2021.03.16
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3年生物語文指導完結編part2

今回は前回の続きの授業実践を紹介します。特に、導入場面です。

明石市立錦が丘小学校 教諭 川上 健治

魅力的な学習課題を創り出すために

あっという間に今期も最後の投稿となりました。今回は前回の続きで3年生として最後の読みもの教材「ゆうすげ村の小さな旅館」の実践を紹介したいと思います。

今回は、魅力的にみせる学習課題の提示の仕方により子どもたちを「深い学び」に誘えることができるかを試みました。これまで私の記事には何度となく書かせていただいていますが、「深い学び」ができる授業というのは、クラスが対話的にならなければなりません。友だちと対話をすることで、自分一人で考えていた知識の幅を友だちの意見が広げてくれたり、同じ意見であっても新たな見方を広げてくれたり、自身の考えを再考するきっかけともなったりするからです。では、子どもたちが「対話的」になるにはどうしたらよいのか。それは、子どもたち自身が授業に対して「主体的」になる必要があります。極端な話、「とりあえず話し合いなさい」というようなやらされている感満載の授業よりも、子どもたちが「話し合いたい」「自分の考えを伝えたい」と前のめりになっている授業とを比べていると、当然、後者の方が圧倒的に「対話的」になります。従って、子どもたちが「対話的」になるには「主体的」でなければなりません。だから、私は、授業の中でいかに子どもたちが、「主体的」に動けるかを日々考えています。とはいえ、子どもはやっぱり子どもです。我々教師が理想としているように、いつも主体的に動いてくれるとは限りません。月曜日の1時間目や木曜日の6時間目に毎回毎回生き生きと授業を受けられる子の方が少ないと思います。

だからこそ、教師が意図的に「主体的」になれるような魅力的な学習課題を創り出す必要があると考えます。もちろん、「国語だったら国語の本質の部分で主体的にならせるべきだ」という意見も分かりますが、上にも書いたようにどれだけ素晴らしい授業をしようとも、子どもだからといって、いつも前向きな訳がありません。大人でもそうです。「今日は少し気合いが入らないなー」と思う時も誰にでもあるでしょう。そんなときに、前向きに意欲的に仕事をしようと思っても、きっかけがなければ無理です。それは、子どもたちも同じです。そのきっかけが「魅力的な学習課題」なのです。

今回は、ちょうど1年前に1年生で「たぬきの糸車」の実践をしたときに試みた映像による導入からの学習課題に繋げるという実践を、より授業の流れと関連付けた映像にして試みてみました。この試みの効果を2つ挙げたいと思います。

1.「眠たいな」「しんどいな」と思うマイナスな気持ちを少しでもプラスに変える

この時間の目標は「数あるしかけの中で最も重要なしかけは何かを捉えること」です。しかし、唐突に「色んなしかけを発見してくれたけれど、どれが一番重要だと思う?」と問うても、子どもたちの頭は「???」です。そこでワンクッション置く為にも、本時の課題を提示する前に、「ちょっと聞いて。昨日、どのしかけが重要か隣のクラスの○○先生と話していると去年担任だった△△先生が入ってきて話し合い始めたんだ。それ動画にとったからちょっと観てー」というふうに話を切り出します。

ここでのポイントは、子どもたちにとって馴染みのある先生に登場してもらうことです。これだけで、「6時間目の国語眠いなー」と内心思っている子も、「ん?面白そう」となります。案の定、「あー○○先生だー!あっ△△先生だ」となりました。これで、とりあえずの掴みは成功です。肝心なのはここからです。これが単に「面白かったな」で終わるのか、その後の子どもたちの思考の手助けとなる仕掛けになるのか、この動画の内容次第です。

今回は、特にそこを意識しました。

2.一人学びの時の思考の布石になる

単に「『美月』のしかけが大切だと思うよ」「私は、むしろ『宇佐見』のしかけが大切だと思うな」というやり取りをみせるだけでは、その後の一人学びの布石にはなりません。今回は、「大切なしかけは?」に対して、「全てのきっけかになっているから」や「自然のことにも繋がっているから」等の理由で「ウサギダイコン」を選ぶことが私の中の理想にあり、そこから最初の工事の人たちを登場させた意図にも繋がりをもたせようとしていました(ここで森の道を工事=鳥の巣を壊す=自然を破壊する=ウサギダイコンで耳をよくして自然の素晴らしさを伝える)。しかし、そこまで深く考えられるのはごく一部であろうと想定し、当初から子どもたちとの全体交流の中でそこまで迫れたらという思いがありました。
しかし、今回は「美月」「ウサギダイコン」「耳が良くなる」「色白」の四択にしていました。ここで、一番分かりやすく、飛びつきやすいのが「美月」であると考え、これを選択する子が圧倒的に出てくると想定しました。これだと、「自然」のところまで迫ることができません。ですので、クラスの子の思考の布石にする為に、あえて動画の中で、

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先生A:私は「宇佐見」というしかけが分かりやすかったし大切だと思うな
先生B:それだったら簡単すぎない?おしりたんていの「おしりを探せ」みたいな感じで、他の部分にはあんまり繋がりがないよ?
先生A:あぁそっか
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というやり取りをしてもらいました。このやり取りをみせることで、「あっ。そういうことか。ということは『美月』も違うんだな」という思考のヒントにもなります。そこで、また、子どもたちは、思考し、「だったら『ウサギダイコン』かも」という考えに至る子が必ず出てきます。あとは、理由をどれだけ考えられるかがその子たちの勝負です。

ただ、今回は最初にここでいう「大切」という概念をクラスで共有できずに進んでしまったことが反省点です。

3.どこでも誰でも簡単に

動画を授業導入に使い、学習課題に入るパターンは「どこでも誰でも簡単に」できます。一人学びのときに何を考えさせたいかを想定し、そこへの布石も動画の中に盛り込むことができます。ある程度、自由が利くのです。タブレットが1台あれば十分ですので、マンネリ化した授業を打破したいと考えている先生は一度お試しください。

以上、今期の執筆もこれで終了です。私の拙い授業実践、そして何より私の拙い文章力でどこまで私の考えが伝わったかは分かりませんが、これを読んだ一人でも多くの先生方のたたき台となれば幸いです。

なお、授業実践につきましては、前回の投稿をご覧ください。
3年生物語文指導完結編part1

川上 健治(かわかみ けんじ)

明石市立錦が丘小学校 教諭
クラスの全員が楽しく学び合い「分かる・できる」ことを目指して日々授業を考えています。また、様々な土台となる学級経営も大切にしています。

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