算数教材開発「対称な図形」(No.2)
算数のオリジナル教材を紹介いたします。ぜひ、ご活用いただければと思います。
単元:「図形の対称」(6年生)
場面:導入
難易度:★★☆
東京都品川区立学校 平野 正隆
単元について
図形の対称性に着目して考察し、図形を折り重ねたり、回したりする操作活動を通して対称の概念形成をねらっています。
自然界や日常生活の中でも対称性をもった美しい形が存在します。
これらは整った形に多く見られます。
本教材の概要
本教材は、本単元の導入時に活用できる問題です。
児童に苗字を挙げさせて、教師が黒板に板書していきます。
その際、教師は何も言わずに
「すべての漢字が線対称のグループ」
「一部の漢字が線対称のグループ」
「すべての漢字が線対称ではないグループ」
に分けて板書します。
すると、児童は次第にグルーピングの仕方、つまり対称性に気付き始めます。
本教材の仕掛け
板書する際は、「はね」「はらい」をせずに、あえて対称になるように書いていきます。
「田口」「山本」は、どの漢字も線対称な図形になっています。
「平野」「鈴木」は、「平」と「木」だけが線対称になっています。
苗字の一部の漢字が線対称です。
「村上」「佐藤」は、どの漢字も線対称ではありません。
本教材は、仲間分けをする様子から、図形の対称性に児童自らが気付くことができる良さがあります。
また、気付いた子のつぶやきから、自分だけでは分からなかった子も理解し、少しずつその人数が増えていきます。
その後も、どんどん苗字を挙げてもらっていくと、さらに特別なことに気付く子が出てくる場合があります。
それは「田」と「口」が、180°回転しても形が変わらない、特別な漢字であることです。
児童から出てこなかった場合は、教師が「実は、この中で田口さんだけ特別な仲間です」などと、ヒントを与えます。
こうして、図形の対称性について気付き、線対称と点対称の理解へと繋ぐ導入ができます。
実践
先生「平野先生と鈴木さんは仲間だね」(「平野」「鈴木」を板書する)
児童「先生、なんでですか」
先生「さて、なぜでしょう。そんな、山本さんは仲間ではありません」(「山本」を板書する)
児童「ひどい。先生、村上さんは仲間ですか」
先生「村上さんは、先生の仲間でも山本さんの仲間でもありません」(「村上」を板書する)
児童「えぇ〜」
児童「僕はどうですか」
先生「田口さんは、山本さんの仲間です」(「田口」を板書する)
児童「なんかわかった気がする」
児童「漢字の画数とか?」
児童「先生がすぐに答えてるから、画数ってことはないんじゃない」
先生「佐藤さん、なんか分かってそうですね。あなたは、どの仲間になると思いますか
児童「私は、村上さんの仲間だと思います。なぜなら、漢字を半分・・・」
先生「ストップ。それ以上は言わないでください。佐藤さんは、村上さんの仲間で正解です」(「佐藤」を板書する)
児童「半分・・・なんかわかった気がするぞ」
こうして、気付いた子からヒントを出させつつ、気付く子を増やしていきます。
自ら気付けた子は、とてもうれしそうな表情を浮かべます。
理想は全員が自ら気付けばいいのですが、実際は9割くらいが気付いた時点で時間切れです。
先生「仲間分けによく気付くことができましたね。皆さんが気付いた通り、漢字を半分に折ってピッタリ重なるかどうかでグループ分けしたものです。実は、この中にさらに特別な名前があります」
児童「誰ですか」
先生「それは、田口さんです」
児童「あっ、わかったぞ。田口さんは縦を折り目にしても、横を折り目にしてもピッタリ重なるよ」
先生「良いことに気付きましたね。他に気付くことはないかな」
児童「180°回転させても同じになる」
児童「確かに。じゃあ、田中や井口もそうなる」
先生「では、今日発見した漢字のように、折ってピッタリ重なる図形を“線対称“、180°回転させて同じ位置に戻ってくる図形を“点対称“といいます」
こうして、「線対称」「点対称」についての導入を進めていきました。
終わりに
本教材には、児童自らが気付くことができる良さがあります。
皆さまに広くご活用いただければと思っています。
平野 正隆(ひらの まさたか)
東京都品川区立学校
研究会での実践報告や校内での若手教員育成などの経験を通して、自分の経験や実践が広く皆様のお役に立てるのではないかと考えております。大人・子どもに関わらず、「明日から頑張れそうです」「明日が来るのが楽しみです」と言ってもらえるのが私の喜びです。
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