2026.02.05
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算数科における学び合いの仕掛け― 未習の内容を「指導なし」で与える算数授業の実践 ―(1)

本実践は、算数科において未習内容をあえて指導せずに提示し、学び合いによって解決させる授業の工夫を示したものです。
既習事項を生かし、子ども同士が説明し合う中で理解を深める姿が見られました。
教師は三つの判断軸を基に、任せる場面と支援する場面を見極めることが大切です。

東京都品川区立学校 平野 正隆

算数は「一人でできる」より「つながってできる」教科である

算数の学習内容は、スパイラル構造になっています。同じ内容を繰り返し扱いながら、学年が上がるにつれて少しずつ深く・広く・高度になっていく構造です。そのため、新しい単元や未習の内容であっても、既習事項を生かせば解決できる場面は少なくありません。

しかし、実際の授業では、

・習熟が不十分なのではないか
・既習を生かす力がまだ身に付いていないのではないか
・つまずいたらかわいそうだ

といった教師の不安から、自力解決の前に多くのヒントや説明を与えてしまうことがあります。
そこで本実践では、あえて「ほぼ指導をしない」状態で課題を与えることに挑戦しました。

未習の内容をあえて「教えずに」提示する算数授業

実践の舞台は、5年生算数「小数のかけ算」です。前時までに、「小数第1位×小数第1位」の計算方法を学習していました。本時の課題は、「小数第2位×小数第1位」の計算のしかたを考え、筆算のしかたを一般化することです。
そこで、次の式を板書しました。

4.36 × 7.5

この計算では、積が 32.700 となり、下の二つの0に斜線を入れる必要があります。
つまり、小数点の位置をどう考えるかがポイントになる問題です。

「教えない」ことを宣言すると、子どもは学び合いを始める

板書後、教師はあえて次のように声をかけました。
教師「まだ教えてないから、解いちゃダメだよ」

少し大げさに言うと、子どもたちからすぐに声が返ってきました。
児童「前回の授業でやったのと、ほぼ同じじゃん。できるよ」

そこでさらに、冗談交じりにこう続けます。
教師「この問題は、間違えやすい難しい問題だから、先生が教えないと、みんな間違えちゃうよ」

すると、
児童「俺たち、間違えないよな。先生、みんなで確認しながら進めていいですか」

教師は苦笑いしながら、
教師「先生の指導なしに、みんながこの問題を解けたら、先生がここにいる意味がなくなるじゃないか……」

と返すと、
児童「やってみようぜ」

と、いつも以上に前向きな空気が教室に広がりました。

「できない不安」は、学び合いの中で補い合える

教師が抱きがちな、

・習熟が不十分ではないか
・既習を生かす力が弱いのではないか

といった不安は、学び合いの中で十分に補い合うことができます。

分からない子がいれば、分かる子が説明する。説明する中で、分かるつもりだった子も理解を深めていく。そうした相互作用が自然に生まれていきます。重要なのは、「教えない=放任」ではないということです。

教師がもつべき学び合いを支える「三つの判断軸」

ただし、すべての場面で無条件に学び合いに任せればよいわけではありません。教師が事前に想定しておくべきなのは、学び合っても、ねらいを達成できない場合があるということです。そこで、次の三つの判断軸をもって授業に臨みます。 

学び合うことで、十分にねらいを達成できる場合
→ 事前のアドバイスなしに、自力解決(学び合い)へ。

学び合うことで、ねらいを達成できる可能性がある場合
→ 事前のアドバイスなしに自力解決へ。様子を見ながら、必要に応じて支援を行う。 

学び合っても、ねらいを達成できない場合
→ 導入段階で、既習事項を想起できるような助言を行う。様子を見ながら、必要に応じて支援を行う。

この判断をもとに、「どこまで任せるか」「いつ支援するか」を見極めます。

既習を生かして協力し未習内容を解決する算数授業

本実践では、子どもたちは既習事項を自然に想起しながら、互いに考えを出し合い、

・小数点の位置の決め方
・積に現れる0の意味

を確認し合っていきました。

教師が細かく説明しなくても、「前と同じ考え方が使える」という気づきが、子どもたちの中から生まれてきたのです。
未習の内容を「教えずに」与えることで、子どもたちは自分たちで学びをつなぎ、深めていく力を発揮しました。

平野 正隆(ひらの まさたか)

東京都品川区立学校


研究会での実践報告や校内での若手教員育成などの経験を通して、自分の経験や実践が広く皆様のお役に立てるのではないかと考えております。大人・子どもに関わらず、「明日から頑張れそうです」「明日が来るのが楽しみです」と言ってもらえるのが私の喜びです。

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