〝目的〟と〝志〟で振り返る教育実践(第1回)
今流行の「働き方改革」。仕事のペースを変えなければいけなくなりそう・・・。果たして時間をいじることが働き方の変化につながるのでしょうか。これからの働き方について考えていきます。
練馬区立豊玉中学校 主任教諭 谷 信彦
本当の働き方改革とは何か?
時間は有限である。
先日、埼玉県の現役教師が県を相手取り訴訟を起こしたという記事を目にしました。労働基準法で定められた労働時間を超えた残業代の未払いを求めたという内容でした。今後、教師の働き方に大きな動きがありそうです。まさに、「働き方改革」は一種の流行ですが、果たして労働時間を短くすることだけが問題の解決につながるのでしょうか。
「本当の働き方改革とは何か?」
働き方改革に対する懸案事項として、「業務量が減っていないのに、時間が短くなると仕事がやりきれないじゃないか!」
という声が聞こえてきます。確かに、今のペースで行っている仕事を、今より少ない時間でやり切りなさいと言われれば、非常に厳しいのは明らかです。
いったいどうすればいいのでしょうか。
それぞれの教育活動の目的は何か?
「何のために?」
この問いこそが真の働き方改革で必要とされる視座ではないかと思います。例えば、学校生活を振り返ってみます。
・登校してすぐの朝学習、そして朝読書。
・授業前後の元気な声でのあいさつ。
・最近流行りの話し合い活動。
・学級でのクラス会議。
・席替え。
・一人一役の係活動、委員会活動。
・清掃活動。
・部活動。
・運動会や校外学習、合唱コンクールなどの学校行事。 など
1年間を通しての教育活動はもとより、1日のなかでも非常に様々な教育活動が行われています。この中に無駄なこと、意味のないことは一つもないことは明らかです。だから、全国津々浦々、多くの学校で昔から当然のように行われていることなのです。
ですが、大切だからといって次から次へと積み上げていくとどうなるでしょうか。
現在、英語教育、プログラミング教育など、学校教育に求められることが雪だるま式に増えています。あれも大事、これも大事という気持ちはあっても、全てをやりきれるはずもなく、苦しんでいる学校は多いはずです。やったとしても、どれも中途半端になり、形骸化してしまうというケースも少なくありません。
そこで、この活動は何のためにやっているのか?つまり「目的」を一旦立ち止まって考えてみるとどうでしょうか。
例えば、運動会。
どの学校でも必ず行っている学校教育の中でも、一大イベント。あなたが勤務する学校の運動会の目的は何ですか?実施要項にその目的は書かれてあって、職員会議等で確認をします。しかし、暗黙の了解でその部分は通り過ぎ、具体的な内容へと話は進んでいきます。
運動会に限らず、多くの取り組みにおいて同じ現象が起きています。夜、布団に入って寝る前に、自問自答してみてください。「〜は何のためにやっているのだろう?」そうすると必ず眠れなくなります。目的が明確になると、周りの枝葉が取れて、木の幹が見えてきます。幹こそが、本当に大切にすべきことです。
繰り返しになりますが、すべての教育活動に無駄はありません。ですが、優先順位をつけて、本当に大切なことに時間をかける。そういったパラダイムの転換が、これから必要なのかもしれません。
目的の見直しが時間を生み出すことに繋がる
新しいことを取り入れることだけが教育を変えることではありません。今までやってきたことの目的を改めて見直し、その中でできることを少し変えてみる。そのことが結果的に、精選につながり、時間を生み出すことになるのではないでしょうか。
以降の連載では、学校教育で行われている様々な取り組みに対して、「何のためにやるのか?」を追求してみたいと思います。自分の実践を振り返りながら、みなさんと一緒に考えていきたいと思います。

谷 信彦(たに のぶひこ)
練馬区立豊玉中学校 主任教諭
「何のために?」をキーワードに、教育の本質を求めて日々現場でもがいています。
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