若い先生たちに伝えたいこと「担任業の苦労」(NO.6)
読者の皆様、本年もよろしくお願いいたします。
さて、昨年の夏頃から、若い先生たちに伝えたいことをまとめてきました。しかし、秋になって担任を頼まれて久しぶりに担任業に戻ってみると、見えなかったことや思いもしなかった苦労がありました。一方で、熱意をもって子どもと関われば、必ず成果は上がるのだということも実感しました。
年の初めにあたり、学校現場のつれづれなる呟きをお伝えしたいと思います。
特定非営利活動法人TISEC 理事 荒畑 美貴子
担任として常に100パーセント求められるということ

まつやま登さんによる賀状 ©まつやま登
担任に戻ってみて感じたのは、教師が若手であろうがベテランであろうが、保護者からは100パーセント担任であると捉えられるということです。「そんな当たり前のことを…」と思われるかもしれませんが、100パーセントを即時的に求められるのは、とてもキツいということなのです。
まず、担任としてクラスに入ると子どもたちがいます。真っ先に子どもたちの顔と名前を覚えなければなりません。いつまでも「あなた」と呼んでいたのでは、子どもとの間の壁を厚いものにしてしまうからです。
次に、子ども一人一人の個性や特性を知る必要があります。どのように関われば、その子どもの個性に沿ったものであるのか、あるいは特性を理解しているといえるのか、それを見極めるのは簡単なことではありません。時間もかかるし、経験も必要になってくるのです。
そしてそれ以外にも、教師の仕事は他にも多岐にわたっています。職員会議での話し合い、校務分掌と呼ばれる分担された仕事、同じ学年の教師との関わりなどなど、1人の教師に押し寄せてくる情報量は膨大なものになります。まして、ICTを活用した授業や情報配信を求められている状況下にあって、その操作法にも詳しくなる必要があります。これらの情報を整理し、適切に処理しながら毎日の授業の準備をこなしていくのは、並大抵のことではありません。
言い訳に聞こえるかもしれませんが、担任として常に100パーセント求められるということが、どのような意味をもつのか分かっていただけるのではないでしょうか。
子どものことや校内のことでもいっぱいいっぱいで、保護者がこれまで学校とどのように関わってきたのかとか、どのようなことを望んでいるのかということにまで気が回ったのは、長年この仕事をしてきた私でさえ、数週間が過ぎてからのことでした。
実は、子どもと教師の関係を築くのは、そんなに難しいことではありません。毎日、長い時間関わっているので、互いを理解し合うことができるようになるからです。一緒に遊んだり声をかけたりして教師の思いを伝えるよう意識すれば、子どもなりに教師を理解するようになります。安心して関われる人だと思ってもらえれば、関係性は安定してくるでしょう。
ただ、保護者とはそうはいきません。だいぶ前に高学年の子どもを担任した際にも、保護者との関係に大きな困難さを感じたことがありました。滅多に会うことがない保護者の思いを理解したり、逆に保護者に教師の考えや思いを理解したりしてもらうことは、子どもたちとの関係以上に時間がかかるのです。若い先生たちは、自分だけが上手くいかないと思うことがあるかもしれませんが、誰もが悩みながら苦労しているということを知っていてほしいと思います。
そしてもし、この投稿を保護者のみなさんがご覧になってくださるなら、教師が膨大な情報を処理する一定の期間を、あたたかく見守ってほしいとお願いします。ただ、早急に知ってほしい、相談に乗ってほしいことがあれば、遠慮なく話してください。耳を傾ける余裕をなくしているというわけではないからです。
さて、今年は壬寅(みずのえとら)。厳しい冬を超えて芽吹き、新たな成長の礎となる年だそうです。
皆様のご健康とご活躍、全ての子どもたちの幸せを祈って、自分自身も成長できるように精進していこうと思います。

荒畑 美貴子(あらはた みきこ)
特定非営利活動法人TISEC 理事
NPO法人を立ち上げ、若手教師の育成と、発達障害などを抱えている子どもたちの支援を行っています。http://www.tisec-yunagi.com
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