2025.05.09
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焼いても溶けない!? アイスクリームとメレンゲの不思議な関係 【作ってみよう!食と科学】[大学・教育学部]

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイデア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子どもたちの興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第216回目の単元は「焼いても溶けない!? アイスクリームとメレンゲの不思議な関係」です。
「作ってみよう!」編では、実際に作りながら学べる内容をお届けします。授業や家庭での実践に役立つ調理のポイントを、食に関する学びを深めるきっかけとしてぜひお役立てください。

授業情報 

テーマ:食と科学

学年:大学教育学部

溶けないアイスクリームの秘密

 

ベイクドアラスカ、中には冷たいアイスが

アイスクリームをオーブンに入れて熱したら、どうなるでしょう?

「溶ける!」と思うのではないでしょうか。確かに、アイスクリームをそのまま入れれば溶けてしまいますが、ある方法を使うとオーブンで熱してもアイスクリームが溶けません!
その秘密は、メレンゲの泡にあります。その性質を利用して、ベイクドアラスカを作ってみましょう。ベイクドアラスカはアイスクリームをメレンゲで覆い、焼き目をつけたお菓子です。冷たいアイスクリームがアラスカの寒さを連想させることから名付けられたという説があります。

今回は空気の意外なはたらきに注目して、教育学部の学生が身近な科学現象をレポートします。
以下、学生の視点からお届けします。

準備するもの

・ボウル
・ハンドミキサー
・シリコンべら
・オーブン
・クッキングシート
・ミトン
・ポリ袋(クッキーを砕くため)
・口金をつけた絞り袋

材料

・クッキー 3枚程度
・卵白(2個分)
・グラニュー糖 大さじ1
・カップアイス 1個

1.メレンゲを作る。

 

卵白を泡立てる

下準備として、オーブンを200℃に予熱します。また、天板にオーブンシートを敷きます。

①ボウルに卵白を入れて、ハンドミキサーで泡立てる

泡立ちをよくするために、ボウルについている水分・油分は拭いておきます。
卵は冷たいものを使用するとしっかりしたメレンゲが出来上がります。

②白っぽくなったらグラニュー糖を加え、ツノが立つまで泡立てる

ハンドミキサーは高速で卵白を混ぜ、最後に低速でキメを整えます。
メレンゲが飛び散らないように泡立て終わったら、ミキサーを止めてから引き上げましょう。

2.オーブンで焼く準備をする

 

砕いたクッキーの上にアイスを乗せ、メレンゲを絞る

①クッキーを袋に入れて砕き、天板の上にのせる

クッキーを粗く砕くことによって、食感を楽しむことができます。
アイスクリームの土台となるため隙間無く敷き詰めることがポイントです。

②砕いたクッキーの上にアイスクリームをのせる

③口金つけた絞り袋に出来上がったメレンゲを入れる

④アイスクリーム全体を覆うようにメレンゲを絞る

コツは隙間無くメレンゲを絞ることです。

3. ベイクドアラスカを作る

 

オーブンで焼く

①200℃に予熱したオーブンで4分加熱する。

オーブンから取り出す際は必ずミトンを使うようにしましょう。

完成!

ベイクドアラスカの不思議

アイスクリームが溶けない秘密はメレンゲの泡にあります。メレンゲの泡にはたくさんの空気が含まれていて、その空気が断熱材の役割を果たし、オーブンの熱がアイスクリームに伝わるのを防いでいます。メレンゲの泡を利用した料理は他にもクッキーやスフレなどがあり、熱が通りにくいからこそ味わえるふわふわの食感を楽しめます。

この原理はダウンジャケットや複層ガラス(ペアガラス)など身近なものにも使われており、空気の遮熱性や断熱性による秘密がたくさんあります。熱してもアイスクリームが溶けない「ベイクドアラスカ」から空気の役割について体験的かつ主体的な学びに発展することができます。

学生の振り返り

・アイスクリームが溶け始める温度は-15~-18℃と言われているが、メレンゲを使うことによって200℃の熱にも耐えることができることに驚きました。予想と結果が異なることの面白さやなぜそのようになるのかを考えたくなる料理だと感じました。また、どのくらいの時間が経てばアイスクリームが溶けるのか、メレンゲの量は影響するのかなど料理を作る中で様々な疑問が浮かび、もう一度やってみたい!と思いました。
・今回の活動からメレンゲは熱伝導率が低く、空気は熱を伝えにくいという性質を持っていることを知りました。春夏秋冬を過ごしやすい暮らしができるのも空気のおかげだと気づき、見えない空気の大切さを知りました。

授業の展開例

・メレンゲの泡の量の違いによって熱が伝わる時間は異なるのか。

鴛田 怜桜、松下 葉耶

武庫川女子大学教育学部

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

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