2018.12.03
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〝目的〟と〝志〟で振り返る教育実践 (第4回〜中学生が夢や目標をもつために必要な4つのこと①〜)

中学生が夢を描いたり、目標をもつために学校現場で何ができるのか、4つのキーワードをもとに考えていきます。

練馬区立豊玉中学校 主任教諭 谷 信彦

中学生が夢をもつのはまだ早いのか?

最近よく考えることがあります。中学生の時にはっきりとした夢や目標(数年後の将来のこと、行きたい高校など)がある人は学習にも何事にも前向きな人が多い傾向があります。かといって無理やり「将来の夢をもちなさい」といっても意味がないことは明らかです。では、どうすれば中学生が自分の将来について関心をもったり、目標をもったりすることができるのでしょうか。

先日、将来の夢に関する記事を読みました。そこには次のようなデーターが示されていました。対象は、小学生から高校生までです。

・「将来の夢がありますか?」という質問。

小学生が高く、中学生になるとその割合が下がる。そして、高校生になるとまた割合が高くなる。

・「自分の将来について考えることがありますか?」という質問。

これは、年齢を重ねるごとに割合が高くなっている。高校受験や大学受験、就職活動をきっかけに自分と向き合う機会が増えということなのでしょう。

このデータの興味深い点は、中学生になると将来について考える機会が増える一歩で、具体的な夢をもっている割合が低下しているということです。実際に現場でも、職場訪問に職場体験などのキャリア教育が行われています。私の学校でも、それに加えて、職業人を招いて話を聞いたり、自己分析をしたりと、将来について考える機会をたくさん用意しています。ですが、先述の記事が示したデータと変わらない結果であることは否めません。

では、中学生が夢や目標をもつために何が必要なのでしょうか。色々とアプローチの仕方はあるでしょうが、私は次の4つのキーワードにこそ、そのヒントが隠されているのではと考えます。

<夢を描く4つのキーワード>

1.知識を増やす

2.経験値を増やす

3.「所属と愛の欲求」を満たす

4.「承認の欲求」を満たす

今回は、4つの内の2つ、「知識を増やす」と「経験値を増やす」について考えを述べたいと思います。

知識をふやす

1点目は、知識を増やすということです。知識がないと、想像力を働かせたり、興味の幅を広げることはできません。授業でもよく言われる、知識がないと深い学びにつなげることができないのと同じです。中学生は世間に対する知識が圧倒的に不足しています。それは当然のことかもしれません。学校と家庭という限られた空間の中でしか生きてきていないわけですから。世の中にはどのような仕事があるのか。今の時代、インターネットが普及して、情報を手軽に入手できるといっても、身近に感じられるのは先生という職業と親の職業ぐらいです。(親の職業についてもよく分からないのが正直なところですが)また、世の中にはどのような課題があって、大人たちはそれにどう向き合っているのか、ということも正直よく分かりません。

こういった現実に対して、いったい何ができるでしょうか。やり方は色々と考えられますが、例えば、とにかくたくさんの職業に触れる機会をつくることが大切かと思います。この先、今ある仕事の半分がなくなっていると噂されていて、職業を考えることに疑問をもつ意見もあります。ただ、その職業そのものではなく、働く人はどういう想いをもって働いているのか。志をもって生きたり働いたりすることの尊さなど、学べることはたくさんあります。そういったロールモデルに出会い、世の中を知ることが中学生にはとても大切なのではないでしょうか。

経験値を増やす

2点目は、経験値を増やすということです。人は経験からしか変われないという言葉があります。経験がもつパワーは偉大です。学校行事はその最たるものだと思います。私も自分の人生を振り返ってみると、人生のターニングポイントは、もれなく何らかの衝撃的な経験からでした。できることなら、学校以外の場所で多くの経験を積んでもらいたいところですが、生活のほとんどの時間を学校で費やす学生にとって、学校という場は経験値を積み上げる場でないといけないことが分かります。頭で考えだけでは見えてこないものが、経験を通して明らかになることもあります。自分自身を振り返ったり、自分にできることは何かを発見できるのも経験がなせる技です。

学校生活を見直してみると、生徒たちが経験を積める場はたくさんあります。教師が主体である限り、その場にちらばっている貴重な経験は見逃されているのかもしれません。もちろん職場体験など特別な経験を積む場を提供することはこれからも必要ですが、それと同時に、日々の学校生活の中で生徒たちが経験することができる機会を見つけ、それに挑戦させる姿勢が我々教師には必要なことかもしれません。

次回は、「所属と愛の欲求」・「承認の欲求」を満たすことについて書きたいと思います。

谷 信彦(たに のぶひこ)

練馬区立豊玉中学校 主任教諭
「何のために?」をキーワードに、教育の本質を求めて日々現場でもがいています。

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