"生徒主体"の行事にするために
先日、自分の勤める中学校で「合唱コンクール」が行われました。
夏休み前の期間を合わせると数ヶ月練習してきたことの集大成。
行事は生徒の成長に大きく影響します。
生徒の成長や達成感のために自分ができることは何だろうと考えました。
東京都内公立中学校 教諭 朝倉 しおり
合わせて唱うこと
合唱コンクールや合唱祭は、運動会とは違う人が活躍することができる行事だと思います。1年生はとにかく元気に、2年生は恥ずかしさや声変わりがありながら、3年生は「最後」を掲げてどの学年も取り組むことでしょう。
3年生にもなると、ただ合わせて歌っているだけではなく、各パートの音や音楽記号、歌詞に込められた想いにも気を配って取り組むことになります。
ただ大きな声で歌う合唱とは違い、観ている人や聴いている人の心に想いを届けられる、感動するような歌になるからすごいです。練習期間には歌の完成度が日々高くなっていくことを目の前で感じることができました。
担任として
合唱練習への取り組み方は、クラスのメンバーや実行委員によって様々ですが、担任の先生方の関わり方も人それぞれです。積極的に指示やアドバイスを出す先生や実行委員と作戦会議をする先生、音楽の授業に一緒に参加する先生や生徒からなにか言われるまで何もしない先生など本当にいろいろな考え方があります。私個人は積極的にアドバイスはしません。実行委員に任せたいというのが本心です。運動会もそうですが、行事の中心は”生徒”であってほしい。大人は見えないところで頑張っていたいと思っています。
自分自身歌があまり上手ではないので、クラスの練習中に表立ってアドバイスをすることはありません。意識していることは「実行委員などの中心メンバー以外の生徒への声掛け」と「中心メンバーのサポート」です。指示を出したり具体的なアドバイスを行うのは実行委員などの生徒。場面を盛り上げたり仕切るのも生徒が行うべきだと思います。年齢の違いによって大人の手が必要なことはあるかと思いますが、それでも生徒たちが「手を貸して!」と言ってこない限りは隅の方で見守りながら応援していたい。主役はあくまでも”生徒”だと思いますので、表の仕事は「生徒がやっている」ようにしたい。たとえ自分が手伝っていたとしても、それをクラスに伝える必要はないと思います。彼らの考えているように物事を進めることができるように、コソコソと動く担任でありたい。生徒たちに「うちのクラスは実行委員やパートリーダーが動いてくれて、担任の先生は何もやってくれなかったよね〜」なんて言われているくらいで十分ではないでしょうか。
「ちょっとそこ、ちゃんと歌ってよ!」
苦手な人もいる中で
表立って生徒に指示やアドバイスはせずとも、担任としてできることはたくさんあります。行事やみんなで取り組むということに一生懸命な人が多い中で、やはりなかなか協力してくれない人も一定数いることは事実です。そういう人たちと一生懸命な人たちのラインを少しでも近づけることで、お互いが達成感を得ることができ、生徒自身の成長につながっていくと思います。そのためには、多数を占める「中心メンバー以外の生徒の気持ち」を粗末にするわけにはいきません。
人間が「やりたくない」と思うことには必ず理由があります。合唱の場合は「歌が好きではない、歌いたくない」や「恥ずかしい」「繰り返し練習することが面倒くさい」などの理由が挙げられるでしょう。人の指示を聞くことができないのは何故か、みんなと同じように行動することができないのは何故か、協力できないのは何故か等、クラスの様子に注意を向けて生徒たちの会話や表情に注目しています。
どの行事もそうですが、みんながみんな全員が「頑張ろう!」と思っていることの方が珍しいことです。誰にでも得意不得意があります。得意なことではなくとも、「クラスのためにできることをしよう!」「苦手だけどできるだけ頑張ってみよう!」と1人でも多くの人が思って参加してくれることが大切で、その人数が多くなればなるほど一体感や達成感が感じやすくなります。生徒たちにそのようなことを感じてもらいたい。その一心でとにかく生徒に話を聞いて励まし、声をかけています。
協調と調和
多くの人と協力して、他のパートや他の人の歌声も聞きながら歌った経験は”賞”という形で返ってこなくても”良い学び、良い経験”として生徒の中に残っていくと思います。どうしても「結果」に目がいってしまいがちですが、「過程」もとても大切であることを伝えたい。
多くの人と協力して取り組んだことは「協調性」として生徒に身につきます。他のパートや他の人の声を聞きながら歌った経験は「調和性」として生徒に身につきます。どちらも日常生活で活躍する力であり、人と関わっていくうえで大切な力です。「中心メンバーと違い、自分はただ歌っているだけだった。」と思っている生徒がいたら「そんなことはない!」と声をかけます。何気ない生活の中でも日々成長するポイントがあり、生徒たちが気がついていなければ拾ってフィードバックしてあげる。行事や日常の過程にある、一つひとつの細かいことも丁寧に彼らの成長につなげていきたいです。大きな行事の最中は特にその成長が拾いやすい期間だと思います。いつも以上に生徒との時間に気を配り、大切にしていきたいです。
朝倉 しおり(あさくら しおり)
東京都内公立中学校 教諭
大学を卒業してすぐに公立中学校の教員になりました。
若手(寄り)の立場で生徒と一緒に日々勉強中。
「成長し続ける教師」を目指して考えたことや独り言を発信していきます。
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