2021.09.25
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若い先生たちに伝えたいこと「教師の大切な役割」(NO.2)

教師の役割について、二つの視点からお話ししたいと思います。
授業をしたり、生活指導をしたりすることの前に、教師としての役割や姿勢を心に留めておいてほしいと思っています。

特定非営利活動法人TISEC 理事 荒畑 美貴子

【教師の最も重要な仕事】

皆さんは、教師にとって何が最も重要な仕事だと思われますか。学力を伸ばすことでしょうか。人としての生き方を学ばせることでしょうか。それらももちろん大事なのですが、その前に忘れないでいてほしいことをお伝えします。

学校という教育の場における教師の最も重要な仕事は、子どもの命を守ることです。これは強調してもしすぎることはありません。学校生活を送る中では、転んで怪我をしたり、工作をしているときに切り傷を作ったりすることはあります。でも、命に関わるようなことがあってはならないのです。

朝、「いってらっしゃい」と送り出してくれた保護者の元に、元気な姿で「ただいま」と帰宅できるように子どもを守っていくことが、何よりも重要であることを一瞬たりとも忘れないでいてください。そのためにできることを、精一杯やっていってほしいと思います。

そして次に大事なことは、子どもの健康を守り、成長や発達を促すことです。「子どもの食事は給食だから、教師は成長に関わるとは思えない」とか、「体育をしているから身体にいいのかな」いう単純なことではありません。教育の力を通して健康も成長も支えていかなければならないのです。また、様々な場面で手指を使い、身体を動かすことによって、あるいは多くの個性と関わることによって、心身の発達も促していきます。学校生活も、授業も人との関わりも、全てが子どもにとっての栄養となるように心がけていきましょう。

最後に、子どもを健康に育てていこうとする際の心がけるべき姿勢についてお伝えします。子どもの周囲にいる人間が、不安や悩みを抱えていると、それが子どものからだ全体に悪影響を与えると言われています。子どもは不安の波動を全身で受け止めてしまうので、健康や成長にすら影響を受けるというのです。

大人が悲しみにくれた友人に寄り添い、「大丈夫?」と距離を置きながら慰める際に受ける影響と、子どもが不安の高い人から受け取る影響は質的に全く異なるのです。

教師が常に心穏やかに冷静さを保って子どもたちと関わること、そしてときには子どもと同じように感情を丸出しにして遊ぶことが、子どもにとって良い、人的環境になります。

【子どもと世界の仲介者になること】

シュタイナーは、よく「権威」という言葉を使いました。「教師は子どもの権威とならなくてはならない」というのです。ドイツ語に詳しくないので原文でのニュアンスは分かりませんが、日本語のもつ堅苦しい意味ではなく、「子どもに自然と尊敬される存在であるべきだ」ということではないかと思います。小学生のころに自分が尊敬できる相手から学んでいくことは、とても重要だと言っているのでしょう。

ところで、子どもたちが学校で何を学ぶのかと聞かれたら、皆さんはどんなイメージをもちますか。算数や国語などの教科や人間関係についてなどでしょうか。確かにそれも間違いではないのですが、それはカテゴリーに分けられた部分でしかありません。もっと大きな視点から表現すると、教師の仕事というのは、子どもたちに生きていく上で必要な社会や世界のことを教えていくということなのです。実際に大人の社会で必要となる事柄を、咀嚼したり翻訳したりして教えていくということです。

そのためには、教師は社会や世界との仲介者にならなければなりません。子どもたちから、「この先生の元で学べば、未知なる世界が分かるようになる」と思ってもらう必要があるということです。それが、シュタイナーのいう「権威」なのだろうと思います。

「子どものころに見上げ、尊敬し、権威にすっかり包み込まれることを学んだ者は、後年になって愛情を注ぎ、同胞たちに幸せをもたらすことができる」といったことも、シュタイナーは述べています。教師でなくても親が教えれば十分だという話を耳にしますし、私も不登校を経験しているので学校が全てだとは思っていません。しかし、子どもにとっては親だけではなく、プロとしての教師が必要なのだと考えさせられる言葉です。

今でも、小学1年生のころに担任した子どもの保護者が、「あのときはお世話になりました。先生のおかげで今があります」と、こちらが恥ずかしくなるような思いを伝えてくれることがあります。それがたとえお世辞であったとしても、小学校の教師は、子どもの一生を左右するのだということを忘れずにいてほしいと思います。

荒畑 美貴子(あらはた みきこ)

特定非営利活動法人TISEC 理事
NPO法人を立ち上げ、若手教師の育成と、発達障害などを抱えている子どもたちの支援を行っています。http://www.tisec-yunagi.com

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