2023.10.29
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普段の授業にひと工夫 主体的に学ぶ授業へ「コンテスト」(第四回)

ここでは、主体的に学びたくなるきっかけをどうつくるか、私なりの実践を例示しながら具体的に紹介します。第四回になる今回は、「コンテスト」です。扱う場面によって「知識・技能」を高めたり、「思考・判断」を高めたりしながら、「主体的に学習に取り組む態度」を育成することができます。

東京都品川区立学校 平野 正隆

⑴コンテストの概要

新聞づくり、俳句づくり、書写など主に作品をつくる授業では「●●コンテスト」と称して、互いの作品を見合いながらクラスのトップ3を決めています。
毎回、作品を見る視点を与え、互いに評価し合います。

⑵自然条件と人々のくらし(5年生社会科)

「くらしの工夫新聞コンテスト」

学習のまとめや調べ学習の際に、新聞づくりをすることがあります。そのときに、事前にコンテストを実施する旨と、相互評価の視点を伝えておきます。この実践では、以下のような視点を提示しました。

・知りたい情報が載っていた
・楽しく読める工夫があった
・見出しや構成に目を引く工夫がされていた
・字が丁寧で読みやすかった

新聞完成後、それぞれ5段階評価をして、総合得点を争います。「情報部門」「エンターテイメント部門」などに分けて争ってもいいかもしれません。
人数の多い学級では、全員の新聞を全員がじっくり読む時間を取るのは難しいと考えられます。そんな時は、10人単位でグループを組むなどして、新聞を回して読み、それぞれ相互評価をするようにしています。

⑶てこのはたらき(6年生理科)

「てこのおもちゃづくりコンテスト」

単元末に、てこのおもちゃづくりを行いました。2時間扱いの授業です。
まず、事前準備としてインターネットで検索すれば、いろんなおもちゃが出てくるので、例として紹介して、どんなおもちゃを作るかイメージをさせておきます。割り箸、ストロー、箱(お菓子箱やティッシュ箱など)、洗濯バサミなどといった、自分のおもちゃづくりに必要な道具を準備しておくように指示しておきます。使えそうなものがあったら、多めにもってきてもらうと、忘れた子にも対応しやすいかもしれません。

授業前半は、流れと注意点として以下の内容を周知します。

・2時間で、作成してみんなに遊んでもらうまで行うこと。
・どう遊んでもらうか工夫すること。(ポイント制にするなど)
・完成したらタブレットで写真を撮り、紹介文をつけて送ること。
・その後、投票を行って1〜3位を決めること。

注意点として、材料を別な遊びで使わない(輪ゴムを指で飛ばして遊ぶなど)ことも伝えます。そして、おもちゃを作り始めます。段ボールや画用紙、針金など、子どもたちが足りない道具を揃えてあげます。あとは、特にアドバイスしなくても、子どもたちは学び合いながら、おもちゃづくりを進めていきます。

授業後半に、おもちゃの作成が終わった子同士で、声を掛け合って遊び合いました。そのとき、どの部分がてこになっているか紹介しつつ、「楽しかったらぜひ私に一票を」なんて話しながら遊んでいました。その後、投票して、結果発表をします。

⑷生物どうしの関わり(6年生理科)

「プランクトンスケッチコンテスト」

生物は「食べる・食べられる」という関係でつながっていて、動物の食べ物のもとをたどると植物に行きつくことを理解する単元です。単元の導入にメダカなどのエサになるプランクトンが紹介されています。「学校の池の水にはどんな小さな生物(プランクトン)がいるのだろうか」と問いかけ、コンテストを実施する旨と、相互評価の視点も合わせて伝えておきます。この実践では、以下のような視点を提示しました。

・大きさ・長さ(顕微鏡の倍率)、形、色、数などに注目して描く。
・疑問に思ったことや調べて分かったことを書く。

この実践では、上手に描けていた子のスケッチを使ってテストも作成しました。
プランクトンがいるような池が、学校内や近くにない地域の場合、インターネットでミジンコの休眠卵等を購入すれば、実際の観察も可能です。

⑸おわりに

この取組で気をつけるべき点は、なるべく多くの子が活躍できるように配慮することです。活躍できていない子が活躍できるように、様々なジャンルのコンテストを行うようにします。
理想は全員が選ばれるといいですが、なかなか難しいです。しかし、コンテストで選ばれなくても、以前に紹介した「かるた大会」などで上位に入る子もいます。
子どもたちが活躍するチャンスをたくさんつくってあげたいと考えています。

平野 正隆(ひらの まさたか)

東京都品川区立学校


研究会での実践報告や校内での若手教員育成などの経験を通して、自分の経験や実践が広く皆様のお役に立てるのではないかと考えております。大人・子どもに関わらず、「明日から頑張れそうです」「明日が来るのが楽しみです」と言ってもらえるのが私の喜びです。

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