2021.10.09
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

宮城県の視察(4)

この夏休みに実施した、宮城県の被災地への視察のレポートの4回目です。
以前にも訪ねたことがありますが、仙台市若葉区の荒浜小学校が震災遺構として公開されていますので、今回も訪ねました。

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当 菊池 健一

荒浜小学校へ

荒浜小学校校舎

荒浜小学校は東日本大震災当時、2階まで津波が襲いました。児童や職員、そして町の人たちは屋上に避難して難を逃れることができました。校舎跡に入ると、津波のすさまじさを感じられます。前回訪れたのが4年前ですが、そのころと比べると近くにある避難道路や、防潮堤などの整備が行われ、復興をしている姿を見ることができます。しかし、小学校一帯は居住することができなくなったため、周りはほとんどが更地になっています。これから防災公園ができるそうです。

今回の視察では、担当する学級で取り組む、震災を取り上げた学習の導入で使うために被害を受けた学校の写真を撮影することと、その様子を具体的に見ることがねらいでした。現在指導している児童は東日本大震災の時にまだ生まれていません。その子たちに震災を身近に感じてもらうためには、自分たちが日常の大部分を過ごす学校の様子を示すことだと考えました。児童が学ぶ学校には津波は来ませんが、大きな地震が来る可能性は大いにあります。地震や津波などの災害で学校の教室がどうなってしまうかをしっかりと取材して帰ろうと思いました。

校舎の様子を見学して

校舎の入り口に行くと、まず目を引くのが、津波の力で捻じ曲げられた2階の窓の鉄枠です。津波でいろんなものが流されてきたために、大きくゆがんでいます。この様子を見るだけでも津波の威力を感じることができます。校舎に入ると津波が直撃した教室を目の当たりにします。壁や床などがめくりあがり、無残な状態です。もしここに子どもたちがいたらと思うとぞっとします。校長先生の判断で屋上に避難できたので、助かることができました。本当に災害の際には適切で素早い判断が必要とされると感じます。

4階の展示室では学校の備品の展示のほか、当時の校長先生や教頭先生のインタビュー映像が放映されていました。震災当日の緊迫した状況がよく分かります。そして、子どもたちだけでなく、地域の方のことも考え、冷静に判断をしていかなければならなかった校長先生をはじめとする先生方の行動に感銘を受けました。子どもたちは次の日に屋上からヘリコプターで救出されました。本当に緊迫した状況であったのだろうということが分かりました。実際の校舎の中で当時の様子の映像を観ることで、当時の様子がリアルに分かってきました。

最後に学校の屋上にも上ってみました。当時、子どもたちや先生方、そして地域の方々が避難していた場所です。津波が襲った当時の映像を思い出しながら、景色を眺めました。現在は荒浜小学校の周りには何もなくなってしまいました。近くには避難道路や防災公園が整備されつつありました。また、海の方を見ると高い防潮堤も建てられていました。震災前まではこの地域に住んでいた住民の方たちは、いつでも海が見える状態だったのだろうと思います。今は防潮堤のため海が見えなくなりました。地域の方たちはそれをどう思っていらっしゃるのだろうかと考えてしまいました。前回、荒浜小学校を訪れたときに偶然当時の校長先生がいらしていました。お話をお伺いする中で、当時のとっさの判断がいかに重要であるかということを学びました。私自身が荒浜小学校の教師だったらどのように行動していただろうと考えました。

今回の学びで生かせること

今回の取材で、地震と津波によって学校がどのような被害を受けるかを実際に見ることができました。そして、その様子を写真に撮影することもできました。この資料を、担当する子どもたちへの指導に生かしていきたいと思います。私の勤務するさいたま市の学校では津波が来る恐れはありませんが、大きな地震が襲う可能性はあります。荒浜小学校の様子を見ることによって、災害の怖さを感じ、普段からの備えがいかに重要であるかを考える材料になると思います。

2学期には勤務校で地震を想定した避難訓練があります。その事前指導として、この荒浜小学校で撮影してきた写真を活用したいと思っています。また、当時の荒浜地区の動画なども取り上げて、いかに地域が壊滅的な状態になってしまったかを児童に感じさせたいと考えています。そうすることで、定期的な避難訓練であっても、真剣に取り組もうとする気持ちがわいてくると考えています。そして、訓練から、もし本当に大きな地震があったらどんなことに気をつけたらよいかを調べていく意欲を持ってほしいと思っています。今回の視察において、たくさんの資料を得ることができました。また、私自身も防災について、そして震災についての認識を新たにすることができました。そして、子どもたちと一緒に防災について考えていきたいと思っています。

菊池 健一(きくち けんいち)

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。

同じテーマの執筆者

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop