2021.09.14
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心を動かす言葉との出会いをつくるーデジタルとアナログの融合―(No.6)

2学期が始まりましたが、新型コロナウィルスの感染に不安もある中、皆さんの学校ではどのようなスタートになったでしょうか。今回は今年度から多くの学校で使用が開始されたタブレット端末をどのような考えで活用していったらよいかという点についてお話したいと思います。

小平市立小平第五中学校 主幹教諭 熊井 直子

国語の授業においてICT機器を最も有効に活用できる場面とは

私が以前勤務していた学校で生徒とタブレットを使って授業をしていた時、ICT機器の活用は次の3種類の方法があると学びました。

①教材の提示
教科書の本文をプロジェクターで映して線を引いたり、生徒のノートをカメラで写して共有したりと、全員で同じものを見るための活用法です。

②個人に合わせた学習
ドリル教材等のアプリを使用して、生徒一人ひとりの理解度に合わせた学習を行うという活用法です。

③意見交流
タブレット上の共有画面にそれぞれが意見を書き込み、自分の画面で他の人の意見を見ることで協働学習を行うための活用法です。よく使われるアプリとしては、ロイロノートコラボノートがあります。

このうち、国語の授業における有効性を感じたのは③意見交流をタブレット上で行うというものです。自分の考えをプリントに書いてグループになって書いた意見をもとに話し合いをするとき、他の人がどのような意見をもっていたかをメモしておかないとわからなくなってしまいます。
でも、最初の考えをタブレットに記録しておけば、同じグループだけでなく、他のグループの人たちがどのような考えをもっているかを知ることができ、口頭で発表するだけのときよりも多くの意見に触れることができます。これは自分の考えを深めるためには非常に有効であると感じていました。

ICT機器を活用した協働学習を行う際に気をつけたいこと

多くの人との意見共有が簡単にできるという点において有効なタブレットの活用ですが、実際に授業を行ううちに、気をつけなければならないこともあると感じました。

その1つ目は、タブレットの画面を見れば他の意見を読むことができるので、対話する機会が減ってしまうということです。実際に授業で活用していた時、グループになって人の話を聞く時間よりも、画面上の意見を読んで考える時間の方が長くなり、ほとんど声を発することなく授業が終わることもありました。

2つ目は、処理すべき情報が増えるので、情報の整理等情報の取り扱いについて意識して指導する必要が出てくるということです。
タブレットを利用して意見共有を行うと、今までのグループ学習では自分以外3~5人程度の意見を聞いてまとめれば良かったものが、一気に1クラス分の情報が入ってくることになります。これを有効に使えるかどうかは、個々の生徒の情報処理能力にかかっており、場合によってはうまく活用できなくなってしまう生徒もでてきます。
新学習指導要領では、「知識及び技能」の内容に新たに「(2)情報の扱い方に関する事項」が加わったので、この内容をうまく活用していく必要があります。

デジタルとアナログの融合を意識する

以上のことから、タブレットを活用した協働学習を行いながら、私は「デジタルとアナログの融合」を意識することが大切であると感じました。画面上で意見共有をする場面と、対話を通して意見をまとめていく場面とを明確に区別し、対話をすることに必然性をもたせる必要があります。
また、授業の最後の振り返りの場面では、他の人の考えを画面上で見て終わり、とするのではなく、必ず何人かに発言してもらい、教師からのフィードバックを返す時間を意識してとったりもしていました。タブレットは便利ですが、やはり生身のコミュニケーションを大切にできる生徒を育てたいもの。扱いに慣れてきたらぜひ、「デジタルとアナログの融合」を意識してみてください。

おわりに

長らくこちらで連載をさせていただいてきましたが、今回をもちましてしばらくお休みとさせていただければと思っています。これまで私の記事を読んでくださった皆様のお役に立てていれば幸いです。変化が多く、先の見えない時代ではありますが、子どもたちが少しでも幸せだな、楽しいなと思いながら生きていくことができるように貢献していければと思っております。本質を見極め、学びを止めない教育者であり続けましょう。

熊井 直子(くまい なおこ)

小平市立小平第五中学校 主幹教諭
英語もできる国語の先生を目指しています。2016年度に1年間フィンランドの高校で国語の授業を研究していました。英語教育に力の入る今だからこそ母国語教育のあり方を今一度よく考える必要があるのではないかと考えています。

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