2019.01.16
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〝目的〟と〝志〟で振り返る教育実践(第6回〜中学生が夢や目標を達成するための4つの法則①〜)

中学生が夢を実現したり、目標を達成するための4つの法則を考えます。

練馬区立豊玉中学校 主任教諭 谷 信彦

大型エンジンもガソリンがなければ動かない

新しい年を迎えました。毎年この時期になると心機一転、今年1年の目標を立てて頑張ろうという気持ちになります。

さて、これまでの連載では、目標や志をもつことの大切さを書いてきました。具体的な目標は大型エンジンです。目標があいまいな小型エンジンに比べて、その推進力はとてつもなく大きいことは明らかですね。私もこれまで学級で、部活動で目標の大切さについては幾度となく語ってきました。ですが、今振り返ってみると私は生徒たちに大型エンジンを搭載させることにのみ躍起になり、肝心のガソリンを入れることをしてこなかった気がします。

「ワクワクするような目標を立てよう!」
「自分が理想とする姿に近づけるように高い目標を立てよう!」

そう言って半ば無理やりに目標を立てさせ、結果的には多くの生徒が達成できず、反対に喪失感を味わわせることになってしまいました。いくら性能のいい大型エンジンがあっても、ガソリンがないとその車は動きません。動いても長く走ることはできません。では、ガソリンとはいったい何なのでしょうか。

それは、「上達の法則」です。

これまで私が関わってきた生徒の中で、目標が達成できなかった生徒は、この上達の法則が身についていなかったという点が共通しています。一方で、目標を見事達成した生徒や成果を出した生徒は、意識している、していないに関わらず、この法則を体現しているのです。この法則を知って以来、法則に沿って物事に取り組むことを生徒に促したところ、少しずつですが変容が見られるようになってきたという事実があります。では、上達の法則とはどういったものなのでしょうか。

上達の4法則

「上達の法則」は大きく4つに分けることができます。細かく見れば、もっとたくさんあるのでしょうが、それらを集約すると次の4つになるのです。

<上達の4法則>

①誰にでも才能はある

②得意分野1つを磨く

③毎日5分を積み重ねる

④最低二ヶ月

今回は、4つの法則のうち、①の「誰にでも才能はある」の法則について書きたいと思います。

〝才能〟という言葉はとても便利な言葉です。

「あの人は才能があるからできるんだ」

「私は才能がないからできないんだ」

言葉に出さずとも、心の中でこういった言葉が浮かんでくることはよくあるのではないでしょうか。テレビに映る才能あふれる芸能人やスポーツ選手を見ると、すごいなぁとただただ感心することはよくあります。一方で、自分のこととなった時に、この〝才能〟という言葉が一種の逃げの口実に使われることもよくあります。

生徒と話していると、「僕は暗記ができないんで・・・」「私は頭が悪いんで・・・」といった言葉を聞くことがあります。その時には必ず、「何を根拠にそういっているの?」と返します。自分には才能がないから、能力がないからできない。そういって物事から逃げてしまっていることは私も含めて多くの人が感じることではないでしょうか。

確かに、一流になろうと思ったら、人並み外れた才能は求められるかもしれません。そういった才能は生まれ持った要素もあり、誰でも手に入るものではないでしょう。ですが、そのレベルに到達できなくても、ある程度のレベルにまで到達できる才能は誰もがもっているのです。私も以前ギターに興味をもち、勢いで購入しました。ですが、やり始めてすぐに壁にぶちあたります。その時に思ったのは、「自分は楽譜も読めないし、音楽の才能があるわけでもないから、やっぱり無理なんだ」ということです。それ以降、ギターには指一本触れることがありませんでした。

私には、ギターを持って弾き語りをしている具体的なビジョンがありました。自由にギターを鳴らし、気持ちよく歌っている姿を想像していました。そういった目標が明確にあった私ですが、いざ動き出してみるとすぐにストップしてしまいました。結局、私には大型エンジンを動かすためのガソリンが入っていなかったのです。

目の前にいる生徒たちの多くが同じ経験をしています。定期テストで平均点以上をとるという目標を立てても、実際は何をどう勉強すればいいか分からず、成果も実感できないまま目標に届かず終わる。自分には才能がないから、能力がないからと正当化し、前に進めないでいる。そんな生徒はいませんか?

部活動でも、なかなか思うようにプレーできず、仲間たちに置いていかれるようで不安になる。意気揚々と入った部活動も楽しさから苦痛に変わっていき、だんだんと足が遠のく。自分には才能がないから、能力がないからといって練習に身が入らなくなったり、休みがちになったりする。そんな生徒はいませんか?

人によって元々の能力も違うし、理解力も違う。経験やセンスのある無しもあるかもしれません。周りと比べると、自分が今置かれている立場に不満をもち、自信をなくすこともあるかもしれません。ですが、そういった思考スパイラルから抜け出せない限り、上達することはないのです。

一人ひとり差はあるかもしれないけれど、

「誰にでも才能はある」

この法則は、②〜④の法則を支える土台となるものです。

誰でも上達の法則に基づいて正しい努力を続ければ、必ず上達する。今、自分はその方法を知らないだけ。あまりにもポジティブすぎる考えに聞こえるかもしれませんが、この考え方はとても大切なことなのです。

成果が出せず、自信を失いかけている生徒がいたら、

「あなたにも才能がある。今は、その才能を開かせる方法を知らないだけ」

この言葉が、上達に向かわせるスタートラインになるのではないでしょうか。

そんな私も、「自分にはギターの才能がある」と言い聞かせて、毎日ギターを手にしています。

谷 信彦(たに のぶひこ)

練馬区立豊玉中学校 主任教諭
「何のために?」をキーワードに、教育の本質を求めて日々現場でもがいています。

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