2026.03.05
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給料の20%を学びに使い続けた小学校教師の「自己投資物語」

通帳は軽く、本棚は重い。
若い頃の私の人生を一行で書くなら「給料の20%を学びに使い続けた20年」。
一人の教師の自己投資の記録です。

目黒区立不動小学校 主幹教諭 小清水 孝

給料の20%を自分の成長へ投資するという決断

読者の皆さんは、自分の時間と給料の何%を、自分自身の成長に投資するでしょうか。
小学校教師になって20年。初任者の春に下した一つの決断があります。時間と給料の20%を教師修業に投資するという覚悟を決めました。金融商品ではなく、自分自身の未来に投資すると決めたのです。

初任の頃の手取りは22万円でした。そのうち4,5万円を、毎月必ず学びに充てました。教育セミナーの参加費と旅費、書籍代、そして現場を歩くためのフィールドワーク費用です。
当時、実家を出ており、初任者の頃も一人暮らしをしていました。家賃、光熱費、食費、携帯電話料金、母への仕送りに振り分ければ、残額は5万程度。貯金など夢のまた夢でした。

それでも20%の投資を続けました。毎月、必ずです。なぜなら、それが未来の自分への前払いだと本気で信じていたからです。三年間、淡々と、しかし情熱を秘めて続けました。投資はやがて習慣となり、私の背骨になりました。

全財産6000円の時代を支えた教師修業の積み重ね

20代半ば、私の全財産は6000円でした。のちに妻となる女性と会う日、通帳は風のように軽かったのです。
平日は起床後一時間、夜に二時間、本と向き合いました。何度も本を握ったまま眠りに落ちたことを覚えています。土日祝日は教育セミナーへ足を運びました。予定がない日は図書館にこもり、6時間教育書を読み、コピーしたものをノートに貼り付け、書き込みました。

児童と同じノートを買い、子どもが書くであろう言葉を予測しました。1マスまでこだわって事前にノートを作りました。授業をイメージしながら毎時間分の略案を書きました。この積み重ねこそが、私を鍛えてくれました。

妻子との時間を最優先に選んだ「5%」の葛藤

20代半ばで結婚し、子どもが生まれました。生活は一変し、時間もお金も、独身の頃のようには使えなくなりました。教師修業への投資の時間やお金は、20%から5%程度へと減りました。
この頃、焦りがなかったと言えば、嘘になります。周囲が成長していくように見え、取り残される不安もありました。しかし、私は自分が育った家庭環境もあり、妻子との時間を最優先にすると決めました。

もし、読者の皆さんが同じ立場なら、何を選ぶでしょうか。成長でしょうか、家族でしょうか。それとも両方でしょうか。
親にとって、育児より大切なものはあるでしょうか。答えは、私の中では明白でした。学びは後からでも取り戻せます。けれども、幼い我が子との時間は二度と戻りません。あの選択を、私は今も誇りに思っています。遠回りに見えた道こそが、私の幹を太くしました。

家族との生活と再び20%の自己投資を両立する

2人目の子どもが生まれ、育児に慣れてきました。子が育ち、やがて手が離れ始めました。生活にわずかな余白が戻ってきました。
私は再び、時間と収入の20%弱を学びに充て始めました。現在は週168時間のうち、30時間あまりを教師修業に投資しています。そのおかげで、授業設計に過度な不安を抱くことはなくなりました。学級経営も、時代に合わせて更新することができています。

もちろん学校はお花畑ではありません。小さな波も、ときに大きな荒波も押し寄せます。しかし、波のさばき方を知っています。しのぎ方も、やり過ごし方も、これまでの投資によって学びました。若い頃に投資していなかったらどうなっていたか。そう想像するだけで、今でも背筋が冷えます。
私は、毎日保育園へ迎えに行きます。平日はほぼ毎日料理をし、寝かしつけも、読み聞かせもします。休日は公園に出かけ、家族で銭湯にも行きます。その上で20%弱の投資です。

教育観という幹を育てる5つの具体的な習慣

最後に、私の投資の具体をお伝えします。何より大切なのは、無理をしないという前提です。子育て期は、家庭を最優先にします。健康でないときは、迷わず自分と家族を守ります。余白が生まれたとき、静かに始めればよいのです。

第一は、起床直後のリフレクションです。洗顔を終えたら、スマホを見る前に、お湯を沸かす前に、本を読む前に、内省を書き出します。起床後は脳がすっきりした状態なので、余計な情報や作業は遮断します。5回も続ければ、自分の課題が驚くほど浮かび上がります。一年後、続けた人とそうでない人の差は歴然とするでしょう。

第二は、毎朝1時間の読書です。20分ずつ3冊を並行して読みます。一人の著名人を追求しすぎることなく、多様なジャンルを読みます。

第三は、耳からの学習です。往復の通勤のとき、料理しているとき、洗濯物を畳んでいるとき、学びの時間へと変えます。スマホの画面を見ずに耳から情報を入れるようにします。画面を見ると、つい他のアプリを開いてしまいますし、目を休めるためにも耳だけを使います。

第四は、学んだことの発信です。私の場合は、教育サークルの仲間に語り、書き、言葉にすることで、知を定着させています。現在は無料のアウトプットできるプラットフォームがたくさんあります。そうしたものを活用するとよいでしょう。

第五は、食後30分の読書習慣です。惰性でテレビを見ずにリラックスして読める本を選びます。仕事につながる漫画、1テーマ2~4ページの雑誌などを読みます。

以上、5点挙げました。中でも最も重要なのは、リフレクションです。内省は暗黙知を根(思想)へと変え、やがて太い幹(教育観)を育てます。
教育観という幹があれば、枝葉はいくらでも後から伸ばしたり接ぎ木したりできます。流行の実践、著名人の実践を追いかける前に、自分の土壌を耕すことが重要ではないでしょうか。読者の皆さんはどんな根を張りますか。

教師修業とは、突き詰めれば人間修業なのかもしれません。

小清水 孝(こしみず たかし)

目黒区立不動小学校 主幹教諭


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現場で使える技術、できる実践、リアルな指導法を日々追究しています。
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NPO教育サークル「GROW5th」代表。

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