2020.05.20
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子どもたちが来られなくとも(4)

臨時休校中は、教員にとっても自己研鑽に取り組むチャンスです。

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当 菊池 健一

休校中に自己研鑽を

新型コロナウイルス感染症の影響で、年度当初から休校が続いています。政府は緊急事態宣言の延長を行ったため、現在も休校が継続中です。勤務校があるさいたま市では、教員も交代で勤務を行い、児童の休校中の課題を作成したり、ホームページを活用して児童にメッセージを送ったりしています。

休校期間があけたら、児童によりよい授業を提供できるよう、教材研究を入念にしておくことが大切だと考えています。今は準備をする時間があるので、いつも以上に授業で使える素材を集められます。また、児童に提供するワークシートや補助教材も作れます。さらに、今は教師自身も普段はできない自己研鑽に取り組むべきだと考えています。通常は、休日や長期休業中においてしか研修の機会が持てませんが、在宅勤務で指導法などの研修をオンラインで受けられます。この機会を活用して、指導力を高めたいと考えています。

教材研究の実践

休校の間、さいたま市では教員が分散出勤をして、自宅で教材研究などを行っています。この機会を生かして、以下の活動に取り組んでいます。

① 資料の収集

普段の授業で、新聞を活用した授業(NIE)に取り組んでいます。児童の思考力・判断力・表現力を高めるためには、学習内容を社会的な事象と結び付けて理解する必要があると考えるからです。そのためには、担当する学年の指導内容を概観し、問題意識をもって新聞を読む必要があります。普段は時間がなくあまり詳しく新聞を読めません。この期間は時間があるので、新聞記事を読み込み、具体的に授業でどう新聞を使うかを詳しく考えることができます。

例えば、担当する5年生では、国語科で「新聞を読もう」という単元があります。教科書では過去のオリンピックの記事が例示され、その記事をもとに学習します。今回、新型コロナウイルス感染症についての関心は非常に高いと考えています。そこで、新型コロナウイルス感染症を扱った記事をたくさん集めて、児童に示せるようにしました。そして、児童には記事の見出しを想像させるという活動を具体的に考えています。その他にも様々な授業で具体的に新聞を活用する方法を模索中です。

② 重点単元の授業準備

今年度、担当する5年生で重点的に取り組みたい単元があります。学校では課題研究として子どもたちに「書く力」をつけさせるための実践を行っています。また、私自身が個人研究として、防災教育を8年前から行っています。今年度は東日本大震災から10年を迎える節目の年です。震災のことを後々まで伝える意味でも、これまでの集大成として防災教育も行いたいと思います。そこで、国語科で新聞への投稿文を書く活動を言語活動として取り上げ、そのテーマを「防災」とすることにしました。

➂ゲストティーチャーなど、協力者の発掘

今年度は国語科の「書く活動」に重点をあてて実践を行うことや防災教育に取り組むことを先に述べました。そこで、学習をより豊かにするために、児童に生の声を伝えてくださるゲストティーチャーを探すことにしました。まず、「書く活動」。そして、被災地のことに詳しい新聞記者の方に協力を依頼しました。この記者さんは元岩手県釜石支局長で、震災のことを継続的に取材されています。書いた記事を通して被災地の状況や記事の各ポイントを児童に伝えてほしいと思っています。そして、地域で活躍する防災士の方にも協力を依頼しました。児童には地震から身を守る方法を具体的に考える活動をさせたいと思っています。単に本やインターネットで調べたことだけでなく、実際に防災の現場で活躍されている方に話を聞くことによって、より生活に寄り添った対策が考えられると期待しています。この方たちに連絡を取り協力を求めることができました。

自己研修の実践

休校の間、教材研究を行う一方で自分自身の研修にも取り組むようにしました。自分のスキルアップを図ることで、よりよい授業の実践ができるようになると考えています。以下のものに取り組んでいます。

① 英語の学習

小学校にも英語の学習が入りました。さいたま市では国に先立ち数年前から英語を導入しています。普段、英語の専任の先生と一緒に教えているのですが、私自身が英語に自信がないために、児童への指導にためらいがあります。そこで、英語の学習を高校の初級に戻って行うことにしました。特に重視しているのが、音読です。少し易しめの文章を読み取り、何度も音読をしてスムーズに発音ができるようにしています。少しずつですが、児童に自信をもって指導できるようにしていきたいです。

② 現代文の読み取り

久しぶりに高学年の担当になりました。国語科では説明文の読み取りを指導します。5年生ではこれまで以上に抽象的な言葉が出てきたり、きちんと論理展開を押さえて読んだりする必要が出てきます。そこで、もう一度文章の読み方を学習しなおし、指導に取り組みたいと考えました。教材として大学受験時代に使っていた教材の復習をしています。「主張を説明するために具体例や引用を使うこと」「自分の主張を分かってもらうためにわざと対立する例を出す」など、文章を読む際のコツをたくさん思い出しました。児童にもしっかりと指導できるようにしていきます。

➂憲法の学習

数年前より、6年生を担当したら憲法の学習を児童とともにやりたいと考えていました。憲法の理念を学習し、それが生活の中でどんな風に実現されているかを具体的に見つける学習を考えています。そのために、私自身が憲法についてきちんと学習しておかなければなりません。そこで、この休校中に憲法の講義を受けて大切な事項をまとめました。

以上のような活動をしながら、休校中の時間を過ごしています。一日も早く子どもたちが登校できるようになり、一緒に勉強できたらと考えています。

菊池 健一(きくち けんいち)

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。

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