スポーツの秋にピッタリ Baseball5(2)
今回は、前回に引き続き「ベースボール5(ファイブ)」について記していきます。
前回は簡単な紹介をいたしましたが、今回はもう少し詳しくベースボール5の学習活動について記述していこうと考えています。
明石市立鳥羽小学校 教諭 友弘 敬之
朝夕に少しずつ涼しさが感じられるようになってまいりました。9月下旬には一気に10度近く気温が下がるとの予報も出ています。読者の皆様におかれましても、どうぞお体にお気をつけてご自愛ください。
さて、今回もベースボール5を話題にしたいと思います。単元導入までの準備や導入後の活動を紹介していきます。
ベースボール5って何?
前回も少し記述させていただいたベースボール5ですが、図1を基に改めてお伝えします。この教材は、ベースボール型の運動領域で、野球とソフトボールを組み合わせたようなスポーツです。最大の特徴は、ピッチャーがいないということです。ですので、バッターは自分で上げたボールを、自分の手のひらかこぶしでたたいて出塁します。小さいころ公園で遊んだ手打ち野球を教材にしたようなイメージです。
フィールドには本塁・一塁・二塁・三塁と4つのベースがあり、塁間は13mで野球より10m以上も短くなっております。ボールを保持して塁にタッチしたり、フライボールをノーバウンドでキャッチしたりすることでアウトを取っていきます。
守備に関して野球と違う点は、人数とポジションです。9人で守備をする野球とは違って、ベースボール5はその名の通り5人で守備をします。ファースト、セカンド、サード、ショートに加え、二塁付近にミッドフィルダーというポジションが存在します。
学習の実際
学習を進めていくにあたって、実際にどのような学習活動を行っているのかを紹介していきます。
①場の準備
体育の学習でベースボール5を行うに当たっては、あらかじめ次の3点の準備をしておかなければなりません。
1つ目は、運動場のポイント打ちです。学習が始まるとすぐに準備が完了できるように、単元開始までに1コート最低4か所分のポイントをマーキングしておく必要があります。そうすることで、子どもに「赤いテープのある所に塁を置いてきてね!」と指示を出すことができます。
2つ目は、ビブスです。1チーム5人から7人でチームを作りますが、チームごとにビブスを着て学習に参加するようにしましょう。練習の時から指導がしやすく、試合も組みやすくなります。
3つ目はふり返りシートです。ベースボール5では、投げられたボールを打つという場面がありません。その分、フィールドの状況や戦況に合わせて攻めたり守ったりすることができます。その際、どのようなことを考えてプレーしたのかという思考を記述できるようにしておくことで、形成的な評価が取れ、次の学習のアドバイスにつながります。
②導入場面
単元導入場面では、野球に詳しい児童とそうでない児童とがはっきりと分かれます。そこでアウトや得点についてなどの簡単なルールを説明した後は、実際に数イニング体験してみることをお勧めします。実際にボールを打ってみたり、打たれたボールをキャッチして守ってみたりする中で少しずつルールが浸透してきます。また、初めてのゲームを終えて感想を交流すると「打つことがこんなに難しいとは気づきませんでした」「フライをキャッチする自信がありません」と、それぞれに課題が表出されます。それらをチームや個人の課題として次時からの学習に取り組めるようにしましょう。
③単元中盤
単元が始まると、主に学習は2つのフェーズで進行していきます。前半はチーム内練習タイムです。後半は交流戦タイムです。
前半の時間は、チームごとに課題点を確認し、運動場いっぱいを使ってチームごとに練習の時間を設けます。野球を経験している児童を中心に、攻め方や守り方にこだわって作戦を立てる様子が見られ始めます。
後半は、交流戦を行います。3イニングだけの試合ですが子どもたちは本気ですのでとても白熱します。苦手な子へバッティングのアドバイスをしたり、キャッチしたボールをどこへ投げようかと悩んでいる子に「2塁2塁!」とアドバイスしたりする姿が見え始めます。そういった姿をしっかり肯定的にフィードバックし、みんなで楽しくスポーツを楽しんでいる姿を価値づけていきましょう。
④単元終盤
単元の最後には、学年全体や隣接学年等と大会を開くようにしています。同じ学年同士であれば、絶対負けないと意気込む様子が見られますし、異学年であれば勝っても負けても楽しく交流しようとする姿が見られます。もちろん、中には本気になりすぎて口調が荒くなる子もいますが、体育の学習の中でそれほど熱くなれる姿にむしろ感心する気持ちがわいてきます。
苦手な子への配慮
チームで行うスポーツや球技に苦手意識を持つ子は少なからずいます。しかし、むしろそういった子にもこのベースボール5は良い教材であると感じています。なぜなら、その子に寄り添って打つ練習やとる練習ができるからです。「野球」を教材とすると、ピッチャーの投げる球の速さによって難易度が変わったり、打った球の速さが人によって変化したりするので、個別に練習した内容がゲームに活かされにくいという課題があります。しかし、ベースボール5では個別に練習したことが活かされる可能性が高くなります。打つことについては自分で投げたボールを打つわけですから何度も繰り返し練習ができますし、とる場面も、ボールが柔らかいのでそれほど速いボールは飛んできません。
それでも、打つことが難しい子には、腰をかがめて、利き手の手のひらでもう一方の手のひらを思いきりたたく練習を何度もします。この時、たたかれるほうの手のひらから目を離さないことを指導します。打てない原因の多くは、インパクトの瞬間にボールを見ていないことです。ですので、その場面を個別に練習するのです。
最後に
先日熱中症アラートが出ており、運動場での体育ができませんでした。そこで、教室でベースボール5の動画を一緒に視聴しました。「ベースボール5」と検索すると、いろいろな動画がすぐに見つかります。その中には、侍ジャパンが活躍する様子やルールが詳しく解説されているものなど様々な動画があります。ぜひ、単元導入の時や雨で運動場に出られない時などに一緒に視聴してみてください!
友弘 敬之(ともひろ たかゆき)
明石市立鳥羽小学校 教諭
「単元学習」をテーマに学び続けてきました。その中で、「学習デザイン」「実の場」「問い」と、興味を広げてきました。今は「そもそも学びってなんだろう?」という問いと向き合っています。それは、子どもの学びだけではなく、教師としての、また大人としての学びも含みます。この学びの場を通して、私の問いを解決していきたいです。
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