〝目的〟と〝志〟で振り返る教育実践(第8回〜中学生が夢や目標を達成するための4つの法則③〜)
中学生が夢を実現したり、目標を達成するための4つの法則を考えます。
練馬区立豊玉中学校 主任教諭 谷 信彦
毎日5分を積み重ねるとは?
さて、今回は前回に引き続き、「上達の法則」についてです。
いくら夢や目標をもっても、それを実現させるためのスキルや心構えがないと前には進めないというのが持論です。できるようになった経験や、正しい努力をすれば上達することを身を持って感じることが大切です。
その上達の4原則とは?
<上達の4法則>
①誰にでも才能はある
②得意分野1つを磨く
③毎日5分を積み重ねる
④最低二ヶ月
今回は、4つの法則のうち、③について書きたいと思います。
「毎日5分を積み重ねる」
前回、得意分野1つを磨くことが上達にとって欠かせない要素だという話をしました。何が自分にとっての得意分野なのか、それを見つけることからスタートします。
そして、次のステップとして、それをどうやって磨いていくのかということが問題になります。「得意分野は見つかったけど、それが続かない・・・」こういった悩みを抱えている人は多いのではないでしょうか。
自分の得意なことだから、放っておいてもやるだろう、と思ってしまうのが我々大人です。しかし、得意と行動がなかなか結びつかなくて困っている生徒も多いはずです。得意なことを磨くためには、やはり行動に結びつけられるきっかけが必要です。
それが「毎日5分を積み重ねる」です。
5分で何ができるの?と思わないでしょうか。やるんだったらとことん時間をかけないと意味がない。そう思う人は多いはずです。私もそうでした。やるからにはしっかりやらないとやった気にならない。しかし、やり始めの数日間は継続できても、毎日同じペースで続けることは難しい。三日坊主という言葉は誰もが知っていますよね。
仮にどんなに自分な得意なことであっても、それを毎日やり続けるのは至難の技です。では、どうすればいいのか。ポイントは、完璧を求めないことです。わずかな時間でいいから、とにかく毎日行動すること。
例えば、英語を磨きたいという人の場合、毎日1時間英語の勉強をすると決めてしまうと、息切れしてしまう可能性が高いです。それより、毎日5分でもいいから英単語を練習する、英文を読む、など小さな行動を積み重ねるのです。
「週に1回60分やるより、1日5分を7日間続けた方が効果がある」
1日5分を7日間だと、合計35分間です。時間だけでいうと週に1回60分に及びません。ですが、上達するために大切なのは、1日5分の積み重ねなのです。この効果が実感でき、習慣化されてくるとあらゆる面で向上します。
例えば、テスト勉強。社会科のテスト勉強に関して言うと、生徒の中にはテスト本番の数日前から出題範囲のワークをやり始める人がいます。一夜漬けという生徒も少なくはありません。確かに、それでもある程度の点数はとれるかもしれません。ですが、我々教師にとっては自明の理ですが、一夜漬けで身につけた知識は陳腐なものだし、ほとんど意味をなしません。ましてや、これからはただ用語を暗記するだけでなく、思考力が問われる問題が多くなる中、ますます短期的な学習では通用しなくなります。
そこで、生徒にはとにかくテスト2週間前(テスト範囲が配られる)から、毎日5分でもいいから社会科に触れなさいと言っています。これは社会科だけに限らず、他の教科も同じです。5教科を毎日30分しなさいというのは現実的ではありません。中には実行できる生徒もいますが、その数は多くありません。ですが、5教科5分なら25分。これならできる生徒は多くなります。
実際は、5分だけでは足りないのですが、最低5分に設定しておくと、動き出したその流れで、気付いたら30分、1時間やっていたということも珍しくありません。
要は、きっかけなのです。きっかけができると人は動きます。このきっかけが見つからずに、やるべきことができなくて困っている生徒が多いのです。
決して生徒たちの能力を低く見積もっているのではありません。上達の法則①で書いたように、誰にでも才能はあります。それを開かせるためには、小さなきっかけがなければいけないということなのです。
もう一つ、実際に私が生徒と一緒にやっていることを紹介します。それは、「ルーティンチェック」です。生徒が、毎日やるルーティンを一つ決め、それができたら◯を名簿につけていきます。極めて単純なことです。
ただ、以前にもやらせたことがあるのですが、上手くいきませんでした。その時は一人につき5個くらいのルーティンを設定させ、毎日チェックをしたものを提出させたりしていました。数が多くなるとやりきれないことが多く、「自分はダメなんだ」と思わせてしまった苦い経験があります。
そこで、今回は一人につき1個と決めました。どんなささいな事でもいいので、いかなる状況であっても必ずできる事を決める。そして、それを毎日やり続ける。
今現在、始めて1ヶ月ほどが経過しましたが、ほぼ◯が付いている生徒もいれば、そうでない生徒もいます。続けることの難しさを感じると同時に、この取り組みを根気よく続けていく大切さも強く感じているところです。
「小さな行動を繰り返すと人は変われる」

谷 信彦(たに のぶひこ)
練馬区立豊玉中学校 主任教諭
「何のために?」をキーワードに、教育の本質を求めて日々現場でもがいています。
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