2023.04.19
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先生にとっての何だかとても大切なもの 実はしている先生からの心の支援「もう少し余裕を持って学校に来てほしいな編」

「カウンセラーは相談室を出よう」との言葉をどこかで聞いたことがあります。相談室のみならず日常の様々な場面でも、心の支援に携わる方はぜひとも力量を発揮してほしいということなのだろうと私なりに受け止めています。
ところで、私達はカウンセラーではなくて「先生」なのですが、子どもたちの側から見れば学習の進め方や悩みの受け止め、自分自身の行動についての助言など、意識するしないにかかわらず、心に関わるアプローチもかなり進めているのではないかと最近思うようになりました。
なかには日々子どもたちとすごす私たちだからこそ、とり続けてほしい手立てもあるのかもしれませんね。

静岡市立中島小学校教諭・公認心理師 渡邊 満昭

「朝、余裕を持って学校に来てもらうプラン」の考え方

遅刻ギリギリなので、もうちょっと朝早く来てくれたらいいなと思う子は、クラスにいませんか? もし、いるのなら、その子に対してあなたはどんな方法でアプローチをしていますか?
私たちが普段するのは、その子に対して「ねぇねぇ、もう、ちょっと早く学校来れるかな?」 と面と向かって話をするということでしょう。「君にはちょっぴり期待をしているんだ。だから頼むね」という感じでいろいろ伝えることもあると思うのです。そうやって私も長いこと子どもたちと接してきました。

実際、子どもたちは私との関係が出来るにつれて、こちらの期待にいろいろ応えようとしてくれるのか、余裕を持って登校してくれるようになりました。それで満足してきたのが、私の学級経営の姿だったと思います。
併せて、お家の方にお力添えをお願いすることもあります。家でのゲームの時間数のことだったり、その子が家を出るまでの段取りに協力していただいたり、起きる時間の調整をしていただいたりするなどです。とても助かった思い出があります。感謝しております。

ところが、そんな手立てが難しい場合もありますね。
どうしても朝起きれないとか、家を出るのが遅くなってしまうとか、原因というものがそもそもあるのかどうかもわからないことがほとんどでしょう。「なんとなく」という表現が一番当てはまるときもあるかもしれません。

その子自身、そろそろ家を出たほうが余裕ありということは、わかってくれているようなんだけれども、なかなか体が思う通りに動かない、そういった事態だと思います。 次第に休みがちにならないかと心配も出てきます。

わたしたちにできること、していることは何だろう?

では私たちはどうしたらよいのでしょうか?
遅れがちといっても、多少登校の時間は前後すると思います。ちょっとでも余裕を持って学校に来られた時に、その子にとって何らかの良いこと=「ちょっといいな」があると、次もまたその「ちょっといいな」を求めて継続しやすくなると考えるアプローチがあります。これは心の支援といえるのではないでしょうか。登校時間の前後の動きに合わせて良いことのレベルも変化するとしたら、飽きずにその子の登校を支えて続けることもできるかもしれませんね。

ただその子にとっての良いことがなにかは、いつも一緒にいる私たちしかわからないことなのだと思います。本人は、友達との話が楽しいなど理由付けをしてくれるかもしれませんが、実は本人も気づいていないほんの些細なことや言語化しにくいことが、毎日の朝の「ちょっといいな」の本質かもしれませんよ。

それを知るには、私たちも少し早めに教室に行って、その子を先に教室で迎えるというアプローチがほしくなります。 その子がきた時。 もしその子と関係ができている私が、ニッコリ笑顔で「来たじゃん?」って感じで迎えられれば、それはそれでいいのかなと思います。 その子がその後「朝さあ、いいことあったんだよ」とか話してくれたら、最高ですよね。お互いそんな感じで、教室でいい感じで出会えれば、それにこしたことはないと思います。

また、私たちじゃなくて子供たちが迎えてくれる場合だってあります。先に来ていた子どもたちがその子にとって望ましい関係ができていて「ねえねえ、昨日の遊びこんな感じだったけど」というふうに好きな事の話が途端に始まるのであれば、やっぱり次の日もと思えるのではないでしょうか。

時には、何か心配事が先立って学校に足が向かないということもきっとあるでしょう。前日の学校で色々と片付けておくと、次の日に来やすくなるのかなということも考えられます。例えば宿題は、家での習慣づけの側面もありますが、宿題をやらないので行きたくないということであれば、またちょっと違った手立てもあるのかもしれません。こうした負荷を調整するアプローチだって、心の支援となると思います。

毎日その子とすごしていることの意味

毎日その子達とすごしているということは、ほんのささいなことかもしれませんが、その子の心を支える手立てを毎日打ち続けることができます。知らず知らずのうちにあなたが取ってくださった手立てで、今日もギリギリながらも通い続けくれる子だっているのかもしれませんよ。

だから、毎日余裕はないのだけど、あれこれアプローチしたのだけど、それでもあまり変化はないのだけど、今日も教室に来てくれるその子を、これからも支え続けてほしいと思います。

現状維持とは、その子の内面が成長していく時間を稼ぐこともできるなど、実は前進なのだとも思いますし。

渡邊 満昭(わたなべ みつあき)

静岡市立中島小学校教諭・公認心理師・学校心理士・環境教育インタープリター・森林セラピスト


いつの間にか、小中学校全学年+特別支援学級+特別支援学校+通級指導教室での担任を経験し、生徒指導主任+特別支援教育コーディネーター+教育相談担当経験も10年を超えていました。すると担任を離れたとたんに何かを忘れてしまって、担任に戻ってみると忘れていたことに気がつくということがたびたびありました。それはうまく言えないけど何だかとても大切なもの。先生を続けていくための糧のようなもの。
その大切なものについて、自分の実践と合わせお伝えしていこうと思います。

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