2019.04.04
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〝目的〟と〝志〟で振り返る教育実践(第10回/最終回 〜変わるもの、変わらないもの〜)

教育大革命の今、変わるもの、変わらないものは何かについて述べます。

練馬区立豊玉中学校 主任教諭 谷 信彦

これまで10回にわたって、私の持論を書いてきました。

「目的に立ち返る」

「志をたてる」

「上達の法則」

など、テーマを絞って、実際私が学校現場で試行錯誤していることについて提案をしてきました。ご参考になれば幸いです。

今、学校教育は大きく変わろうとしています。明治維新以来の大転換期とも言われています。これまでも教育行政の改革は行われてきましたが、その時と何がどう違うのか。それは、皆さんもご存知のように、社会が、人々の生活が、価値観が今までとは全く異なってくる。そしてそれを予知することが困難であるといったこれからの不安定な未来予測が背景にあります。その流れの中で、当然のごとく、教育も変化を求められ、我々現場の教師も、これまでの価値観を見直さなければいけない時期になってきているようです。

では、学校現場では何がどう変わろうとしているのでしょうか。

部活動が変わる

部活動が変わろうとしています。私はバスケットボール部の顧問ですが、悩んでいます。土日のどちらかを休みにする。練習時間を制限する。中学からバスケットを始めた生徒が大半の中、どうすれば経験者の多いチームに勝つことができるか。勝利至上主義は、私も疑問を抱きますが、ただスポーツをしている限り勝ち負けにはこだわりたいし、生徒にとっても勝つことがモチベーションになります。いかに効率的に効果のある練習をするか。勝つこと以外にどういう価値観を生徒がもてるようにすればいいか。指導者も大きく変わらなければいけないようです。

今、ブラック部活に対して「ゆる部活」という言葉が広まっているそうです。月に1回集まって、ヨガをしたり、バランスボールで運動をしたり。運動が苦手だけど、体を動かしたい生徒にとってはありがたい取り組みです。ただこれを部活動というのかは、はなはだ疑問です。部活動の意義を再度見つめ直し、新たに構築していく時なのかもしれません。

学力観が変わる

知識、思考力、判断力、表現力などといった力は、いつの時代も求められる普遍的な力です。そこに異論はないはずです。ただやはり学校教育が弱点としているのは、「興味」という分野です。先日、あるテレビ番組で「探究学舎」という塾を取り上げていました。その中で、「興味を開発する」という言葉が出てきました。受験、テストは一切無視。とにかく子供の興味を呼び起こすことに全力を注ぐ。興味をもった子どもは、自分で探究し、そこから新しいものを生み出す。子供たちの目が輝いていたのが印象的です。正直、私の授業で生徒があれほど目を輝かせているかと言われると否定せざるを得ません。学校現場、特に公立学校では学習指導要領にのっとった指導を行います。すべての学習がすべての生徒の興味につながることはまずありえません。その中で、少しでも生徒の興味に火をつける、そして学力の向上も保証する。難題にも思えますが、そこを追求していくことが我々教師の永遠の課題だと感じます。

「PBL(プロジェクト・ベースド・ラーニング)」が私の中での小さなブームになっています。ここでは詳しくは書きませんが、これから求められる教育のエッセンスがここにつまっていると私は感じます。今は、大学や一部の私立高校で実践されていますが、これが公立の中学校で当たり前のように行われるようになると非常に面白いです。

公立学校のあり方が変わる

学校、特に公立学校の役割は何でしょうか。勉強をするところ、人間関係を学ぶところ、色々な経験を積む場、など多岐にわたるでしょう。つまりは何でもありなのです。実はここが大きな落とし穴で、我々教師も見落としがちなところなのです。あれも必要、これも必要と考えるときりがありません。当然、そのすべてを身につけさせるために100%で取り組むことも不可能だし、結局どれも中途半端に終わります。学校教育、中学校ならたったの3年間で、成長を促そうと考えると、重点化と計画性が不可欠です。3年間を貫くテーマを決め、それを計画的に配置する。しかも、そのビジョンを教職員の多くが共有できている。それができて初めて、効果的な教育が達成されるのだと思っています。

 

では、私が考える重点テーマとは何か。それは、「協働」です。

仲間と力を合わせて課題をクリアする。これまでも協働の大切さは語ってきたし、学校生活の中にもたくさんの協働場面があります。しかし、本当に協働ができているでしょうか。そもそも我々教師も協働ができているでしょうか。言葉で説明するのは簡単ですが、実際にやるとなるととても難しいことなのです。協働場面をごっこで終わらせるのではなく、計画的に意図をもって行う。個々の力だけでなく、生徒同士のつながりも影響することなので、一筋縄にはいきませんが、それだけ追求する価値はあります。結局、大人の社会でも、最も求められる力は協働力なのですから。

以上、これから変わるもの、変わらなければいけないものについて書いてきました。まだまだ、書ききれないことがたくさんありますが、もし機会がありましたら、またこの場を借りて色々な提案をしていきたいと考えています。

変化が求められると、それに合わせて色々なものを変えていくことが求められます。ですが、本質を見失った変化は、何も生み出さないという結果になります。本質とは昔から受け継がれてきた変わらないもののことです。

〝目的〟と〝志〟。これが教育の本質であり、これからいかなる変化がおとづれようとも、変わらず教育の柱となるキーワードです。このキーワードを忘れることなく、私は日々試行錯誤を繰り返しながら、新しいことにチャレンジしつつ、教育の本質を大切にした教育実践を、これからも続けていきたいと思っています。

谷 信彦(たに のぶひこ)

練馬区立豊玉中学校 主任教諭
「何のために?」をキーワードに、教育の本質を求めて日々現場でもがいています。

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