2024.06.05
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被災地訪問(福島県双葉町・大熊町へ)

毎年、担当する児童を対象に、東日本大震災を取り上げた授業を行っています。
今年で13年目になります。
私自身、被災地に赴き勉強をしてきました。
そしてたくさんの方との出会いがありました。

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当 菊池 健一

ふたたび福島へ

双葉町にて

今回、2年に1度ぐらいのペースで訪れている福島県の双葉町と大熊町を訪問しました。両町ともここ数年は、特定復興再生拠点区域として住民の方が帰還されたり、東日本大震災・原子力災害伝承館などの大きな施設が建てられたりなど、復興が進んでいるように見えます。そこで、今回も両町を訪ねてみることにしました。

約2年ぶりに双葉町に降り立ちました。変わっているのは、双葉駅の西口に復興住宅ができたことです。もう100人ぐらいの方が帰還しているようです。まだ建設中ですが、住民の方の憩いの場が作られたり、診療所も設けられたりしています。街を歩く人の数が増えたという印象を受けました。私が初めて双葉町を訪ねた時には、除染土を運び出す大きなトラックがひっきりなしに街の中を走っており、なんだか怖い気持ちになったことを覚えています。

現在は、双葉町は特定復興地域に人が入れるようになり、伝承館などの施設ができました。また、久しぶりに訪ねてみるといろんな企業の建物が増えました。
大熊町でも、復興地域に役場や住宅、そして大きな学校が建てられて多くの方が帰還されています。

双葉町の防災担当の元職員の話を聞いて

新聞記事やテレビニュースなどでは、昨年度に双葉町や大熊町の復興について大きく取り上げられました。除染が進み、人々が帰還できるようになったという記事を見て大変うれしくなったことを覚えています。今回の視察では、双葉町にある伝承館で、語り部講話を聞くことができました。語り部の方は、当時双葉町の職員で主に防災を担当されていました。原発事故の後に、情報が錯綜する中、大変な思いで避難をされたことを話してくださいました。その方は、最前線に立って活動されていたため避難所でのスクリーニング検査で線量が基準を超えてしまい、なかなか避難所に入れなかったそうです。

そして、元職員の方のお話で一番心に残ったのは、「建物をたくさん建てても復興とは言えない」ということです。確かに双葉町には伝承館や産業センターなどの大きな施設ができました。また、居住できないところには様々な企業の建物が建ち始めました。新聞やニュースの報道でも、双葉町や大熊町に人が戻り始め、復興がかなり進んでいるという印象を受けます。しかしながら、実際に現地に赴いてみると居住地の近くには買い物ができる施設もなく、診療所もありますが、毎日診察を受け付けているわけではなく大変不便です。そういう状況の中では本当の意味では「復興」とは言えないのではないかとおっしゃっていました。被災地の当時を知る方のその言葉は大変重いと感じました。

私自身、重点的に除染を行い、居住できるようにすることで、とりあえずは復興を成し遂げているという感じを出すことも大切ではないかと思いましたが、双葉町や大熊町にずっと暮らしてきた人たちにとってはそうは思えないのかもしれません。本当にできるだけ以前と同じような暮らしに戻れてこそ、復興と言うことになるのだと感じます。そんなことを今回の視察で感じました。

さあ、これから…

今回の視察で学んだことを生かして、児童との授業にも取り入れていきたいと思っています。児童は、社会科で政治に関する学習を行い、住民の願いを実現する政治の仕組みについて学んできました。その発展的な学習として、自治体や国が住民のためにどんな政策を行っているのかを考えさせるために、被災地を取り上げた記事を活用することにしました。

児童は政治の学習で憲法について学んでいます。被災地で住民だった方が安心して暮らせるようにすることは憲法のどの理念に当たるのかを実際に調べたり、被災地の方のどんな人権を守らなければならないのかを具体的に考えたりする活動を取り入れました。また、自治体が、どのような施策を行い、住民の方の安心を確保していかなければならないのかについても児童なりの視点で考えさせました。この学習を通して、児童は自分たちが学んでいることとこれまで数年間学んできた震災に関することがリンクし、新たな視点で震災について考えられるようになりました。児童にはこれからも、様々な視点から被災地の方について考えられるようになってほしいと思っています。

今年も年度の後半から震災を取り上げた実践を行います。被災地を取材した写真記者を招いての授業や被災地で語り部をされている方の話など、児童がリアルに今の被災地の様子を理解できる工夫をしていきます。そして、児童が卒業した後にも震災のこと、防災のこと、そして命の大切さなどをずっと考え続けてもらえるようにしていきたいと思っています。この夏は福島に続き、宮城県の石巻を訪ねます。私も被災地に赴き震災について学び続けます。

菊池 健一(きくち けんいち)

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。

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