2024.03.25
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キャリア教育の視点からの取り組み まとめ

本校では、学校教育目標を「心~魅力ある生徒の育成~」と掲げ、その実現に向け、基礎的・汎用的能力の育成を目指した、様々なキャリア教育の取り組みを進めています。その成果が認められ、平成31年1月には、キャリア教育優良学校として、文部科学大臣表彰を受賞しました。これまでの7回の配信では「笑育」「キャリア・タイム」「らしさ発見プログラム」など、本校独自の取り組みを中心に紹介してきました。今回の連載では、これまで本校のキャリア教育に関わっていただいた、学校外の方々からいただいたコメントを中心に紹介していきます。

大阪市立中学校教諭、日本キャリア教育学会認定キャリアカウンセラー 青木 信一

「キャリア・タイム」でお世話になった、講師・阿部将太さんより(大阪市生野区「花かご」勤務)

「花かご」で仕事中の阿部将太さん

「料理人として職業講話をしてほしい」と先生からお話をいただいた時、「やらせてください!」とは言ったものの内心「大丈夫かなぁ…先生たちみたいにスラスラ話せる気せえへんよ…」と不安な気持ちに苛まれながら、話す内容や構成を考えていきました。これまで大勢の前で話す機会があまり無く、少し苦手意識がありました。
迎えた当日。生徒の皆さんと先生方、職員の皆様がとても明るく迎え入れてくださいました。シミュレーションはしたものの、緊張のせいで早口になってしまったのか想定していた時間より早く終わってしまい、生徒さんから私への質問コーナーをしました。
「得意料理は何ですか?」「よく使うお気に入りの調味料は何ですか?」
生徒さんだけでなく先生も質問をして下さって、皆さんに助けられた印象がとても強かったです。中には「お店を新しくオープンする場合、どこで始めたいですか?」と鋭くて良い質問をくれる生徒さんもいて、おぉ、と面食らってしまうこともありました。
私は「せっかく講師として招いていただいたのだから、学校の外から伝えられること沢山言った方が良いよね!」と意気込んで話そうとしました。しかし、一度目の講師をやってみて「一番伝えたいメッセージを丁寧に届けること」の方が大事だなと感じました。多くのボールを一斉に放り投げるとひとつも取れないことが多いです。
一番受け取ってほしいものを手渡しするイメージで、2回目は「夢を口に出す事」を核にお話ししました。将来の夢でなくても、「テストで〇〇点を取る!」「部活の大会で優勝する!」など、何か成し遂げたいものを友達やご家族に話してほしいなと考えました。
自らが発する言葉がその人の人間性を作っていると私は考えています。ただ前向きに建設的に、厳しい局面であっても明るくポジティブな言葉を皆にかけられる人が一流だなと感じることが私の人生では多かったです。きっと皆さんもそうではないでしょうか。中学一年生の皆さんに授業をするというより、自分もこんな人間でありたい。と自戒の念も込めて皆さんと話しました。
きっとどんな仕事であっても人間力は必要です。料理人は料理を作るだけではなく、足を運んでいただいたお客様のお腹だけではなく心を満たす仕事です。もし、私の話を聴いてくださった生徒さんの中で料理人になる方がいれば、美味しい料理を作れるだけではなく心根の優しい素晴らしい仕事人になってほしいと思っています。私もまだまだ未熟者ではありますがお会いした生徒の皆さんに恥じぬよう、これからもっと精進致します。

「らしさ発見プログラム」でお世話になった、キャリアコンサルトさんの方々より

この授業が多くの小・中学校で行われるようになったのは、一部の小学校で試験的に導入された後、青木先生が中学生の課題解決にこの授業が最適であると確信し、その見解を元に授業を実践することができたからです。思春期は、大人への成長と共に周囲の期待を感じ、学業、部活動、人間関係、進学や将来への不安などを抱えやすい一方で、自立心が芽生え、大人との会話が減り、素直に助けを求めにくい傾向があります。それゆえ、守秘義務を持つ国家資格を持ったキャリアコンサルタントが、斜めの関係の大人として話を聴き、そのままを認め、自己の特性に気づかせることが、自己肯定感を高め、キャリアの発達を促進すると私たちは確信しています。また、「日頃の大人との関わり」が少ないほど、キャリアコンサルタントとの対話が重要であることが明らかになり、その取り組みを進めることができました。心から感謝しています。 キタさん

子どもとの1on1では、こちらもとても学びになります。1人1人違った個性や感覚があり、それを親や先生からの影響で無意識に表に出していない時もあり、「弱み」だと書いてくれていてもよくよく聴いてみれば本人はそれほど困っていない(親に「弱み」だと言われているだけ)場合も結構あったりします。親や先生は子どものこと(特に将来のこと)を考えて、とても一生懸命関わるあまりに(イメージとしては)子どもを追い越してしまっている(?)ことも多いと感じます。でもそれは「愛情」からのことが多いので、子どもたちもそこはちゃんと「自分のことを思ってくれているからだ」と感じているんだなぁと思いました。子どもって大人が思っている以上によく分かっているところと、本当によく分かっていないところが混在しているので、そのバランスを1人1人見極めながら寄り添っていくことが大切だと感じます。これからも、子どもでも「1人の人間」として尊敬の念を持って接していきたいと思っています。 ますちゃん

「はじめまして」の人と話すのは大人でも緊張するもの。ましてや、生徒さんにとっては知らない大人で、そんな人と話す機会もあまり経験していないのではないでしょうか。はじめは表情も硬く、こちらからの問いかけに一つひとつ言葉を選びながら話す生徒さんも多いのですが、話しているうちに次第に表情が和らぎ、自分から話し出してくれる変化を見てとれるのがなにより嬉しい瞬間です。生徒さんたちにとって、心理的安全性の保たれる場で、親でもなく、先生でもない、なんのしがらみのないキャリアコンサルタントとの対話が、ありのままの自分を見つめる機会になったのなら幸いです。 さゆりさん

授業が始まる前の緊張感とは打って変わって、1on1を終えた生徒たちの表情は晴れやかです。1on1の教室から帰ってきた生徒に「話してみてどうだった?」と聞くと、「たくさん話せました!」とはっきり伝えてくれる場合もあれば、ニコッとはにかんで自分の席に帰る場合もあるのですが、一応に優しく、ほっとした気持ちが伝わってくるのが印象的でした。らしさ発見プログラムでは、生徒自身が自分について考えるだけではなく、一緒にグループワークをした同級生やキャリアコンサルタントという第三者の目線も加えることで、より多面的に、そして、自分が知らない自分を知る機会を得ることができます。それはやがて、生徒がこの先歩んでいく中でふとした瞬間に思い出し、前に進む糧となるのではないでしょうか。そのような場に立ち会うことができて、とても嬉しく、幸せに思います。 まいこさん

自分が中学生だった時に、こんな授業を受けたかったなと思います。こんなふうに自分の気持ちを聴いてくれる大人が、中学生だった自分にいたらなと思わずにはいられません。また、自分らしく生きることの大切さを生徒さんに愛情を持って伝えようと行動を起こされている先生方を心から尊敬致します。生徒さんと対話をさせていただくと、よりお互いを受け入れ合っていく世の中になってきているのだなと強く感じます。 あきこさん

キャリコンさんと1on1をする前は、緊張した表情の生徒さんもいましたが、1on1を終えると、すっきりした晴れやかな顔に変わっていました。この学校は頑張り屋さんの生徒さんが多い印象を持っていましたが、第三者から「よさ」「がんばり」などをフィードバックして認めてもらったり、ついつい肩に力が入りがちな生徒さんが「ありのままの自分」を認めてもらえたことが、このような変化につながったのかなと感じました。角野さん

まとめ

キャリア教育に関わり、はや20年が過ぎようとしています。学校外の教育資源との連携を軸に、子どもたちの成長を願い、さまざまな取り組みをしてきましたが、今振り返ると、それらの取り組みを通して、逆に子どもたちから学ぶことの方が多かった気がします。「キャリア教育を通して、子どもたちだけでなく、関わった全ての大人も大きく成長することができる」このことばを胸に、これからも微力ながら、キャリア教育の推進と普及に務め、日々、自分自身が成長していきたいと考えています。全8回にわたり、配信を読んでいただき、ありがとうございました。 青木信一

青木 信一(あおき しんいち)

大阪市立中学校教諭、日本キャリア教育学会認定キャリアカウンセラー、スクールカウンセリング推進協議会認定ガイダンスカウンセラー
大阪市立中学校で社会科教諭をしています。日本キャリア教育学会認定のキャリアカウンセラーとして、中学校教諭の立場から、積極的にキャリア教育の推進と普及に取り組んでいます。


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