折り紙を使ったCulturally Responsive Teaching(文化対応教育)
前回紹介した文化対応教育(CRT、Culturally Responsive Teaching)とは、教師が文化的なニュアンスを理解することで、教師と生徒間のギャップを埋めるためのものです。
この「文化」とは世代から世代へと受け継がれる規範、信念、行動のことを指しています。
在沖米軍基地内 公立アメリカンスクール 日本語日本文化教師 下條 綾乃
一人の生徒がある質問に対してなぜそのように答えるのか、あるいは別の生徒が教師の目を見て会話することに抵抗を感じる理由は、育った家庭やコミュニティの文化的・言語的背景や境遇が影響しているのかもしれません。
我々教師は、学校が置かれている社会的・政治的背景を認識し、その現状を深く認知する必要があります。
生徒自身もまた、学校における自分の立場や、取り巻くシステムを理解することが求められています。
今回はCulturally Responsive Teaching (文化対応教育)を用いた教室での実践を紹介します。
レッスンプラン 「折り紙の算数 折り方、分数、文化」
対象学年:3~5年生
教科 :算数 ・社会・日本文化
時間 :60分
焦点 :日本の折り紙を通して幾何学(分数、対称性、角度)を学ぶ。
文化対応教育の視点:文化的な繋がりを築き多様な学びを肯定し、体験的・多感覚的な学習を取り入れる。
学習目標
1)折り紙を通して分数を識別し、表現する。
2)折り紙を使って、対称線や角度を探求する。
3)日本の折り紙の伝統について文化的な知識を得る。
4)数学が文化や実生活の中でどのように使われているかを考える。
スタンダード(学習指導基準)
CCSS.MATH.CONTENT.3.G.A.2(コモン・コア州基準、数学、3年生、図形)-図形を面積の等しい部分に分割する。
CCSS.MATH.CONTENT.4.G.A.3(コモン・コア州基準、数学、4年生、図形)-対称の線を認識する。
材料
折り紙(またはプリンター用紙を正方形に切る)
折り方を示したもの(鶴やシンプルな箱など)
分数円のテンプレート(オプション)
「3-2-1 Exit Ticket」(学習を振り返るアクティビティ)
レッスンの手順
導入(10 分)
ディスカッション
「紙を折って何かを作ったことがありますか」
「折り紙を知っていますか?どんなものが作れますか?」
「他の文化のペーパーアートやクラフトに似ているものはありますか?(例:パペル・ピカド、ネイティブアメリカンの紙織り、アフリカのケンテ模様など)」
「折り紙は集中力、忍耐力、そして数学であることを知っていますか?」
TED Edの動画「The satisfying math of folding origami(折り紙を折るという満足のいく数学)」を見せる。
画用紙にベン図描き、ディスカッションに繋げていく。
そして実践で完成した折り紙を生徒に見せながら、折り紙の歴史と日本文化における折り紙の役割(平和、心、祝い、尊敬)を簡単に紹介する。
探求 (25分)

折り紙実践
一人3枚の折り紙を配り、自由に折ってみる。折り紙の本やYouTube、折り紙のサイトなどをChromebookで調べながら作ってもよい。折り紙プロジェクトはテーブルやカーペット、廊下のどこで行なっても構わない。そして教師は回りながら算数に基づいた質問をする。
「何等分できたかな?」
「この三角形は正方形の何分の一ですか?」
「この図形の対称線は何本になったか」
数学的な繋がりのポイント
1)分数(1/2、1/4、⅛)を折り目で識別する。
2)作品ができ上がったあとは、対称性と図形(二等辺三角形、正方形、長方形など)について話し合い、折り紙を使った角度の探求をする。
3-2-1 Exit Ticket(15分)
振り返りと他教科との繋がり
・今日の授業で学んだ3つのこと
・算数のことで学んだ2つのこと
・日本の折り紙について1文で説明してみよう
文化対応による探求、PBL(課題解決型学習)、そして算数、社会、言語(日本語)という3つの教科を横断した総合学習は、生徒同士の協働学習だけでなく、教師同士のコラボレーションも可能にします。このような総合協働学習はこちらでも広く実践されています。
教科の枠を超えて概念を結びつけることで、知識がどのように相互に関連しているかを理解できる利点があります。加えて時代の背景や視点をよりよく理解し、理解力や批判的思考を深めることができます。
実際、私たちの日常生活では、課題やタスクが1つの分野に限定されることはほとんどありません。だからこそ、カリキュラムを横断した授業は、様々な分野の知識やスキルを必要とする実社会の複雑な問題を映し出します。それらに対応する批判的思考力、想像力、問題解決力をつけることが可能になるでしょう。
そして何よりも異なる専門分野の教師が協力し合うことで、教師としての成長を促し、現場はより強固な学習共同体を築くことができると考えます。生徒にとってもチームワークの重要性を示す模範となるでしょう。

下條 綾乃(しもじょう あやの)
在沖米軍基地内 公立アメリカンスクール 日本語日本文化教師
日本語学校や領事館等で日本語を教えた後、米軍基地内の公立アメリカンスクールで日本語日本文化を教えて20年ほどになります。何年経っても毎日驚きと気づきがあり、それらの一部を皆さんと少しでも多くシェアできたら嬉しいです。外国の子供達に自分の話す言葉や習慣、文化を教えることの楽しさ、難しさ、面白さを呟いていきます。
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