学級経営講座~ぶれない学級づくりのための「一本の筋」とは(第2回)
「学級経営講座」の第2回です。
今回は、学級経営の在り方について、どのような「観」をもって学級経営をするのかということを書いていこうと思います。
明石市立高丘西小学校 教諭 川上 健治
経験と情報に頼るだけでいいのか?
前回、紹介したように「学級経営」という領域は、大学在学中に体系的に学んだことがある人はほとんどいないと思います。だからこそ、自分の今までの経験や先輩からの教え、あるいは、SNSなどで得た情報を頼りに、学級経営を行っていることが現状ではないでしょうか。もっと言えば、日々子どもたちと向き合う中で、一年間の見通しをもった学級経営を考えている余裕などないという先生もいらっしゃるかと思います。
もちろん、自分の経験や先輩からの教え、SNSの情報に頼ることを一概に否定しているわけではありません。しかし、そこに一本の筋が通っているかということが問題です。この筋がなければ、時には、良い意味で手立てと児童の実態とが衝突し、劇的な変化が見られることもあります。
しかし、それに味を占めてあれもこれも手を出してしまうと、いずれ指導にもぶれが出てきます。ぶれが出きてしまうと、目の前の子どもたちは混乱し、そして信用をなくしていきます。すると、学級が落ち着かなくなるという悪循環に陥ってしまいます。特に、この6月というのは、よく「魔の6月」と言われるように、教師と子ども、子ども同士に慣れが出てきて、荒れやすくなる時期でもあります。そこにぶれた指導が加わってしまうと、やはり落ち着くものも落ち着かなくなります。
「一本の筋」が学級を救う
赤坂(2017)も一流の「まばゆさ」のある実践を真似することに警鐘を鳴らし「どんな子どもたちを育てたいのかというビジョンを確認し、今、やっている手立てを今一度見直して、再構成してみることによって、みなさんのやっている実践の方向性がはっきりしてくる」と指摘しています[i]。この指摘にある「どんな子どもたちを育てたいか」という言葉が、一本の筋ということになります。
では、一本の筋はどのようなものがよいのか。これは、100人教師がいれば100通りの考えがあるかもしれません。その中でも、私が推奨する一本の筋は、「民主的な集団」を目指すというものです。ここでいう「民主的」とは、「マイノリティーを排除することなく対等な立場を基本軸としながら対話を重ねることを通して、合意形成を図ろうとすること」と定義したいと思います。つまり、教室にいるすべての人が「対等」であり、「対等」だからこそ、「対話」を重ねて、合意形成を図っていくという「観」のもと、学級経営を行うのです。
例えば、児童同士のもめごとが起こります。そこで、例えば、「教師」という肩書を振りかざすのであれば、「教師」がもめごとを解決するという方法をとることになります。しかし、すべての人は「対等」であり、「対話」を通して合意形成を図るという「観」に立てば、教師も間に入り、児童同士が「対話」をする中で、一緒に解決を図っていくという方法をとることができます(もちろんもめごとの程度にもよります)。
教師がすべてもめごとを解決していくのか、それとも、児童同士が対等な立場のもと対話を重ね、合意形成を図っていく中でもめごとを解決していくのか。児童の未来を考えれば、どちらが最適解かはご理解いただけるかと思います。
「民主的な学級」はどうつくるのか?
そして、「民主的な集団」というのは、教育基本法(2007)の第一条にも、教育の目的が「人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成」[ii]として挙げられている通り、教師全員が備わっていなければならない必要十分条件の「観」と言えます。しかも、「民主的」というのは、幅広くとらえることができるため、各々の教師のキャラクターにも左右されることがありません。誰もが目指すことのできる一本の筋だと言えます。
ただ、どうすれば、「民主的な集団」に近づいていくのかという疑問があります。それは、また次回に紹介したいと思います。
【追伸】
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参考資料

川上 健治(かわかみ けんじ)
明石市立高丘西小学校 教諭
クラスの全員が楽しく学び合い「分かる・できる」ことを目指して日々授業を考えています。また、様々な土台となる学級経営も大切にしています。
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