入試問題は奥深い
この時期、大学共通テストや中学入試、高校入試など、様々な入試が行われます。
問題を教員目線で見てみると、学生や生徒の頃とは違った考え方ができるようになりました。
東京都内公立中学校 教諭 朝倉 しおり
何かを「問う」ということ
そもそも私は、「問題を解くこと」が好きで数学教師になりました。数学の楽しさを少しでも多くの人に知ってもらいたいと思いながら生活しています。
そんな数学の問題を解くことが好きな私ですが、最近は高校入試を解くことが多くなりました。新規採用時代の指導教官のおかげで、都立高校の入試問題は約20年分解きました。最初の頃は自分の苦手な分野に苦戦することもありましたが、どのように話をしたらわかりやすいかを考えていたら、解く時のコツが見えてくるようになりました。ひとくくりに「パターンがある」と言ってしまえば簡単に聞こえます。しかし、似たような問題でも条件や答えを導くきっかけが微妙に違うと、まるで全くの別物になり得るのです。(そのせいで学生時代苦しんだ訳ですが……)
数学に限った話ではないのかもしれませんが、同じことを問いたいと思っていても、そのことを導くための方法はたくさん存在します。「教える」という立場になり、「教える」目線で問題を解いたとき、難易度よりも「作問者の気持ち」について考えることが多くなりました。「なんでこの数字にしたのだろう?」や「この問いはなんのためにここで出題したのだろう?」と、問題のその向こうにいるであろう「作問者」のことを考えながら取り組んでしまうようになりました。
すると不思議なことに、全く手出しができなかったような問題でも、与えられたものを「どのように使えば解くことができるのか」を考えられるようになり、解くためのきっかけを見つけやすくなりました。もちろん、問題の中には「それは無理だろ!」と思ってしまうような解法もありますが(笑)
教員になって苦労した(苦労している)ことは、日々の授業や生活指導はもちろんですが、「定期考査の作成」です。難易度や採点、生徒たちの実態について考えながら、適切な評価を行う材料としてふさわしいようなテストを作成するのは大変なことです。出題する問題の難易度や数字、問題数など、様々なことを考えながら作成しなければなりません。
教員として問題づくりをするようになると、様々な問題に対し、これまでとは違った目線で取り組むことができるようになり、問題の持つ「奥深さ」にまで魅了されるようになりました。
何を考えてどう作っているのか
全世界の教員ってどうやって問題を作成しているんですか?
素朴な疑問です。私自身は教科書や問題集の問題、入試問題を参考に数字や条件を少し変えて作問してみたり、一緒に教えている先生と相談して作問してみたりと、苦戦しています。
素敵な問題や、解いていて心が踊るような楽しい問題と出会うたびに、「作った人はどんなことを考えていたのかな〜」と気になります。もちろん、学校によって作る手順や方法、難易度は違うと思いますので一概にどうということは言えないと思います。小耳に挟んだ話では、先生方が問題を作成して持ち寄って、入試として出題するものを選ぶという方法がありました。そんな、先生方が時間をかけて作成している問題ですが、具体的に何を考えて、どの資質や能力を知りたくて、作成しているのでしょうか。何かを参考にしているのであれば、その参考になっている問題はどのように作られたのでしょうか。「鶏が先か、卵が先か」というジレンマに陥りそうです。
何を考えてどう解いているのか
中学2,3年生にもなると、受験のためや好きだからという理由で高校入試や難しい問題を持ってくる生徒がいます。先日、自分が解いて感動した問題(小問の誘導がきれいにその後で使え、計算量を減らすことができた問題)をある生徒も解いたそうで、解き方について話をして大いに盛り上がりました。自分が感動したことを共有できることの楽しさを改めて感じたとともに、一人でも多くの生徒に、こういう気持ちを味わって卒業していってほしいなと思いました。
難関校と言われる学校の入試問題は、単純に計算量が多かったり、考え方が難しいことも多いです。とにかく計算をして、正解したときはうれしい気持ちでいっぱいになりますが、「こんなの時間内に解くのは難しいだろう」という気持ちで解説を読んで、楽な解き方があったことを知ったときには悲しいような悔しいような気持ちになります。学生の頃から「最後は気合!」という気持ちのもと問題と向き合ってきた私は、教員になってやっと「いかに楽をして解くか」「いかに綺麗に解くか」ということを考えるようになりました。難しい問題と出会うたびに、生徒たちがどんなふうに考えて解いているのかも気になるようになりました。
そもそも、難関校に進学することが全てではありませんし、難しい問題を解くことができるから偉いわけでもありません。細かいことを気にすれば、生徒によって身につけるべき力は違うと思います。それでも、「学んだことを使って」問題や課題の解決に取り組む力は、身につけておいて損はない力です。問題にぶつかったとしても、これまでに学んだことを使ってどう解決すればいいのかを考えられるような生徒を育てていきたい。そして、そんな力を身につけさせることができるように努めたいと思います。

朝倉 しおり(あさくら しおり)
東京都内公立中学校 教諭
大学を卒業してすぐに公立中学校の教員になりました。
若手(寄り)の立場で生徒と一緒に日々勉強中。
「成長し続ける教師」を目指して考えたことや独り言を発信していきます。
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