2021.08.25
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心を動かす言葉との出会いをつくる-心の余白を大切に―(No.5)

夏休みも残りわずかとなってきましたが、先生方は十分休息できたでしょうか。なかなか終わりの見えない新型コロナウィルスの感染状況の中、2学期も対応に追われる日々が予想されます。あれもこれもと頑張りたくなってしまいますが、少し立ち止まってみることも大切なのではという思いで今回はお話したいと思います。

小平市立小平第五中学校 主幹教諭 熊井 直子

「何もしない」=無駄な時間?

皆さんは、丸一日お休みの時、どんなことをして過ごしますか?仕事のことを全く考えずに過ごすことはできますか?「あ、今のうちにあの書類を仕上げておこう」「今度の単元の流れを考えておこう」と、結局仕事をしてしまう……ということはありませんか?
少し時間に余裕がある時に、いつもよりもゆったりした気持ちで授業準備等をしておきたいという気持ちはとてもよくわかりますし、私もそういうことは多々あります。例えば今は育休中ですが、教育関係の新聞や雑誌を購読して、情報収集だけは欠かさないようにしています。

でも、それって本当に今しないといけないことでしょうか?

「絶対に今しないといけない!」「むしろ今したい!」という気持ちがあるのであれば、その気持ちを無理に止める必要はないと思います。私も情報収集だけはやめません。でも、「仕事に関係することをしていないと怖い」というような漠然とした不安に動かされているのであれば、やめてしまっても良い、と考えています。

私自身、小学生の頃から土日は塾に行ったりテストを受けたりして慌ただしく過ごし、中学・高校も部活に勉強にと忙しく、大学では少し時間があればバイトを入れ、初任校では部活で休みはほぼなし、という生活をしていたので、「休む」=「立ち止まる」ということに対する不安がずっとありました。予定が何もなくても、1日を終えて「今日はこれをした!」ということがないとなんだか不安……というタイプでした。有効に使われない時間がもったいなくて、何もしないと時間を無駄にしてしまっている気がして、それが怖いのです。

「仕事をしない時間」から得られるもの

以前の記事(「これから10年の教育」を考える~海外研修という選択肢~(No.5))でもご紹介したように、私は以前1年休職をしてフィンランドに留学しました。それまでの教員生活において初めてたくさんの「仕事をしない時間」を体験しました。フィンランドの先生たちはプライベートの時間、特に家族と過ごす時間を大切にしていて、午後2時や3時に授業が終わるとすぐに職場をあとにします。生徒の作品を家に持ち帰って添削をしたり、次の授業の教材を探したりと、学校以外の場所で仕事をすることも多いですが、同じところにずっといるのではなく、リフレッシュしながら仕事をしている、という印象でした。

私も時間がたくさんあったので、とにかく徹底的に「仕事をしない」ようにしました。近所を散歩してぼーっとすること、自分が好きな本を読むこと、家の中を掃除すること、とにかくごろごろして体を休めること等、いろいろなことをして頭と体を仕事から切り離すと、また職場に戻ったときに、生徒に話すことや授業で使えるネタが自然とストックされていることを体験しました。

今は毎日子どもと生活をしていて、家事をしたり子どもの世話をしたり遊んだりしていると、あっという間に1日が終わってしまうことがほとんどですが、そんな時間も後から振り返ればきっと何か思うところがあるはず、とあまり考えないようにしています。

詩歌は行間に余韻があるから美しい。

書は余白を使ってこそ整う。

そんなことを思うと、人も、時々は何も考えない時間があるからこそ育まれる感覚や感性があるのではないかと思います。

夏休みの残りの日々、どうぞ少しでも「何もしない」時間をもつことができますように。

熊井 直子(くまい なおこ)

小平市立小平第五中学校 主幹教諭
英語もできる国語の先生を目指しています。2016年度に1年間フィンランドの高校で国語の授業を研究していました。英語教育に力の入る今だからこそ母国語教育のあり方を今一度よく考える必要があるのではないかと考えています。

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