2021.09.11
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「宮城県の視察②」

この夏休みに実施した、宮城県の被災地への視察のレポートをシリーズで書いています。今回は宮城県の女川そして石巻を訪ねたことを報告します。どちらも、現在の復興の様子、そして残されている震災遺構を見に行くのが目的でした。

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当 菊池 健一

女川・石巻へ

震災遺構・石巻市立門脇小学校校舎

女川は東日本大震災で壊滅的な被害を受けました。しかし、震災後ハイペースで復興が進み、現在は駅も再建され、駅前には商店街がオープンしました。全国から観光客も多く訪れています。視察に行った日も、多くの観光客でにぎわっていました。漁業も再開され、海には船がたくさん停まっていました。10年前の津波で大きな被害を受けたことを忘れてしまうくらいです。しかし、女川から少し車を走らせると、急に何もなくなります。津波で被害を受けたままの景色が広がっています。

石巻も、海に面した町が壊滅的な被害を受けました。当時、津波を警戒して町を見下ろせる日和山に登った人たちは助かりました。震災遺構となっている門脇小学校の児童も全員が日和山に避難し無事でした。保護者の方も児童と同じ行動をとったために助かった方が多くいたそうです。しかし、地域の方の中には高いところに逃げ遅れて亡くなってしまった方がたくさんいました。また、幼稚園バスが園児を乗せて津波に向かって走ってしまったため、数名の園児が亡くなるという悲劇も起こりました。

この女川と石巻の様子を見ながら、震災について振り返る機会としました。そして、児童と共に学ぶ視点を得ようと考えました。

復興の様子と震災遺構

女川で見学した震災遺構は、旧女川交番です。女川の駅前はだいぶ復興が進み、震災を知らない世代にとっては、この町が壊滅的な被害を受けたことは想像もできないくらいになっています。新しくできた商店街の近くに、ひっそりと当時の女川交番が震災被害を受けた姿のままでたたずんでいます。交番の頑丈なコンクリートが倒れてしまっている様子を見ると、津波の強さと恐ろしさが伝わってきます。当時この場所にいたらきっと助からなかっただろうと考え、ぞっとしました。交番は震災遺構として公開されています。津波の怖さを知るためにぜひたくさんの人がここに訪れてほしいと思いました。

石巻では来年の4月から震災遺構として公開される、旧門脇小学校校舎が震災当時の姿をとどめています。現在、震災遺構として公開するための工事が行われており、中に入ることはできませんでしたが、近くから校舎の中をのぞくことができました。校舎を見ていると、当時の津波の勢いがどれほどのものだったのか想像できました。もし、ここに小学生がとどまっていたら助からなかったと思います。当時、門脇小学校の児童が避難した道と同じ道を通り、日和山に登ってみました。当時の児童や先生方、そして保護者の皆さんが不安な時間を過ごしたことを想像しながら、日和山からの景色を眺めました。

今回の視察で、被災地で語り部をしている方の話を聞きました。「震災の記憶の風化は被災地から始まる」ということをおっしゃっていました。震災後に生まれた若い世代の方は、女川や石巻の復興している様子を見ると、震災があったことなど思いもよらないことになってしまいます。新聞やテレビなどのメディアを通して過去の出来事として知るだけのことになる可能性があります。そのような中、いつまでも震災のことを忘れず、教訓として震災遺構が残されることは大きな意義があることだと考えます。

今回の学びで生かせること

今回、視察してきた女川交番や旧門脇小学校校舎の写真を児童に示し、地震や津波の恐ろしさを改めて感じられるようにしたいと思います。震災当時の新聞記事も示し、私が撮影してきた写真と一緒に示すことで、この10年間の溝が埋まると考えています。私が視察してきたときに感じたことも話すことで、さらに児童は興味を持つのではないかと思っています。

今年度は12月から国語と道徳、そして特別活動を結び、教科横断的な形で震災を取り上げた学習を行います。そのための準備として、児童が東日本大震災について興味関心を持つための工夫をしていかなければなりません。その一つとして、今回取材をした女川交番や旧門脇小学校校舎の写真を掲示し、児童に見せたいと考えています。児童は社会科学習が始まり、地図を活用し始めました。まずは、「この交番は宮城県のどの辺にあると思う?」とか、「この学校の場所はどこでしょうか?」と投げかけて、児童に興味を持たせるつもりです。

今回の実践では、東日本大震災が起こった時にまだ生まれていなかった児童に大震災は自分の身にも起こりうるという実感を味わわせることが重要になると考えています。資料の提示やゲストティーチャーの招待など様々な工夫を行いながら豊かな学習ができるようにしていきたいと考えています。そして、児童の安全意識を高められたらと思っています。

菊池 健一(きくち けんいち)

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。

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