2019.02.01
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

〝目的〟と〝志〟で振り返る教育実践 (第7回〜中学生が夢や目標を達成するための4つの法則②〜)

中学生が夢を実現したり、目標を達成するための4つの法則を考えます。

練馬区立豊玉中学校 主任教諭 谷 信彦

得意分野1つを磨くとは?

さて、今回は前回に引き続き、「上達の法則」についてです。

いくら夢や目標をもっても、それを実現させるためのスキルや心構えがないと前には進めないというのが持論です。できるようになった経験や、正しい努力をすれば上達することを身を持って感じることが大切です。

その上達の4原則とは?

<上達の4法則>

①誰にでも才能はある
②得意分野1つを磨く
③毎日5分の積み重ねる
④最低二ヶ月

今回は、4つの法則のうち、②について書きたいと思います。

「得意分野1つを磨く」

私たち教師は、日々たくさんの業務に追われています。授業はもちろんのこと、学級のこと、保護者対応、各種分掌、部活動などなど。また、授業といっても自分の専門教科だけでなく、道徳や総合の授業など、まさに教師は何でも屋ですよね。

ただ、それら全てに100%力を注ぐことは現実的に不可能です。そんなことをしていたら正直寝る時間や休みを削ってまでやらないといけません。常人には不可能ですし、そこを求める必要性を感じません。

理想を求めすぎて体を壊すより、現実的にできることに力を注ぐ。つまり、あれもこれもではなくて、自分の得意分野1つをとにかく磨くということです。この姿勢がこれからの働き方に求められていると思います。

例えば、社会科の授業。社会科は3つの分野を扱いますが、すべての分野が得意かといえばそうではありません。正直、得意や分野もあれば、そうではない分野もあります。もちろん教えるからには、教師も勉強をする必要はありますが、まずは自分の得意な分野を磨くことが大切です。公民的分野が得意だったら、その分野に関しては教材を集めたり、授業構想に時間をかけたり、他の実践にあたったりと、研究をすることが考えられます。

他の業務においても、同様のことがいえます。学級経営が得意な人はそれをまず磨けばいいし、事務作業が得意な人は誰にも負けないくらいまで高める。

最近は、一つのことに特化している教員より、すべてのことが平均的にやれる教員が求められている風潮があります。でも、全員が平均的だと面白くないですよね。最低限、やるべきことはやって、あとは自分の得意なことを磨く。たくさんの得意が集まって初めて、深みのある教育ができるのではないかと私は思っています。

ついつい平均を求めてしまう…

教員の立場での話になってしまいましたが、このことは生徒にも当然当てはまることですよね。ですが、私たちはついつい生徒には平均を求めてしまいがちです。

「すべての教科の勉強をきちんとやりなさい」
「部活だけやって勉強をまったくしない、ダメだ」

このような言葉をかけてしまったり、思ってしまったりというのが正直なところではないでしょうか。でも、生徒たちも私たち教師と同じで、得意なこともあれば苦手なこともある。また、学校に塾に習い事に部活動にと、やることはたくさんありすぎる。そんな現状の中で、生徒がもっている良さを引き伸ばすためには、

「得意なことを1つ磨く」

という視点で接していく必要性を感じます。

以前、私が担任をしていたクラスにA君という生徒がいました。部活動には入っておらず、勉強も好きではないという生徒でした。あまりにも勉強に向かう姿勢が見られなかったので、私は彼に自主学習ノートを毎日やってこさせることにしました。本人は嫌々だったので、半ば強制的にやらせましたが・・・。

ノートで勉強する内容は指定しませんでしたが、彼は英単語をひたすら書いてきました。理由を聞いてみると、それが一番楽そうだからというものでした。スタートしてしばらくは、やってきたりやってこなかったりで、私に叱られながらやっていましたが、次第にペースをつかんだようで、毎日提出できるようになってきました。そして、提出率に比例して、英語の授業で不定期に行う単語テストでも満点を取れるようになってきました。今まではテストで点数を取れた経験がなかったこともあって、彼自身とても嬉しかったようで、英単語に対して絶対的な自信をもつまでになりました。

その後は、筆記体を自分で学ぶようになったり、通信教育を家で始めたりと学習自体に前向きに取り組めるようになってきました。
彼は、英単語という一つのことを、自分の得意なことに変え、それを磨き続けたことで他のことにもいい影響を与えたことがわかります。

「学習の転移」という言葉があるように、一つのことを徹底するとそれが他の勉強、他の分野にも応用され、総合的に見て大きく成長しているということがあります。
これは、あれもこれも中途半端にやっている限り見ることができない現象だと思います。

まずは、自分が得意なことを見つける。そしてそれを徹底的に磨き続ける。それが上達をする上で欠かせない要素です。


次回は、3つ目の「毎日5分でも積み重ねる」について書きたいと思います。

谷 信彦(たに のぶひこ)

練馬区立豊玉中学校 主任教諭
「何のために?」をキーワードに、教育の本質を求めて日々現場でもがいています。

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop