たった1つだけ変えるだけでいい。オンライン授業が成功する方法(No.3)
私は附属小学校で算数部に所属しています。研究授業などで指導案を作成しているとき,「これもやってみよう。あれもやってみよう。」と思って提案を膨らませることがあります。そんなとき,先輩の先生に
「この授業では何が一番大事なの?」
と指摘をもらいます。あれもこれも盛り込み過ぎたと,はっとします。その結果,授業の急所がぼやけてしまうのです。これって,算数の授業に限ったことではないと私は思うのです。GIGAスクール構想だって同じなのではないでしょうか。
そこで,今回のテーマは「急所」にしました。よろしくお願いします。
東京学芸大学附属大泉小学校 教諭 神保 勇児
この活動の急所は?
本題に入る前に,まずこの事例について何を急所としているのかを考えてみましょう。
<ブレイクアウトルームかくれんぼ(Zoom)>
- まずは部屋の設定です。パソコンの画面下の「ブレイクアウトルーム」をクリックします。
- 作成したいルームの数を設定します。30人学級だと6つ程度の部屋で十分です(今回は6つで説明します)。
- 参加者を割り当てる方法を設定します。「参加者によるルーム選択を許可」を選択します。準備は終わりです。
- ルールを説明します。ルールは5つです。
- 鬼を探すかくれんぼである。
- 鬼は1〜6のルームのうち,どこかの部屋に隠れて動かない。
- 鬼以外の子は鬼を探してルーム1〜6のどれかに入り,鬼を見つけたら,そのルームから動かない。
- 鬼を見つけるまで,自由にルームの移動ができる。
- 全員が鬼のいるルームに移動したら,かくれんぼは終わり。
(注意点)
- 子供は部屋を出るときは,退出をクリックする。
- 別の部屋に入りたいときは,画面下のブレイクアウトルームをクリックすると,「ブレイクアウトルームを選択」が出るので,クリックする。
- ルーム1〜6を選択するウィンドが出てくるので,好きな部屋を選び「参加」をクリックする。
この活動の急所はお分かりになったでしょうか。この活動の急所は次の2つです。
- ブレイクアウトルーム間を自由に移動できるようにする。
- 任意のメンバーを探し,そのルームへ移動する。
Zoomを使ったグループ学習では,普段の教室の授業とは違って移動できないと思ってしまう子どももいます。だから,遊びを通してそのスキルを身につけるのです。使い方を教えることも大事ですが,遊びの中で使えるようになるのが一番だと思います。そのような活動をすることによって,スキルが身に付き,オンライン授業の幅はぐんと広がります。その結果,話し合いを深めることにつながるのです。まさに,急所を外さないシンプルな活動です。
GIGAスクール構想の急所
私の失敗談から
『子供たち一人ひとりに個別最適化され、創造性を育む教育 ICT 環境の実現に向けて ~令和時代のスタンダードとしての1人1台端末環境~ ≪文部科学大臣メッセージ≫』にもあるように,GIGAスクール構想の急所は
「ICT 環境の整備は手段であり目的ではない」
と私は考えています。これは,昨年度から取り組んでいるオンライン授業の経験から得た考えとも一致しているからです。
私は昨年3月,緊急事態宣言が発出されてから,どのようにオンライン授業を行えばよいのかわかりませんでした。当時,教師個人が作成したオンライン授業については,SENSEIノートやYouTubeなどで動画を公開し意見交換を行っていました。それぞれ,クラスの児童を思い,教師の説明や画像などを駆使した動画でした。また,令和2年4月時点で,都道府県の教育委員会では,児童生徒に対し独自にオンライン授業を作成し公開していました。
私もそれに見習い,見様見真似で動画を作成しました。PowerPointでキャラクターの絵を貼り付け,自分で音声を入れた約15分の授業動画です。次に作成したのは,私が黒板で授業した様子を録画して,そこに子どものキャラクターやふきだしやテロップ,音楽などを入れて編集しました。それぞれの動画は教材研究1時間,動画作成6時間というものでした。合計5,6本作ったと思います。15分の動画に作成時間6時間です。手前味噌ですが,かなりいいものができていました。見せ方をかなりこだわってみやすくすることに心血を注いだからです。でも,できあがた動画を見ながら私ははっとしました。
「この6時間をもっと教材研究の時間に変えることができたのではないか。算数の授業としての面白さを子どもが感じることができる授業を考えることができたのではないか」
まさに,私は手段が目的化していたのでした。もちろん,動画作成も教材研究に入れるべきと思う方もいるかもしれません。しかし,その動画に入れたBGM,キャラクター,ポップな文字,場面転換は本当にクラスの子の学習の手立てとなっているのでしょうか。そのBGMなどを入れることによって,子どもは本時の算数の学習で新しい発見があったのでしょうか。
GIGAスクール構想に向けて,駆け出したばかりの私たちは,1人1台の端末の整備を考えることで頭がいっぱいです。しかし,手段が目的化しないように,何をどこまでやるのかを考えるときが迫っているような気がしてなりません。
参考資料
神保 勇児(じんぼ ゆうじ)
東京学芸大学附属大泉小学校 教諭
2020年度はコロナウィルスでの休校期間でオンライン授業を多く行うことがありました。その時に得た、オンラインでも使える問題の見つけ方、子供の自力解決の見取り方、つぶやきの拾い方、発表検討のさせ方など紹介していきます。
「jimbochanのブログ」https://jimbochan.hatenablog.com/
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