総合的な学習の時間の実践~令和6年度・地域とつながる「鳥羽観光プロジェクト」(3)
今回は、前回に引き続き昨年度実施した第6学年との総合的な学習の時間の実践を紹介します。
プロジェクト内でどのような学びがあったのかをご紹介できればと思います。
子どもたちがさまざまなヒトと出会い、学んでいく様子をお伝えします。
明石市立鳥羽小学校 教諭 友弘 敬之
鳥羽観光プロジェクト
プロジェクトの目的の形成

(図1)対話時の板書
前回の終わりに記述した3つのプロジェクト、「鳥羽助け合いプロジェクト」「環境改善プロジェクト」「鳥羽観光プロジェクト」の中でも、今回は私の担当した「鳥羽観光プロジェクト」について記述したいと思います。
このプロジェクトには、6年生のうち約40名が参加していました。発足時にまず子どもたちに問いかけたことは、「このプロジェクトにおける“観光”とは何か?」です(図1)。
子どもたちは、「きれいな景色をSNSにアップして紹介する」「おいしいものを新しく作って広める」「文化祭などのイベントを企画して実施する」など、様々な考えを出してくれました。
しかし、どの考えにも「なぜそれをするのか?」という目的が感じられませんでした。そこで「そういった企画をするのは、なぜなの?」と問いかけました。その中で見いだされたのが「新名物を作ることで、人がたくさん集まる地域にする」という目的です。
具体的な活動の企画
目的が決まった後は、どのようなことを企画するかについて意見を交わしました。子どもたちは、「西明石にしかない新しい名物を作って広めることで、何度も足を運んでもらえるようにしたい」と考えていました。
そこで、「実際に食事を提供するためには、何が必要なのかな?」と、計画を立てる見通しを持てるように問いかけました。
しかし、「それはわからないね…」「お金もかかるだろうし…」「食べ物は資格が必要って聞いたことがある」と、一筋縄ではいかない様子が見られました。すると、ある子どもが「食べ歩きできるハロウィンイベントのチラシを見たよ」と、地域のイベントについて紹介してくれました。
この話をきっかけに、イベントを実施する方へ、直接電話をかけてみることになりました。
Aさんとの出会い

(図2)子どもが作成したメール文
電話をかけることが決まり、応答の仕方を学習したうえで、実際にかけてみました。電話をかけた子は仲間に見守られながら、緊張しつつも用件を伝えることができました。
そして、電話をかけた先の方から、イベントの中心となっている方を紹介していただきました。
こうして明石観光協会のAさんとつながりが生まれました。Aさんとはメールでやり取りすることになり、文面は子どもたちが作成し、私が中継する形をとりました。
相手に届くメールの文面を考える子どもたちの様子は「本気」そのものでした(図2)。やり取りを重ねる中で、学校へ足を運んでいただける運びとなり、子どもたちとAさんとの出会いが実現しました。
Aさんとの初めての交流

(図3)Aさんと名刺交換をする様子
Aさんとの初対面を控え、子どもたちには大変な緊張感がありました。教室を会議室と見立てて、どのように挨拶をし、進行するかを子どもたちは一生懸命に考えました。
応対はプロジェクトの長であるBさんが担当することに決まり、名刺も作成しました。
会議当日、教室で初めてお会いするAさんとあいさつを交わしました。Bさんが、緊張の面持ちで名刺を交換する様子が印象的でした(図3)。
その会の中で、Aさんから知り合いの方々を紹介していただきました。具体的には、近隣のホテルのレストランや焼肉屋さん、おせんべい屋さん、明石焼き屋さんの4名です。
本格的にプロジェクト始動
紹介いただいた方々の中から、自身がかかわりたいと思う相手を選択し、コラボ相手としてプロジェクトを進行していく流れとなりました。
次回は、コラボ先とどのようにプロジェクトが進み、どういった結末を迎えたのかについて記述したいと思います。

友弘 敬之(ともひろ たかゆき)
明石市立鳥羽小学校 教諭
「単元学習」をテーマに学び続けてきました。その中で、「学習デザイン」「実の場」「問い」と、興味を広げてきました。今は「そもそも学びってなんだろう?」という問いと向き合っています。それは、子どもの学びだけではなく、教師としての、また大人としての学びも含みます。この学びの場を通して、私の問いを解決していきたいです。
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