2022.03.24
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震災を知らない世代に向けた授業の実践(8) ~学校で地震が起きたら……(さいたま市立植竹小学校 教諭 菊池健一さん)

東日本大震災を取り上げた授業を、さいたま市立植竹小学校 教諭 菊池健一さんが連載形式で紹介します。科目横断型で震災を学ぶ第8回では、国語科の授業を使って学校にいるときに大地震が起きた場合の身の守り方について考えました。

自分たちが普段いる場所は安全か……

学校図書館で危険なところを調べる

これまでの学習で、子どもたちは東日本大震災について詳しく学んできました。被災地を取り上げた新聞を読んだり、被災地の取材をした記者の話も聞いたりしました。さらに、当時、被災地で小学生だった震災語り部の方の話も聞き、子どもたちは震災を自分事としてとらえられるようになってきました。今回の実践は、震災のことを学びながら、国語科の「段落のつながりを意識して意見文を書く」という学習目標を達成しようと始めました。ここからは、国語科での実践になります。

子どもたちが使用する教科書では、この単元で、「3年生の思い出」を書くことが例示されていますが、これを変更し、地震から身を守るために調べたり考えたりしたことを意見文としてまとめることを取り上げました。子どもたちにも震災を学習する前にこの学習のゴールを示しました。これから、大地震が来た時にどのように身を守るかを調べていきました。

今回は3年生での実践のため、発達段階も考慮して、まずは児童が生活の大部分を過ごす、学校の中で大地震が起こった場合の身の守り方を調べることにしました。児童と話し合い、児童が普段いる可能性がある場所を出し合いました。

・教室
・廊下
・トイレ
・体育館
・階段
・昇降口
・校庭

以上の場所を思い浮かべ、実際にその場所にも行ってみて、どんな危険があるかを話し合いました。

「廊下は物が余りないけれど、大地震で自分が転んでけがをするかもしれないね」
「教室にいる時間が一番長いね。ゲストティーチャーで来てくれた武山さんは、東日本大震災の時に机が揺られて、机にもぐれなかった人もいたと言っていたよ」
「階段にいるときに大地震が起こったら、階段から落ちてしまうかもしれないね」
「体育館は上からいろんなものが落ちてくる危険があるよね」
など、実際に自分が調べたいと思う場所を見ながら考えを出すことができました。児童はそれから、具体的に身の守り方を調べていく活動に入りました。

どうやって地震から身を守るか

一人一台端末で情報集めをする児童

調べる方法として、防災についての本や自治体が出している防災のリーフレットを活用するほか、児童が今年度から使えるようになった一人一台のタブレットパソコンも活用しました。児童が自分の手元でインターネットを使えるようになったので、調べ学習が大変はかどりました。

また、調べていてわからないことや、さらに詳しく知りたいと思うことが出たら、防災士の方に質問できるようにしました。協力いただいた防災士の方はこれまでも、以前の実践でも、教室に来て児童に指導をしていただいた方です。今回はコロナ禍のため、児童が質問票を送り、それに返答してもらうようにしました。また、この単元の学習で話を聞いた、東松島市出身の語り部・武山ひかるさんにも当時の様子を思い出しながら身を守るためのアドバイスをいただけるようにしました。今回、児童が話を聞くだけでなく、それを踏まえてたくさん質問することができたことも大きな収穫でした。

児童は学校にいる際に大地震が起こったらどのように身を守ったらよいかが分かり自信をもって、次の活動に入りました。

意見文にまとめる

児童に示した作文構成表の例

調べ学習が終わると学習のメインとなる「意見文」へのとりくみです。この学習では、段落のつながりを意識し、自分の考えが読み手に伝わる文章を書くことを目標にしました。そこで、まずは文章の構成表の作成からおこないました。児童に「はじめ」「中」「終わり」の文章の構成を示し、「はじめ」では、自分が一番伝えたいことを書き、「中」でその具体的な説明をし、最後に「終わり」で読み手に対する呼びかけを書くという形を示しました。

児童は、
「どこにいても、頭を守ることが大切だと分かったから、まずはこれを書こう」
「大地震では机にもぐれない可能性もあるから、まずは頭を何かで守る必要があることを書きたい」
「落ちてくるものだけではなく、自分が転んでけがをしないことが大切だということを伝えたい」
と、自分が調べたことをもとに構成を考えていきました。

そして、いよいよ構成表をもとに、意見文を書いていきました。構成表が完成しているので、児童はすぐに意見文を書き始めました。意見文は地元の新聞社に投稿することを単元の最初に児童に告げています。児童は、多くの人に読まれるかもしれないと思いながら、意欲的に意見文を作成していきました。今回は3年生での取り組みであるため、防災に関する内容は初歩的なものになってはいますが、児童がきちんと調べ学習によって得られた情報をもとに意見を述べています。また、国語科で児童につけたい力である「段落相互の関係を意識して書く」ことも十分に身に着けられました。完成した意見文を友達同士で読み合い、お互いに感想をのべました。

ここまでで、国語科の授業としては終了ですが、震災を取り上げた取り組みとして、最後に3月11日・12日の新聞を読み、これからのことを考える活動が残っています。最後までしっかりと取り組みたいと考えています。子どもたちと震災のこれまでとこれからについて改めて考えてみたいと思います。

著者情報 文・写真:菊池健一

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