まず、大前提として国語科における魅力的な学習課題を設定する目的としては、国語科本来の目標があります。
例えば、物語教材においては、「自力で物語を読むことができる」であり、説明文では、「論理的に物事を捉えられる」です。これらの目標を達成するには、与えられた課題をその時間に「こなす」だけでは身に付きません。やはり、自分から「主体的に」なって学んでいく必要があります。「主体的」になるには、まずは国語の授業を好きになってもらう必要があります。
「好きこそものの上手なれ」という言葉があるように、好きになれば、子どもたちは自然と伸びていきます。あの有名な吉田松陰も、教師として一番大切なのは「弟子の心に火をつけることだ」と言っています。
動機づけについて
では、「国語が好き」「国語をもっと勉強したい」と思わせ、行動させるにはどうするか。心理学には「動機づけ」という言葉があります。この「動機づけ」には「外発的動機づけ」と「内発的動機づけ」の2種類があると言われています。
例えば、「外発的動機づけ」の代表的なものには、「100点をとったらご褒美をもらえる」「いい成績をとったら褒めてもらえる」などがあるでしょう。一方、「内発的動機づけ」には「分からない問題を分かりたい」「もっと登場人物の気持ちを知りたい」など行動そのものが目標になっているものです。子どもたちは、どちらの動機づけによって日々学習しているのでしょうか?
一般に、成績上位層の子どもたちは、「内発的動機づけ」によってであり、成績下位層の子どもたちは「外発的動機づけ」によってであると言われています。また、学年によっても差があります。しかし、「ご褒美をもらえるから頑張る」という外発的動機づけが「主体的な学習者」とは到底言えません。やはり、教師である以上「内発的動機づけ」によって子どもたちを「主体的な学習者」にしてあげたいと思うのは当然であると思います。
内発的動機づけについて
内発的動機づけについては、教育心理学者・品川不二郎さんの著者『子どもの意欲を育てる心理学』に次のように書かれています。
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これまでの心理学の研究で、内発的動機づけの代表的なものとして、二つのものがとりあげられています。一つは、興味とか好奇心とか呼ばれるもので、もう一つは、達成動機、くだいていえば「やる気」のようなものです。
「子どもの意欲を育てる心理学」品川不二郎(1980.あすなろ書房.P108)
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私の考える「魅力的な学習課題」は興味や好奇心を引き出すものです。
例えば、前期に紹介した前担任による動画での導入は、子どもたちの興味や好奇心をひき、内発的に動機づけを行おうと考えたものでした。また、2020年1月6日のつれづれ日誌で紹介した知識構成型ジクソー法で「ズレ」を引き起こさせたのも「知りたい」「なんで」という子どもたちの好奇心を満たすものでした。しかし、ここで終わっては、単なる好奇心を満たしただけの授業になってしまい、意欲が継続していきません。
適切な評価について
魅力的な学習課題を設定し、本時レベルで意欲をもたせられたとしても、その意欲が単元を通して継続しなければなりません。もっと言うと、国語の授業に対して意欲が継続していかなければなりません。先に紹介をした本の中に次のような言葉がありました。
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本質的に重要なのは、本人自身が感じる自己の充実感、あるいは達成感なのです。そのためには、学習に対する目的意識や価値意識があるということ、学習の目標を自覚しているということ、および、学習の結果をその目標に照らして、自ら評価できるということが必要です。
「子どもの意欲を育てる心理学」品川不二郎(1980.あすなろ書房.P115)
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つまり、自分の目標が達成できたとき(国語で言うなら本時の学習課題がクリアできたとき)に得られる成功感や達成感や満足感が行動を強化させ、学習意欲を高めるのです。
従って、魅力的な学習課題を設定し、提示して考えさせただけではブツ切りの意欲となり、継続できません。そこには、毎回の教師による適切な評価が必要なのです。この適切な評価があってこそ、子どもたちは成功感や達成感や満足感を味わうことができるのです。
ただ、ここで大事なのは、「子どもたち自身が適切に評価できる」ことです。そのためには、教師が「それいいね」や「素晴らしい」といった曖昧な評価を伝えていては、子どもたち自身が「あの先生は、何をもっていいと言っているのか」が分かりません。ということは、「子どもたち自身が適切に評価できない」ことに繋がるのです。
だからこそ、教師は、客観的に「何ができているからA評価なのか」「どこができていないからC評価なのか」という明確な基準を伝える必要があるのです。
例えば、国語の要約指導なら「〇〇のキーワードが入っているからA評価」「この3つのキーワードが入っていないからC評価」といった感じです。これがひいては、入試でも問われる力になっていくのです。
川上 健治(かわかみ けんじ)
明石市立錦が丘小学校 教諭
クラスの全員が楽しく学び合い「分かる・できる」ことを目指して日々授業を考えています。また、様々な土台となる学級経営も大切にしています。
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