な言葉を手がかりに、考えていきます。

千代田区立九段中等教育学校 廣瀨 紘太郎

探究活動のプログラムを担う分掌業務

勤務校では昨年度から、探究活動のプログラムを計画・実施する業務に携わっています。とりわけ中学生の総合的な学習の時間における探究活動を担当し、本校の教育理念・教育目標・グランドデザイン等を踏まえながら、社会の動きと生徒の実態に照らして、実りのある学びになるよう担当部署で試行錯誤しています。

「行事をスタンプラリーにしない」という指摘から考える

昨年、本校のプログラムを充実させるために大学の研究室を訪れた際、先生から言われたのが「行事をスタンプラリーにしない」という一言でした。その瞬間、思わずハッとしました。(ここでいう「行事」とは、特別活動における儀式的行事に限らず、総合的な学習の時間の校外学習なども含む、広い意味での教育活動を指しています)

私が担当する学年の校外学習は大きく二つ、地域探究系のフィールドワークと企業連携プロジェクトがあります。私は「フィールドワークで情報収集を学び、企業連携の課題解決学習につなげる」といった一年間のイメージは描いていました。しかし、正直に言えば、そこで止まっていたのだと思います。

つまり、「今年の活動が、来年の学びの土台としてどう機能するのか」「次年度の学年コンセプトにどう接続するのか」といった縦のつながりを、十分に詰め切れていませんでした。

もちろん勤務校では、各学年のコンセプトや学びのつながりはすでに設計されています。しかし、問題は、そのコンセプトが教職員にどれほど共有され、生徒の学びとしてどれほど実感を伴っているかが見えにくいことです。コンセプトが掲げられているだけで、日々の授業や活動の中で生徒の言葉になっていないと、活動はこなすものになりやすい。これが、先生の言う「スタンプラリー化」なのだと腑に落ちました。

では、スタンプラリー化を防ぐために何が要るのでしょうか。鍵は、抽象的なコンセプトを、生徒の具体にまで落とし込むことだと考えています。

すでにどこの学校でも実施していると思いますが、
「この活動で何ができるようになるのか」
「以前の学びがどう活かされたか」
「今後、どう活かしていくか」
などといった「接続」を意識することが重要です。

コンセプトが、行動と振り返りにまで降りてくると、点が線になると思います。

教科の学びにおけるスタンプラリー化の問題

この「スタンプラリーにしない」という警句は、教科の学びにも転化できます。例えば国語科の教材を考えると、大きく分けて「文学的文章」「説明的文章」「実用的文章」「古文」「漢文」があります。しかし本来的には、それぞれを独立して学ぶことが目的ではなく、そこに通底する本質的な問いや資質・能力を育てるための素材であるはずです。さらに言えば、「話す・聞く」「書く」「読む」の領域も同様で、重点の置き方は違っても互いに響き合い、往還するものだと思います。

全全教科・全教育活動に広げて考える学びの設計

以前、放課後の課外プログラムで、ある漫画作品を題材に国語科・社会科・数学科で教科横断的に講義したことがあります。その際、参加した生徒が「教科は一方的に決められた枠組みに過ぎない」と言っていたのが印象的でした。もちろん教科(教科の見方・考え方)には役割があります。ただ、生徒の目に「バラバラな枠」として映るなら、学校全体の学びは点在してしまいます。だからこそ私たちは、教科の枠を超えて育てたい資質・能力を学校全体で共有し、それを各教科・各活動の具体に落とし込む必要があります。

行事や活動を増やすことは、教育の充実と直結しません。むしろ、大局を見て学びをつなぎ、抽象と具体をバランス良く往還させていくことが、教育活動をスタンプラリーにしないための条件だと考えています。来年度の計画づくりが進む今こそ、点を増やすのではなく、線を太くする設計を意識していきたいと思います。

廣瀨 紘太郎(ひろせ こうたろう)

千代田区立九段中等教育学校


「活動あって学びあり」をモットーに、日々研究を重ねています。特に国語科教育では、アダプテーション(翻案)の手法を取り入れた授業を実践し、生徒の深い学びを目指しています。
教科の枠を超えて、多様な視点からものごとを捉え、表面的なことだけでなく、その背後にある本質に迫ることを大切にしながらよりよい教育のあり方を皆さんとともに探究していきたいです。

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