2022.02.17
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震災を知らない世代に向けた授業の実践(3) ~震災掲示コーナーの作成~(さいたま市立植竹小学校 教諭 菊池健一さん)

2011年に発生した東日本大震災から、今年で11年を迎えます。
今の小学生たちには東日本大震災の記憶はほぼありません。東日本大震災後に生まれた子どもたちに向けて、震災の恐ろしさや防災の大切さについて伝える授業を、さいたま市立植竹小学校 教諭 菊池健一さんが連載形式で紹介します。
第3回では、道徳や国語など教科横断的に長期間にわたって学習を進めるうえで、子どもたちの興味関心を持続的に継続するために掲示板を活用した実践についてリポートいたします。

地図の掲示

掲示板に掲示した被災地の地図

2学期には、特別活動で東日本大震災の被災地の方々にスポットを当て、子どもたちと新聞記事や映像資料から震災について学びました。また、道徳の授業において震災を取り上げた資料を使い、震災についても子どもたちの興味関心を高めてきました。3学期には本格的に国語科を中心に震災を取り上げた学習をスタートします。「大地震が起こったときにどのように身を守るか」を調べ、身の守り方についての意見文を書く予定です。その準備を行いました。そこで、2学期の学習で高めた興味関心を持続させ、子どもたちが主体的に学習を進められるようにしたいと考え、学年掲示板の整備を行いました。

学年掲示板は子どもたちが普段よく通る場所に設置してあります。普段は委員会活動のポスターやコンクールの募集要項などが貼られていたり、児童の作品が貼られていたりします。この掲示板を活用して、震災に関連のある資料を掲示し、子どもたちの興味が持続するようにしました。

まずは、被災地である東北の地図の掲示です。この地図は新聞社が東日本大震災の特集用に作成した東北の地図です。地図には震災遺構など、震災にかかわるいろんな施設が写真入りで記入されています。この地図を一番目立った所に掲示しました。3学期は、新聞記者や当時被災地に暮らしていた学生さんがゲストティーチャーとして子どもたちに話をしに来てくれます。きっと、たくさんの地名が出てくると思うので、地図の掲示が役立つと思います。地名が出てくるたびにこの地図を見て確認できるようにしました。これまでの実践の反省点として、たくさんの被災地の事例を紹介しても、その場所を確認しないと子どもたちが被災地についてイメージをもちにくかったことが挙げられます。また、聞いた話の関連性もあまり意識できませんでした。今回の実践ではしっかりと授業で取り上げられた場所を確認することで、被災地に関するイメージをしっかりともてるようにしていきます。

写真の掲示

被災地の写真の掲示

2学期には震災を取り上げた授業やその他の時間に、被災地の様子について新聞記事や担任が教材研究で被災地を訪問した時に撮影した写真を紹介しました。子どもたちは東日本大震災の時には生まれてなかったため、当時のことは分かりません。そこで、新聞記事や写真などを活用することで当時のイメージをもつことができます。そこで、たくさんの写真資料を示しています。被災地での教材研究で子どもたちにぜひ見てほしいものをたくさん撮影してきました。それらを常に示せるようにしていきます。

掲示した写真は、東北の地図の場所と紙テープで結び写真の場所がどの位置にあるのかをすぐに確認できるようにしました。以前の実践ではたくさんの被災地の情報を与えても、子どもたちがどこで起きたことなのかがわからず、被災地のイメージをもちにくいことがありました。示した資料が東北のどこのことなのかをいつも確認できるようにしたことで子どもたちの被災地の状況の理解にもつながると考えています。

これから、たくさんの被災地の写真や記事を子どもたちに示していきます。そのたびに掲示を更新し、常に新しい情報を子どもたちに与えていく予定です。また、被災地を訪れたことのある保護者もいらっしゃるので、協力を呼び掛け、資料の提供をお願いしたいとも考えています。

新聞記事の掲示

大川小を取り上げた新聞記事の掲示

東北の地図や写真だけではなく、東日本大震災に関する新聞記事を掲示するコーナーも作りました。子どもたちは年度当初から新聞を使って学習を行っており、記事に慣れています。まだ中学年のため、詳しくすべてを読むことは難しいですが、記事の見出しや写真、そしてリード文などから記事の大まかな内容を読み取れるようになっています。新聞づくりの学習も行っているので、新聞に大変親しんでいます。その成果を生かして、東日本大震災関連の記事にもたくさん触れてもらうつもりです。

特に、学校で購読している小学生新聞でも東日本大震災の記事があり、デジタル版の新聞では記事の検索ができます。それらの記事も活用して、小学生用に書かれた震災関連の記事も多く示していきたいと考えています。

今年もまた3月11日が近くなってくると、各新聞に東日本大震災関連の記事が多く掲載されます。それらの記事を中心に掲示し、現在の被災地の状況について子どもたちと学んでいきます。また、これまでの授業で取り上げた宮城県石巻市の大川小学校の語り部・鈴木典行さんや同じく名取市閖上の遺族会代表・丹野祐子さんを取り上げた記事もたくさん示していきたいと思っています。

今回の単元の学習は、長期間にわたる学習です。そこで、子どもたちの興味関心を持続させ、常に「地震から身を守るには」という学習の目的を頭においておけるように効果的に掲示を工夫していきたいと考えています。そして、単に授業で取り上げる内容だけではなく、いろんな視点で震災について考えられるようにしていきたいと思っています。

文・写真:菊池健一

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