2021.10.16
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若い先生たちに伝えたいこと「子どもの褒め方・叱り方」(NO.4)

子どもたちを褒めるときや叱るときのコツを覚えておくと、信頼関係を高めることができます。

特定非営利活動法人TISEC 理事 荒畑 美貴子

【子どもの褒め方】

©まつやま登

先日ふとしたきっかけで、ネット上に公開されている動画を拝見しました。その動画の中の方がおっしゃるには、「ネットは遠いところにあるのに、そこばかりが気になって、リアルな相手への視野が狭くなっている」というのです。

確かに、様々な種類のSNSを通して情報を得る大人も子どもも急激に増えました。そういった世界の情報にはスピード感があって、楽しめることは否めません。その一方で、実際に関わりのある人が普段と違って元気がないといったことに気づきにくくなっているのは、残念なことだと思います。

そういった社会環境の変化で人との関わり方に変化が起きていたとしても、私たち教師が子どもの表情や仕草、ノートに書かれていることなどに鈍感では困ります。子どもと関わる上で、教師はどんな些細なことにも気付かなければなりません。そして、良い変化を認め、褒めていくことが大切なのです。

ただ、褒めるときに皮肉を加えては効果が激減します。具体例の中から、気を付ける点をお話ししましょう。

ある子どもが、普段なら宿題を忘れがちなのに、今日は提出したとします。その際、「いつも忘れているのに、今日はやってきたんですね」という言い方はやめてください。「宿題をやってきたんだね。よく頑張ったね」と、褒めるだけにとどめてほしいのです。褒めようとして、「いつも忘れているのに」という前置きは不要です。褒められる前にけなされたり、本当は褒めようという気がないと誤解されたりしないように注意を払ってほしいと思います。

それから、宿題をやってくるといった、誰にでも気づくことだけを褒めればいいというのではありません。漢字の練習をするときの文字の書き方が普段よりも丁寧だったとか、挨拶のときにいつも以上に声が大きかったという違いにすら気付いて褒めてほしいのです。

私の同僚は、「子どもたちの変化を、顕微鏡で見るように探している」と教えてくれました。私は、その表現から、多くのことを教えられたと思いました。昨今、褒められて伸びるタイプが多くなっているという話も聞きます。また、褒められて嫌な気持ちになったり、教師を嫌いになったりすることはありません。ですから、子どもの変化をキャッチしたら、どんどん褒めていってください。

子どもは些細なことでも認められ褒められれば、「この先生は、ちゃんと見ていてくれる」と思うでしょう。それが、信頼関係に繋がっていくのです。

【友達とのトラブルの解決の仕方・叱り方】

子どもたちと生活をしていると、友達同士のトラブルは避けられません。しかし、思いがぶつかればトラブルは起きるものなので、トラブル自体を悪いものだと考えることはないのです。

喧嘩をしたあとに仲直りをすることも、立派な関わり方の勉強になります。むしろ、仲直りの方法を身に付けないまま大人になることの方が問題です。子どもたちがトラブルの解決の仕方を身につけていけるよう、しっかりと支援していきましょう。これは、ソーシャルスキル(人と良好な関係を築き、それを維持していくためのコツ)のひとつです。

さて、子どもたちがトラブルを起こしたときには、教師は保護者からの苦情を避けるためにも、互いの言い分を正確に聞き取るよう心掛けましょう。そして、互いが遺恨を残さないように、考えさせたり謝らせたりしていきます。いい加減な対応をしたことが原因で、泣きながら帰宅するようなことがあってはなりません。

保護者と信頼関係を築くのも教師にとっては大事な仕事ですし、保護者との関係が崩れると子どもとの関係にも響きます。これが、トラブルが起きたときの基本的な姿勢となります。

ただ、高学年になるに従って、子どもたちの気持ちにも変化があることを知っておいてほしいと思います。あるとき、別のクラスの高学年の子どもたちが私に訴えてきたことがあります。「先生が根掘り葉掘り聞くから、トラブルがもっとこじれるんだよね」…。そういうこともあるのかと思いました。

彼らが言うには、教師がしつこく聞くから言わなくてもいいことまで言う羽目になるし、それによってお互いの気分が悪くなるというものでした。子どもを信頼し、子ども同士の話し合いで解決できるように支援していけるといいのだろうと、自分の振る舞い方も反省した出来事でした。

そうはいっても、トラブルによっては、どうしても教師が叱ることも必要になります。命に関わるようなこと、怪我に関することが起きた場合には、厳しい対応も大切です。その際に気を付けてほしいのは、叱り方に公平さと一貫性をもたせるということです。どちらかを贔屓目に見たり、前回は叱らなかったのに今回は叱ったりというような(繰り返し行なった場合にはあることですが)、周囲の子どもたちから見て変だと思うような対応は避けなければなりません。教師の気分によって、叱ったり叱らなかったりということがないようにすることです。

また、自分の価値観を押し付けるようなことをせず、「先生はこう思うけど、あなたたちはどうなの?」とか、「これからどうしていきたいと思うの?」「そのためにはどうしたらいいかな?」といった問いかけを通して解決に導くようなやり方も工夫しましょう。

もちろん、親子喧嘩のように、教師が感情的に叱るのは避けるべきです。子どもが感情的になっているときもその場で叱らずに、落ち着いてから話をするようが効果的です。イライラしている子どもに何を言っても通じません。

付け足しになりますが、教師は親よりも叱りやすいということも覚えておいてください。クラスの中の多くの子どもを前にして叱るようなシチュエーションでは、そのネガティヴなエネルギーを分散しやすいからです。でも、いつも誰かのせいで一緒になって叱られるということが続くと、子どもは「またか」という思いを強くしたり、叱られるのが嫌だから学校に行きたくないと思ったりすることもあるので要注意です。

荒畑 美貴子(あらはた みきこ)

特定非営利活動法人TISEC 理事
NPO法人を立ち上げ、若手教師の育成と、発達障害などを抱えている子どもたちの支援を行っています。http://www.tisec-yunagi.com

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