子どもと一緒に考える「わが家の防災」 日頃の備えが命を守る

私、アグネス・チャンがこれまで学んだ教育学の知識や子育ての経験をもとに、学校や家庭教育の悩みについて考える連載エッセイ。地震や台風など、日本は自然災害の多い国です。いつ起きるかわからない災害に備えて、家族で話し合っておくことが大切です。
今回は「子どもと一緒に考える『わが家の防災』 日頃の備えが命を守る」をテーマに考えました。
家族で「集合場所」と「連絡方法」を決めておこう
子どもたちが小さい頃は、「そばにいないときに地震が起きたらどうしよう」「助けに行ってあげられるだろうか」と、本当に心配でした。災害はいつ起きるかわかりません。家族がそれぞれ別の場所にいるときに地震が起きたときのことを、あらかじめ話し合っておくことが大切です。うちでは、大きな地震で避難するときには、家と学校の近くの公園に集まると決めていました。
東日本大震災の日、私はコンサートの予定が入っていました。次男と夫はアメリカにいて、長男は銀座で仕事、三男は学校に行っていました。結局、コンサートはキャンセルになり、途中で帰宅できない人たちを車に乗せながら、なんとか家に戻りました。ドアを開けると、家にはすでに10人以上の子どもたちがいました。三男は帰宅困難の友達を家に連れて戻ってきていたのです。長男は電車が止まってしまい、とっさに自転車を買って、家までたどり着きました。
連絡がとれなかったときはどうするかも決めておくと安心です。我が家では、日本国内で電話がつながらないときには、香港にいる姉を経由して連絡を取ることを考えています。また、電話ができなくてもメッセージは届くことがあるので、メールやSNSのメッセージを送るという約束もしています。
備蓄は、腐らない栄養食をお勧め

備蓄が大事だとわかっていても、続けることはなかなか難しいものです。私は保存できる食品は普段から多めにストックするようにしています。そして、特に蜂蜜を備蓄しています。
私は、旅行に行くたびに、その地方のはちみつを買ってきます。世界中に、いろんな花のはちみつがあります。今では、棚の半分くらいがはちみつで埋まっています。これが実は、最高の備蓄なのです。
はちみつは腐りません。火がなくてもそのまま食べられます。子どもからお年寄りまで、噛む力がなくても大丈夫。そして何より、大人数にも分けられるのです。ひとさじ、ふたさじでも、みんなに配れます。缶詰はたくさん貯めても大人数には足りませんが、はちみつなら対応できます。(※はちみつは、1歳未満の乳児には与えないでください。)
乾麺も便利です。お湯があれば食べられますし、非常時には、噛み砕いてそのまま食べることもできます。ほかにもジャムやチョコレート、アメ、油もカロリーが高く保存がきくので、普段から少し多めに買っておくといいでしょう。
そして、お風呂の水は抜かないようにしています。いざというとき、少しでも水があったほうがいいからです。パスポートや貴重品などはすぐに出せるところに置いてあります。また、現金も必要です。停電になるとクレジットカードや電子マネーは使えなくなってしまいます。
震災のとき、私は帰宅してすぐにキッチンに向かい、停電になる前にご飯を作りました。日頃から食材をたくさん持っていたおかげで、みんなに食べさせることができたのです。
命を守るのは、考えないで動ける訓練
地震が一番怖いのは、いつ起きるかわからないからです。台風なら予報があり、準備する時間があります。でも地震は違います。だからこそ、日頃からの訓練が大切なのです。
東日本大震災のとき、被災地を訪問して驚いたのは、子どもたちの被害が少なかったことです。悲しいことに子どもが犠牲になったケースもありましたが、多くの学校では先生たちが子どもを無事に避難させていました。それは避難訓練のおかげだと思います。
私も息子たちには小さいころから、地震で揺れたら火を止めることやドアを開けること、家の中ではどこが安全かなどを教えていました。いざというときに、考えないで行動できることが、命を守る力になります。日本は自然災害大国ですから、学校での訓練が徹底されています。その意識の高さは素晴らしいことです。
被災地で気づいたことがあります。お寺も学校も、小高い場所に建っていることが多いのです。そして、香港なら眺めが良いように、海に向かって建物を建てます。しかし、日本は違います。それは、津波が来たときに被害を受けにくく、避難しやすい場所を選んできたからなのかもしれません。先人たちはちゃんと考えていたのだと思います。
私自身、サンフランシスコ地震も経験しています。その時は大学で授業を受けていました。ゴンゴンゴンという聞いたことのないような地響きが鳴ったあと、ぐらぐらっと大きく揺れました。臨月だった私はお腹を抱えながら、必死に走って帰りました。地震の影響だったのか、帰り道は前も見えないほどの砂埃が舞い、本当に怖かったです。
その経験から思うのは、いざというときには「これを持って行かなきゃ」「あれを忘れないように」などと考えずに、まずは避難することです。命が何より優先です。パスポートがなくても大丈夫です。通帳や印鑑がなくてもあとから何とかなります。安全なところに逃げること、それだけでいいのです。
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アグネス・チャン
1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)
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