普段の授業にひと工夫 主体的に学ぶ授業へ「体験学習」(第5回)
ここでは、主体的に学びたくなるきっかけをどうつくるか。第5回になる今回は、「体験学習」です。体験的な学習が主体的に取り組むために重要だということは、以前から言われていましたが、実際にどんな体験学習ができるのでしょうか。今年、私が担当した6年生理科の実践を紹介させていただきます。
東京都品川区立学校 平野 正隆
⑴化石発掘
生命・地球「土地のつくりと変化」の内容です。地層には化石が含まれているものがあることを捉える必要がありますが、私が勤める学校は都心にあり、近くにそのような場所や施設がありません。そこで、栃木県那須塩原市の木の葉化石園より、化石の原石を注文し、化石発掘の授業を行いました。ここは、教育施設限定で化石の原石発送をしてくださいます。
化石のほとんどは、木の葉の化石ですが、100%と言っても過言ではないくらい出ます。タブレットで化石園のHPを開きながら発掘作業をすれば、出て来たのが何の化石なのかを調べながら活動することができます。「これはイヌブナの化石だ」「こっちはモミジが出た」「虫の化石かもしれない」なんて言いながら、夢中でハンマーとマイナスドライバーを握りしめていました。
安全に配慮する必要はありますが、子どもたちはとても意欲的に活動していました。また、家に持ち帰って、さらに発掘を進め、新たな化石の発見をして、翌日に報告してくれる子もいました。
⑵ミジンコを育てて観察しよう
生命・地球「生物と環境」の内容です。単元の導入で、メダカは何を食べるのかを調べる活動を通して、生物どうしの関わりに興味・関心をもたせます。ミジンコなど小さな生物がいる池が学校内や近くにある場合は、そこから採取した水を顕微鏡で観察すればいいのですが、それが難しい場合は「タマミジンコの休眠卵」を活用することをオススメします。
卵からミジンコをかえし、グリーンウォーターなどで増やしたり、メダカに餌として与えたり、顕微鏡で観察したりします。自分達で育てているので、愛着がわき、学習に主体的に取組むようになります。「ミジンコの身体の中に赤ちゃんがいる」「僕のミジンコはなんか形が少し違うよ」「ミジンコがフンを出した」なんて、教室内は「見て見て」という言葉が飛び交っていました。
私の実践では、ミジンコの観察後、「学校の池の水も顕微鏡を使って調べてみたい」という意見が出て、様々な生き物を観察しました。「教科書に載ってない生物がいた」「これ、ミカヅキモだ」「(顕微鏡にうつっている)この生き物、(図鑑やタブレットで調べたら)◯◯に似てる」なんて言いながら夢中で、顕微鏡と図鑑・タブレットを覗き込んで、真剣に取組んでいました。下の絵は、そのとき子どもたちがスケッチしたもので、写真は実際に撮った顕微鏡写真です。
「先生、一部家に持ち帰っていいですか」と言い、夏休みに家で培養したり、観察したりする子も出てきました。
⑶学校の下には
生命・地球「土地のつくりと変化」の内容です。児童が土地のつくりや変化について実際に地層を観察する機会をもつ学習ですが、先述したように、私が勤める学校は都心にあるため、そのような場所が近くにありません。そこで、校舎建設時に採取したボーリング試料を使って観察しました。
ボーリング試料には「土質名」「深度」「層厚」「採取深度」が載っているので、ワークシートに1mを1cmに縮尺して地層を記録していきます。色や粒の細かさにも着目しながらかきます。どういう種類の土質なのか、インターネットを使って調べ、ワークシートに記入します。
⑷まとめ
体験的に学ぶことで、事実を自ら発見したり、新たな疑問を抱いたりすることができます。また、そこで生まれた興味関心は、途切れることはなく、自ら追究する態度へとつながります。
家に帰ってからも、持ち帰った石から化石を掘り、それが何かをインターネットで調べたり、持ち帰ったミジンコを培養したりする姿は、まさしく主体的に学ぶ姿といえます。体験的な学びをどう生み出すか、これからも教師として主体的に追究していきたいと思います。
平野 正隆(ひらの まさたか)
東京都品川区立学校
研究会での実践報告や校内での若手教員育成などの経験を通して、自分の経験や実践が広く皆様のお役に立てるのではないかと考えております。大人・子どもに関わらず、「明日から頑張れそうです」「明日が来るのが楽しみです」と言ってもらえるのが私の喜びです。
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