最新の理科教材、データ利活用ダッシュボード、不登校支援 New Education Expo 2025 リポート vol.2

1996年に始まり、今年で30回目を迎えた教育業界最大級のセミナー&展示イベントNew Education Expo 2025 東京。6/5~7の3日間で約8,500人の教育関係者が来場した。vol.2では展示ゾーンから、ウチダの理科教材の新製品や子どもに関するデータの集約・可視化システム、学びの多様化を支える空間提案などを紹介する。なお、いずれの製品も6/13~14に大阪会場で見ることができる。
UCHIDA SCIENCE 深い学びを実現し、個別最適な学びを支える新製品
電流・電圧を即時に可視化し、グラフ化もしてくれる理科実験用センサー
【サイエンスWebセンサー 電流・電圧】
電流・電圧の実験で、数値をリアルタイムで計測・グラフ化してくれる新しいセンサーが登場した。手作業で数値を読み取り、記録する手間が不要となるため、「データの分析」にじっくりと時間を割くことができる。実験データはCSV形式で保存できるため、他者と共有したり、比較するのも容易だ。
このセンサーは無線接続またはUSB接続でGIGA端末と接続するが、専用アプリをインストールする必要はなく、Web上の無償アプリを使用する。ユーザーインターフェースも、とてもシンプルなので、子供でも直感的に操作できるだろう。
ヒューズが内蔵されているので、仮に過電流が流れてもヒューズを交換すれば即座に復旧可能だ。充電池ではなく乾電池で動くため、長期間未使用の状態からでもすぐに使えるのも嬉しいポイントだ。
小さくなってより使いやすく! 静電気の学習に役立つ実験器具
【静電高圧発生装置(バン・デ・グラーフ)】
中学2年生の理科「静電気」単元で活用されるバン・デ・グラーフ装置に、コストパフォーマンスに優れた小型モデルがリリースされた。直径12センチ、高さ31センチというコンパクトなサイズながら、十分に電気を蓄積可能だ。
従来の大型モデルは高価かつ保管場所も取るため、壊れても買い直せなかったり、台数を揃えるのが難しかったが、小型化と低価格化により、手軽に揃えられるようになった。静電気の性質を、全員がしっかり体感できるだろう。
空気の性質を、より正確に体感できる
【実験用煙霧装置と空気のあたたまり方実験器】
空気の暖まり方を実験する新型製品も、来場者の注目を集めていた。
これまで、こうした実験では線香の煙を用いるのが主だったが、線香が燃焼する際の熱で空気が暖められて上昇気流が発生するため、「煙は常に上昇する」との誤解を生む恐れがあった。対してこの煙霧装置は、特殊なリキッドを電気的に暖めて煙を発生するため、出てくる煙はほぼ室温と同じ。この煙を、「空気のあたたまり方実験器」に流し込むと、煙は室温なので、実験器の中をゆらゆらと漂う。そこで実験器に付いているヒーターをオンにすると、中の空気が暖められて上昇気流が発生。煙が上に向かう様子を観察できる。
さらに実験器の上部には冷却用アルミカップが設置されており、ここに氷を入れれば、実験器内の空気が冷やされ、下降気流が発生。煙が底に向かって流れていく様子も観察できる。教科書に書かれている「空気は暖められるとどうなるか」を実験するだけでなく、「では、空気は冷やされるとどうなるのか」という学習者の疑問に答えられる。
底部にはLEDライトも設置されており、煙の動きをハッキリと観察することができるようになっている。
天候に左右されることなく 春夏秋冬の太陽の動きを観察できる
【理科用地球儀セット】
太陽の日周運動の観察は、校庭に出て透明半球などを用いるのが主流だ。しかしこの方法だと天候に左右される上、季節による違いや、場所による違いを比較観察できない課題があった。
そうした課題を、この理科用地球儀セットは解決してくれる。LED電球を太陽に見立て、世界中の任意の地点から見た太陽の動きを再現できる。地軸の傾きも調整できるため、様々な季節における太陽の動きを比較観察することもできる。納得いくまで繰り返し観察することで、子供たちの学びは確実に深まっていくだろう。
ウチダの学校DXゾーン
子どもに関するデータ利活用
子どもに関するデータ利活用のブースでは、子どもの学習や生活・健康に関するデータを教育ダッシュボードで可視化し、活用する先進自治体の4つの事例を紹介していた。いずれも内田洋行がシステム構築を手がけたもので、自社を含めた複数の企業の製品・サービスを組み合わせ、 各自治体のニーズに合った支援を実現している。
例えば横浜市教育委員会では、学習eポータル「L-Gate」で子どものデータを集約し、児童生徒用・教職員用・教育委員会用の3種類のダッシュボードを開発。学力・学習状況調査や健康観察アンケートの結果などのデータを共有することで、個に応じた指導・支援を充実させている。
また、さいたま市ではMicrosoftのクラウド基盤を用いた教職員用のダッシュボードを整備。学習データに加えて健康診断の記録や出欠状況などの校務系データもわかりやすく連携・可視化し、具体的な指導や支援に落とし込みやすいと好評を得ている。
一方、子ども自身の振り返りに特化した福岡教育大学附属福岡小学校や、自治体が保有する福祉関連データを連携して支援が必要な子どもの早期発見・支援を目指している神奈川県開成町のような例も。導入の参考にしようと多くの教育関係者が足を止め、質問する姿が見られた。
ウチダの特別支援教育教材ブース
不登校(学びの多様化)支援
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カームダウングッズ
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簡易ブースセット
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不登校の子どもが増加の一途を辿る中、公立の学びの多様化学校(いわゆる不登校特例校。全国に300校が目標)、校内教育支援センター(スペシャルサポートルーム)の設置が進められている。
特別支援教育教材ブースでは、そんな不登校の子どもの学習・生活をサポートする空間づくりを提案していた。例えば、ストレス発散には体を動かす動的な方法と、心身を落ち着かせる静的な方法の両方に対応できることが望ましい。そこで、前者には飛んだり跳ねたりして遊べるプレイコーナーセット、後者にはカームダウンハウスとしても使える屋根付きの折りたたみシールドなどを紹介。撫でると動くぬいぐるみなどのリラックスグッズも並んでいた。
また、多数の学びの多様化学校を運営する星槎(せいさ)学園が開発した個別指導計画(IEP)作成・運用システム「STELLA PLAN(ステラプラン)」の参考展示も行われていた。長年の実践から得たデータに基づいて簡単に効果的なIEPが作成でき、教員はもちろん、児童生徒の成長や保護者との連携にもポジティブな効果が得られるとあって、注目を集めていた。年1回90分くらいかけて生徒・保護者に質問調査(アセスメント)を行い、それに基づくレコメンドを踏まえて、教員が個別指導計画を作成したり、生徒が毎日の振り返りを入力したりできるそうだ。
記者の目
理科の実験も、時代とともに「個別最適化」の方向へと進んでいる。教師主導の下に一斉に実験を行うだけでなく、児童生徒一人ひとりが課題を持ち、主体的に取り組む個別実験の重要性が高まっていくのは間違いない。それを支える理科実験器具が次々と登場していることは、教育現場にとっても心強いだろう。
また、教育ダッシュボードの開発は、どんなデータを、どんなシステムで、どんなデザインで可視化するのかなど検討事項が多いため、先行自治体の事例は大いに参考になると感じた。GIGA環境を活用して個別支援の質を向上させるツールも登場し、これからの不登校支援への期待が高まった。
関連プレスリリース
取材・文・写真:学びの場.com編集部
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