2024.10.11
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先生にとって何だかとても大切なもの 毎日の給食で支えるもの育つもの

子どもたちも、もしかしたら私たちもずいぶんお世話になっているもの、それは給食です。
私の年代の先生なら、子どもの頃も教職としての時代も含め約半世紀ものおつきあいです。
しかも遠い昔の授業内容は忘れても、給食のメニューはどうやら忘れないものなんですね。
今日はそのあたりから話してみようと思います。

静岡市立中島小学校教諭・公認心理師 渡邊 満昭

子どもも先生も支えてくれる給食の大切さ

例えば「ほうれん草のごま和え」など、子どもの頃からくりかえし出てくる副菜には思い出が詰まっています。今も給食で一口食べるごとに、小学生の頃の自分に戻った気分になれるというのがすごいと思います(小さな頃はちょっと苦手でした・・・)。

これは我ながら小学生の頃の意識を維持できるという事でもあり、今も目の前の子どもたちと他愛もない話ができる秘訣は、そのあたりにもありそうです。

さて時々私がプライベートで出場する競技大会では、今年からマスクの着用要請がなくなり完全にコロナ前と同様の運営になりました。開会式では責任者の方々が「やっと日常に戻れました!」と感極まった感じで語っていました。給食もコロナの時代があけ、慎重さは必要ですがやっといつも通りになってきたなあと思っています。

個食、黙食を経て思うのは、みんなで食べる給食のおいしさです。たとえば、一人で食べるとただの甘口カレー、でも学校で子どもたちと食べるとおかわりもしたくなる格別なカレーに感じます。これこそが毎日の立ち仕事のなか、ときに1階から4階まで何度も何度も階段の上り下りもして常時動き回る体力を支えているのです。

今や給食メニューも相当に工夫されていると感じています。

プライベートで取り組んでいる競技の特性上、栄養バランスのとれた理想の献立(競技者=アスリートメニューのようなもの)に興味があるのですが、費用対策効果から考えても栄養素の摂取量から考えてもまさにお手本のようなメニューが出てくるのです。そんなときは、同じくアスリート仲間の先生と顔を見合わせながら「すごいね。このメニュー」「家でも作れるかな」と話をしています。

子どもたちは大人の私たちとは比べるまでもなく1年で体を大きく成長させていくわけですから、まさに誰もが小さなアスリートといえるでしょう。自分が食べたもので私たちの体はできています。だから週5日の昼食を給食でまかなうということは、体の3割ぐらいは給食でできているのかもしれません。やっぱり給食は大切だなあと思うのです。

給食時のちょっとした工夫が関わりを生み出すのかも

私は時間的に余裕を持って食事ができるタイプなので、衛生に気をつけつつも空いた時間で、教育相談的な視点から給食時の子どもたちに関わることもあります。たとえば子どもたち相互の関わりの場を作ったり、時には自分が関われるように配慮したりしています。給仕しつつ食事を受け取りに来る一人一人の様子を見守ったり、輪番制で先生の席と児童の席と交代して子どもの間に入って食事をしたりすることもあります。1日の中でクラスのメンバーそれぞれに関われる時間はなかなかないものですが、その意味で工夫が生きる部分もあるかと思います。また先生席に座る子には、みんなを見守っているつもりの私の気持ちを少し感じてもらえたらとも思いますし。

複数の先生で運営する合同給食の効果

そういえば、小規模校やクラスが複数ある支援級では、クラス合同で給食ルーム等を使い食事を取る例もありますね。それは単に全体で1クラス分(30人前後)の人数なら給仕が合理的だからと勝手に推測していました。

ですが、知っているのと経験してみるのとでは大違い、とても奥深い取り組みだったのです。まず給仕を分担できるので先生の側に心の余裕が出せます。これは子どもたちに給仕の方法についてあれこれ言わないで済むということにもなりますね。実はこれは楽しい給食の推進に欠かせないものであり、子どもの側にもお互いに待ってあげられる余裕が感じられるようです。

複数の先生で複数のクラスの子を見守れる体制の構築のためにも、あちこちのクラスの先生と子どもたちが一緒に給食を食べることは、様々な交流が生まれて効果が高いと考えます。

給食とは、ありのままの自分が出しやすい環境でもあり、それこそ先生も子どもたちも「同じ釜の飯を食い」「腹を割って話し合う」わけなのです。なんとなくピアカウンセリング的な要素も感じられます。子どもたちは実はあまり先生の顔が分からなかったりすることがあります。給食中なら、じっくり私たちを観察でき、食べ物の好みや実は食いしん坊であるとかないとかより身近に感じてもらえるようです。

そこで、培われた関係性は、安心安全の学年風土、学校風土とも呼ばれるものとなり、不登校の軽減や不測の事態の対応にクラスの枠を超えて協力できる力を、子どもたちにもそして先生にも与えてくれます。学年のどの先生とも相談できる関係性は、子どもたちにとって大きな安心となるのではないでしょうか。

支援級の子どもたちの中には、あまり食べることに意欲を見せない子もいます。とはいえ少しでも食べる楽しさは知ってほしいなと思っています。そんなとき、合同の給食は先輩の先生の上手な対応を知る場でもあります。豊富な経験からその子にも満足がいく方法を教えてもらえるのです。

人数の多さがかえって苦手となる子もいます。その時も複数の先生方で分担して柔軟に対応し見守る事ができます。徐々に集団になれる手立ても作ることだって連携の中でできるのです。

こんな対応の中、給食前までぷんぷんしていた子が給食後は何事もなかったかのように仲良く遊び始める様子を何度も何度も目にします。これも給食の取り持つ「縁」というものなのでしょう。

子どもたちにもそして先生にとっても、「なんだかとても大切なもの」はここにもありそうですね。

渡邊 満昭(わたなべ みつあき)

静岡市立中島小学校教諭・公認心理師・学校心理士・環境教育インタープリター・森林セラピスト


いつの間にか、小中学校全学年+特別支援学級+特別支援学校+通級指導教室での担任を経験し、生徒指導主任+特別支援教育コーディネーター+教育相談担当経験も10年を超えていました。すると担任を離れたとたんに何かを忘れてしまって、担任に戻ってみると忘れていたことに気がつくということがたびたびありました。それはうまく言えないけど何だかとても大切なもの。先生を続けていくための糧のようなもの。
その大切なものについて、自分の実践と合わせお伝えしていこうと思います。

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