2024.06.12
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STEAM教育向けテーブルや3Dプリンター、世界スタンダードなプログラミング教材など注目の新製品が登場! New Education Expo 2024 リポート vol.2

国内最大規模のセミナーと展示による充実の教育関係者向けイベントNew Education Expo 2024 東京。6/6~8の3日間で8,000人を超える教育関係者が来場した。vol.2では展示ゾーンから、学びを深めてくれる理科実験用器具やSTEAM教育家具・教材、プログラミング教材、特別支援教育教材、ICT機器など、ウチダの注目の新製品を中心に紹介する。なお、いずれの製品も6/14~15に大阪会場で見ることができる。

UCHIDA SCIENCE

タブレットと連携する理科実験用センサーシリーズに新製品が登場

【サイエンスWebセンサー 距離】力学実験で、走行距離を自動で計測・グラフ化

サイエンスWebセンサー 距離

GIGA端末とつないで使用する「サイエンスWebセンサー」シリーズに、力学実験用の新センサーが登場した。斜面を走り降りる台車の走行距離を、0.1秒ごとに光学センサーで計測。測定データはブラウザアプリ「Uchida Science Web」(インストール不要で利用可能)に送られ、グラフ化も自動で行ってくれる。

従来の実験では、台車に付けた紙テープに機械で打点していたが、距離を読み取ったりグラフ化するのに時間がかかった。また消耗品のテープを交換する手間とコストがかかるため、何度も実験するのは難しかった。このセンサーを使えば、条件等を変えて何度でも実験し、考察を深めやすくなる。また実験結果を即座にデジタルデータ化してくれるので、他者との共有もスピーディに進む。実験結果を照らし合わせながらの対話も、活性化するだろう。

【電子天秤シリーズ】重さを自動計測し、計測値をアプリに送信・グラフ化

電子てんびんNVシリーズ・WEBアプリセット

「Uchida Science Web」アプリと接続して用いる電子天秤も、注目を集めていた。計測した数値はアプリに送られ、自動でグラフ化もしてくれる。実験の様子を写真撮影することも可能だ。

計測を電子化することで、数値の読み取りミスや書き込みミスを防げるとともに、化学反応で質量が変化する実験などでは、重量の計測は機械に任せて、観察に集中できる。計測データはリアルタイムで共有可能なので、他班の数値と比較して話し合う活動もしやすいだろう。

すぐに固まる地層教材。準備が楽なので 実験機会を与えられ、理解も深まりやすくなる

【ボーリング実験器】

ボーリング実験器

全国学力・学習状況調査では、「地層」に関する正答率が低い傾向にある。そこに注目して開発されたのが、この新教材だ。

これまでは粘土や寒天を用いて先生が地層教材を準備していたが、手間と時間がかかるため、実験を断念するケースもしばしばあった。この教材なら、素材を水と混ぜ合わせれば1、2分でゲル状に固まり、地層を作成できる。準備が楽になれば、生徒たちに実験させる機会も増え、地層への理解も深まりやすくなるはずだ。

ウチダ理科パンフレット2024(中学校).pdf 

1台2役!「生物顕微鏡」と「実体顕微鏡」を兼ね備えた顕微鏡

【マルチファンクション生物・実体顕微鏡】

マルチファンクション生物・実体顕微鏡 SF-600MLと、プラスティモンスター

定番の顕微鏡シリーズでは、「1台で2役」のおトクな顕微鏡が登場した。これ1台で、細胞や微生物などを観察する時に用いる「生物顕微鏡」と、鉱物や動植物などを観察する「実体顕微鏡」の両方の機能を兼ね備えている。

「観察対象によって2種類の顕微鏡を使い分けるのでは、整備コストがかかり、保管場所も取る。また、同じ観察対象でも植物の葉など両方のレベルで観察したい場合もある。1台でまかなかえるようにできないか」との、学校現場からのニーズに応える形で開発された製品だという。

写真の2台の顕微鏡の間に置かれている「プラスティモンスター」は、生物の遺体に含まれる水分・脂肪分を合成樹脂に置き換えた小魚標本で、直接手に取って観察することができる。

ウチダ顕微鏡パンフレット2024.pdf

STEAM教室

家具ブース

STEAMテーブルや椅子

1人1台端末の普及で使われなくなったコンピュータ教室を、STEAM教育などの創造的・探究的な学習に使いやすい環境へとリニューアルする動きが小中学校を中心に広がっている。

STEAM教育の中でもE(Engineering)のモノづくりを支援する「STEAMテーブル」は、そんなニーズに応える製品だ。天板はロングセラーの工作台と同じ仕様の頑強な木製。本体はスチール製で、キャスタータイプとアジャスタータイプがあり、それぞれトレーの有無を選択できる。

キャスターは大型で、車輪と車軸の回転を同時にダブルロックすることができ、可動性と安定性を兼ね備えている。全キャスターのダブルロック&解除を1カ所のレバー操作で行えるほか、トレーも1カ所の鍵ですべて施錠可能と、使い勝手も抜群だ。

大人子ども兼用の「ステップ付きチェア」のステップは、内側に湾曲した形状で、立ち座りがしやすく、カカトがぶつかりにくい設計となってる。また、前脚のみがキャスターになっているミーティングチェアが展示されていた。移動の際は後脚を持ち上げることで前脚キャスターを使ってスムーズに移動でき、座った時はチェアの動きが抑制される。

教材ブース

光造形3Dプリンターやプログラミング教材

近年、低価格化が進む3Dプリンター。ICTを活用した文理横断的な学びを支援する「高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)」を文部科学省が2024年度から開始したこともあり、導入を考えている学校も多いのではないだろうか。

「光造形3Dプリンター」は、台湾発の超高精細でありながら低価格を実現した話題の製品だ。光造形とは、紫外線をあてると硬化するレジンという樹脂を1層ずつ積み重ねて立体物を造る方式。材料を積層して造形する点は一般的な3Dプリンターと同じだが、他の造形方式に比べて積層痕が目立たず、仕上がりが美しい。

小型の導入モデルと大型のプロモデルの2タイプがあり、3Dプリント後の仕上げ処理に必要な機器をオプションとして用意。プログラミング教材とのセットでの利活用も提案しており、導入後に「宝の持ち腐れ」となる心配はなさそうだ。

幼児対象のプログラミング教材「toio プレイグラウンド」や、フルカラーLED・明るさセンサー・人感センサーが搭載され、USBで端末とつなぎ、Scratchで動くボ―ド「AkaDakoシリーズ」エントリーモデルなどの新製品も展示されていた。

教育ソフトウェア&コンテンツ

学習eポータル「L-Gate」フレンドリーサービス

プログラミング学習プログラムや、学びに影響を与える要素の見える化ツール

約800団体・1万校以上が利用する学習eポータル「L-Gate」と、国際技術標準を用いて名簿連携できるサービスが増えている。

その1つである、iJapan株式会社の「bsd for School」は、世界21カ国で利用されている香港発のプログラミング教育プログラム。日本語版は、日本国内の都道府県教育委員会、公立小・中・高校への内田洋行専売商品で、学校向け学習eポータル「L-Gate」の有償オプションとして提供している。

対象は小学校3年生から高校生まで。主要なプログラミング言語によるコーディングを段階的に学び、試行錯誤を繰り返すことを通して、プログラミング的思考を養える。

特筆すべきは、学習コンテンツを組み合わせて各学校の年間指導計画に沿ったカリキュラムを作成できること。総合的な学習の時間での自分史作成に年表を作る学習コンテンツを活用したり、国語に感想文を書く学習コンテンツを取り入れたりと、教科横断的に展開できる。

直観的な操作で子どもでも無理なく学習を進めることが可能。サポートも充実しているので、プログラミングの指導に自信のない先生も安心だ。

また、Institution for a Global Societyと内田洋行が共同開発し、6月3日から販売開始した「Ai GROW Lite」は、アンケートやゲームで、主体性・多様性・協働性、思考力・判断力・表現力、児童の特性(気質)、安心感(心理的安全性)や頑張ろうとする力(グロース・マインドセット)といった数値化が難しい力を測るサービスである。

その他、保護者連絡サービス「つながる連絡」「Sigfy(シグフィ―)」や、文部科学省CBTシステム「MEXCBT(メクビット)」でも採用されているCBTプラットフォーム「TAO(タオ)」など多数のサービスが紹介されていた。

特別支援教育教材

簡易カームダウンハウスやスイッチトイ

特別支援教育教材 2024年度新製品特集でも紹介した、屋根付きおりたたみシールド(簡易カームダウンハウス)、凸凹いすシートセット、療育デバイス(スイッチトイ)「COSMO-コスモ-」などが展示されていた。

「COSMO-コスモ-」には18種類のアクティビティが付いているが、例えばスイッチトイ6個を離れた場所に置いて「もぐらたたき」ゲームを楽しむことで全身運動ができる。

また、1年間のサブスクリプション契約のコーナーには、声の大きさを可視化する「WEBアプリ ボイスルーラー」や、現在地(学校、家など)と現時刻に応じて登録したメッセージ候補を9つずつ自動表示する「GPS-VOCAアプリ 以心伝心」、個別支援計画作成をアシストするAIクラウドサービス「キャリアサポートカルテ シームレスバディ®」などが紹介されていた。

【使い方動画】
WEBアプリ ボイスルーラー
GPS-VOCAアプリ 以心伝心
キャリアサポートカルテ シームレスバディ®

ハードウェア&学校設備

カメラ・マイク・スピーカー、電子黒板と教材プラットフォームなどを一体化してさらに便利に

ハードウェア&学校設備では、縦置きすることで、等身大に近いサイズで別拠点と接続して共同作業しやすい「Surface Hub 3」や、カメラ・マイク・スピーカーが一体となっていてDXハイスクールの遠隔授業などでも活用しやすい「ClickShare Bar」、教材共有・作成のプラットフォーム「Lumio」と連携した電子黒板「SMART Board」などが展示されていた。

複数のカメラを一元的に操作する「マルチカメラコンソール」(マイク付きカメラなら話者追尾も可能)や、マルチモーダルAIによって授業や会議の参加者の表情や姿勢を分析し、興味度を測定するソリューションの試作品も参考出展されていた。

今年のフューチャークラスルームは、左1面、正面2面のL字スクリーンで、没入感がアップ。160インチを3面連結して、指やペンで操作できるe黒板の他、遠隔操作でカメラの首振りやズームを制御できるPTZカメラなどが設置されていた。

記者の目

便利な実験器具を使って「省力化できるところは省力化」し、実験データの比較・検討や対話的な学びなど、「学びに直結する活動」に時間を割く。今回紹介した理科の新製品は、このようなコンセプトで作られていた。昔ながらの教材や手法でも、できなくはない。しかしこうした便利な器材を用いた方が、子供たちの学びが深まりやすくなるだろうと感じた。
STEAM教育などの教科横断的な学習が推進され、それに伴う学校施設の再構築が求められる中、STEAM
テーブルや光造形3Dプリンターには来場者の熱い視線が注がれていた。 また、数あるプログラミング教材の中でもbsd for Schoolは対象年齢が広く、授業にも取り入れやすいことから、現場の使いやすさでは群を抜いていると感じた。

取材・文:学びの場.com編集部 写真:学びの場.com編集部、New Education Expo実行委員会事務局

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