2020.01.06
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1年 どうぶつの赤ちゃん(後編)

1年生の代表的で良質な説明文である「どうぶつの赤ちゃん」の一単元の指導の流れを公開させていただきます。今回は、調べ活動の仕組み方なども踏まえて紹介している後編です。

明石市立錦が丘小学校 教諭 川上 健治

明けましておめでとうございます。今年も新しい年が始まりましたね。気が早いですが、来年の今頃は、新しい学年の新しい子ども達と明けましておめでとうをしている頃です。毎年、この時期になると「来年の今頃は新しい子ども達としっかりと良いクラスを創れているのだろうか」という不安と期待が入り混じります。もちろん、その前に、今のクラスの子達と、どういう形で学級終いをするのかも考えないといけませんが……。

さて、年をまたいではいますが今回は前回の記事の後編を書かせて頂こうかと思います。

前回は、クラスの友だちの「なんで、しまうまは産まれてすぐに走れるのか」という疑問を基に、「肉食動物は、生まれてすぐに走る必要がないからすぐに立ち上がれないのだろう。これをライオンタイプとする。草食動物は、襲われるから生まれて、すぐに立ち上がれないといけないのだろう。だから、生まれてすぐ立つのをしまうまタイプとする」という予想までたてました。
その後の、展開は、「クラスでたてた予想(肉食動物はライオンタイプ、草食動物はしまうまタイプ)を確かめる」となっていきます。ここでは、東京大学CoREFの提唱している「知識構成型ジグソー法」を基に、調べ学習と話し合い活動を仕組みました。それは、調べる動物を4つ(きりん・ぞう・トラ・パンダ)に絞り,各班(3人か4人班)で一人1つずつ別の動物を調べさせます。その後は,「ライオンタイプ」と「しまうまタイプ」のどちらのタイプかとそれを裏付ける理由を,同じ動物について調べるグループ同士で協力してワークシートに書かせた上で班毎での話し合いに臨ませます。私のクラスには大まかに4人班が7つあるので、例えば、ぞうを調べる子どもが7人(1班から7班までの各班1人ずつ)いることになります。それは、他の動物(きりん、トラ、パンダ)も同じです。一人ではなく、複数人と活動をして、なおかつワークシートも全く同じことをグループ同士書かせることで,個人間の学力差を埋められ,班毎での話し合いをスムーズに行えると考えました。特に、1年生(に限らずですが)の段階では、図鑑から読み取れる量の差、読み取ったことを文章化する能力には個々の差が如実に表れてしまいます。この差を無くすために、今回のような方法をとりました。そして、その後は班に戻り、調べてきたことを報告して、予想通りか予想は外れていたかの班毎の結論をつけます。

また,話し合いを活発にするために班の中に一人だけ予想と反する動物(パンダ)を調べさせる仕掛けをしました。このパンダの存在がなく、調べた動物が全部「予想通り」では、班に戻って結果を伝えても、「やっぱり予想通りだったね」でどの班も終わってしまいます。それでは、ただの確認になり、「深い学び」にはなりません。しかし、パンダ(パンダは草食動物ではあるという観点からは、しまうまタイプであるが、生まれた時は小さいという観点からはライオンタイプである)をいれることで、「あれ、パンダは予想通りではなかったね」「結論どうしよう?」となり、より質問や共感ができたり,感想を言うことができたりして,活発な話し合いになり、「深い学び」に繋がると考えました。そして、副次的ではありますが、どう合意形成をはかっていくのかも学習できます。私自身、子ども達が、話し合いをする中で、どう結論付けるのかが楽しみでした。

実際にすると、「多数決で予想通りにした」という班もいれば「パンダのことを詳しく聞く中で、予想が外れた」とする班もいました。7班中、5班が「予想通り」2班が「予想が外れた」と結論づけました。ですので、クラスでのまとめは、「大体は予想通りではあるが、予想と違う動物もいる」となりました。この授業はあくまで、1年生の「国語科」の授業であるので、そこから先は国語科の領域ではないので、あえてこのまとめにしました。

今回の実践で大切にしたことは、「主体的・対話的で深い学び」に少しでも近づくために

  1. 教師主導ではなく、子ども達からの疑問を思考の出発点とする
  2. 子ども達からの疑問を大切にクラスの解決すべき課題とする
  3. 課題解決には話し合い活動をする中で、調べたことに対してのお尋ねをさせる
  4. 調べ活動をするさいは、学力差をなるべく埋める手立てを施す(今回は、ジグソー法を使いグループで同じワークシートを使って全員で考えさせる)
  5. 結論を一つにまとめるようにすることで、多様な意見を精査する

等々のことをしました。細かいことを書けばまだまだあるのですが、しかし、1年生なりに、既有の知識を使いながら、また比較(ライオンは~だったけどパンダは~)という視点を使いながら、話し合いに参加をする姿を見て、少しは「主体的・対話的で深い学び」に近づいてのではないかと感じました。授業に成功はないので、今考えると「あそこはこうしておけばよかったな」とか「この言葉を選択した方がよかったな」というのも、もちろんあります。ただ、目の前の子ども達の実態に合わせて、日々よりよい授業を提供するのに近道は無いので、地道に精進していきたいと思います。

この時の指導案をpdfファイルとしてつけているので、参考にして頂けたら幸いです。

どうぶつの赤ちゃん指導案.pdf

川上 健治(かわかみ けんじ)

明石市立錦が丘小学校 教諭
クラスの全員が楽しく学び合い「分かる・できる」ことを目指して日々授業を考えています。また、様々な土台となる学級経営も大切にしています。

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