2025.05.30
  • x
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

はっけん!すごいぞ!あさ小きゅうしょく! 【食と学校生活】[小学1年生・学級活動(2)]

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイデア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子どもたちの興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第217回目の単元は芦屋市立朝日ケ丘小学校の「はっけん!すごいぞ!あさ小きゅうしょく!」です。

授業情報

テーマ:食と学校生活

教科:生活科・学級活動(2)・図画工作

学年:小学1年

「きゅうしょくミッション」活動のねらいと全体の流れ

給食についての理解を深め、苦手意識を少しでも軽減しながら、栄養のバランスを考えて食事をとる力を育てることを目的に、1年生が「きゅうしょくミッション」に取り組みました。
生活科で学習した給食のよさや特徴を振り返りながら、自分の給食時間について考えます。思考ツール(Yチャート)を使い、「食べること」「食べ方」「準備・片付け」の3つの視点から、自分にできる「きゅうしょくミッション」を考えました。
それぞれの視点の意欲づけとして「きゅうしょくミッション」をポスターにまとめ、感謝の気持ちを込めて給食室の職員に届けました。

給食のよさや特徴を調べる。【生活科】

授業は、給食室探検から始めました。
給食室は、衛生管理上の理由から子どもたちが直接中に入って見学することができません。そのため、栄養教諭に給食室の様子を動画で撮影してもらい、教室で視聴しました。

大きな鍋やざるなどの調理器具を見て、子どもたちはびっくりしている様子でした。動画を通して、給食のよさや調理員の願い、「いただきます」や「ごちそうさまでした」の意味を知ることができました。

自分たちの給食時間を振り返ろう。【学級活動(2)】

 

給食時間を振り返る

次に、自分たちの給食時間を振り返りました。

普段の給食時間の様子を動画で見て、

「自分の席に座っていない人がいる」
「静かに並んでいるね」
「おしゃべりをしながら並んでいる」
「配膳の仕方が上手」
「食器を静かに片づけている」
「お皿がピカピカ」

など、自分たちの行動を見つめなおすことができました。

また、地域の年長児を小学校に招待して実施した「わくわくごちそうパーティー」も振り返りました。年長児に伝えた給食のよさやマナーについても改めて思い出し、自分が給食時間に何ができるのかを考えました。

思考ツールを使って自分に合った給食時間を過ごす方法を考えよう。

 

思考ツールを使って考える

自分たちの給食時間を振り返り、給食時間を有意義に過ごすためにどんなことができるのかを考えました。「食べることについて」「食べ方について」「準備や後片づけについて」の3つの視点から考え、Yチャートを使用しました。
「残さず食べる」「お皿をピカピカにする」「お皿をかさねるときは音を立てないようにする」「給食当番の着替えを素早くする」「お皿をもって姿勢よく食べる」など、子どもたち一人ひとりが自分の課題を見つけることができました。

「きゅうしょくミッション」を考えよう。

 

きゅうしょくミッション

自分たちの給食時間を動画や写真を使って振り返りました。給食室の探検や「わくわくきゅうしょくパーティー」での献立づくりのことも思い出しながら考えていきます。栄養教諭からは、給食の献立がバランスを考慮されていることや、調理に関わる職員や生産者の思いについて話してもらいました。

考える手立てとして思考ツールを活用したことで、子どもたち一人ひとりが自分の課題を見つけることができました。3つの視点の中から、給食時間にできるようになりたいことを考え、「きゅうしょくミッション」を導き出しました。 

最後に、Yチャートの中央に自分の「きゅうしょくミッション」として取り組みたいことを書きました。子どもたちは、「早くやってみたい」「どんなポスターにしようかな」など次の活動を楽しみにしていました。

子どもたちが考えたミッションの例

・ひと口チャレンジ 
・のこさずたべる
・まえをみてたべる 
・こぼさずたべる
・きゅうしょくぎにすばやくきがえる 
・おさらをピカピカに

「きゅうしょくミッション」を紹介するポスターを作ろう。【図画工作】

 

きゅうしょくミッションポスター

自分で決めた「きゅうしょくミッション」をポスターにまとめました。
自分のミッションを言葉と絵で表現することで、子どもたちの意識がさらに高まったように感じられました。
完成したポスターは、給食週間に合わせて給食室の職員の方々に感謝の気持ちを込めて贈りました。
給食室の職員からも「今日はどうだった?」など声をかけていただくこともあり、子どもたちはますます頑張って取り組んでいました。
振り返りの過程では、ミッションチェックシートを用いて毎日簡単なふりかえりを行い、子どもたちは給食時間の自分の行動を見つめ直すことができました。

これまでの活動を振り返りながら、今後の「きゅうしょくミッション」についても考えて授業を終えました。振り返りを通して、自分の次の課題を明確にすることができたようです。

子どもたちは自分の給食時間をこれまで以上に大切に考えるようになり、感謝の気持ちとマナーについても意識して食べるようになりました。

振り返りのワークシート

・ミッションは合格でした。楽しかったです。残さず食べることができました。友だちのミッションもできました。

・ミッションのおかげでほぼ完食ができました。魚は大きかったのに食べることができて、「私ってすごい」と思いました。

・ミッションが終わっても、これからもがんばりたい。

授業の展開例

・調理員さんが給食を作る姿を通して給食への感謝の心を育てる。【道徳】   

友延 光代(とものぶ みつよ)

芦屋市立朝日ケ丘小学校
低学年を担任することが多く、生活科や国語科等の教科と関連付けた食育の学習に子どもたちと楽しみながら取り組んでいます。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop