2024.06.20
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国際理解教育〜企業見学での学び〜(2)

こんにちは。
今回は、学校と地域の企業が連携した実践活動の例として、企業見学についてお伝えしたいと思います。

札幌市立高等学校 教諭 齋藤 菜奈子

きっかけは、生徒との面談×TOMODACHIの活動

三年生の担任を務めていた一昨年の二者面談で、薬学部進学志望の生徒と話していた時のこと。医薬品に加えて化粧品開発の分野にも関心があると聞き、すぐに一人の仲間が思い浮かびました。
共に女子大学生対象のリーダーシップ研修(TOMODACHI MetLife Women’s Leadership Program-TMWLP)でメンターとして活動した、株式会社アミノアップ取締役営業部長の三浦優美子さんです。
三浦さんから、関連会社の株式会社活里はプロダクツメーカーとして化粧品の製造もされていると聞いていたからです。
生徒が化粧品を製造する企業見学に関心を示し、三浦さんが活里の見学をアレンジしてくださったことから、平日の学校帰りに活里を訪問させていただくことが決まりました。見学前に、クラスで参加したい生徒がいるか聞くと、他5名の生徒もぜひうかがいたいと手を挙げました。

企業訪問のプログラム

6名の参加生徒には、事前に、活里のホームページを見て予習してくること、そして質問したいことや知りたいことを考えてくるように指導しました。
当日は、自転車や徒歩で訪れた生徒たちを、活里代表取締役社長の葛西徹哉さんと、三浦さん、そしてスタッフの皆さんが温かく迎えてくださり、会社の活動概要から始めていただきました。活里は、天然物を使って美と健康に関する機能性食品、化粧品、医薬部外品の製品開発と販売に加え、研究機関との連携による研究にも力を入れておられるとのこと。ビルのエントランスには、シャンプーやハンドジェルなど、生徒たちにとっても身近な分野の商品がずらっと並び目を惹きます。

次に、北海道の原料や、自然の香りを使用したハンドクリームの製作体験です。スタッフさんに用意していただいた材料と、それぞれが選んだ好きな香りを調合していく生徒たち。やさしいアロマに癒されてもの作りに取り組む時間は、受験勉強のプレッシャーと闘う生徒たちにとっても貴重な時間になりました。

製造設備の説明では、ご用意いただいた白衣や衛生帽子を身につけ、さまざまな工夫と努力により衛生状態を保っていることを体感しました。ハラール、輸出、エビの殻などの原料も加工して需要があるということなど、国際的なトピック、またSDGsについての観点においても深い学びがありました。

質疑応答では

最後に、葛西さん、そして三浦さんを囲んで質疑応答の時間です。生徒たちの関心はさまざまで、企業活動のみならず、お二人の社会人経験についても質問していました。将来経営者になる目標がある生徒は、葛西さんから、自分で起業する以外にも、社員から社長になる方法もあると教えていただいきました。
社員から社長になる場合は、自分の経験を通して社員の気持ちも分かる経営者になることができるのではないかと聞き、大変感心していました。また、お二人から、経営ではお客様、地域社会の方々、スタッフさんたちへの重大な責任があるということ、目の前にあることに一生懸命取り組むことが次のステップにつながること、そして三浦さんから海外勤務の経験についてもうかがい、大いに視野が広がったようです。

生徒からの感想として、経営陣として大きな責任を担うためには、経営の知識に加え、多くの人と協力することやリーダーシップ能力、地域社会に貢献すること、そして何より人間性を磨くことが非常に大切だと気づいたという感想も出ました。

生徒たちの進路、未来へつながる活動へ

このような体験は、自分たちの地域にある企業がどのような活動をしているのか知り、SDGsや職業観について学ぶことができる大切な機会です。また、理系と文系の仕事内容がチームとして一つの企業内で働いている様子を見たことも、将来の職業観をイメージする助けになりました。
企業訪問に参加した生徒たちは、高校三年間新型コロナウイルスの影響でさまざまな教育活動や、コミュニケーションが大きく制限されていました。学校外の施設を見学することや、家庭と学校以外の大人とコミュニケーションを取る機会は非常に限定されていたこともあり、大変貴重な経験となりました。

企業見学に参加した生徒たちは、一般受験、総合型選抜、指定校や公募推薦入試、留学など、さまざまな形で羽ばたいていきました。総合型選抜や推薦入試では、この企業訪問での学びを、大学生活やその後の進路に結びつけた内容で小論文を書き、面接に挑みました。
活里の皆様に、生徒の興味・関心の芽を育む取り組みにご協力いただいたことに感謝しています。今後も生徒の成長をサポートするために、学校外の出会いやさまざまな機会を大切にし、教育活動につなげていきたいと考えています。

齋藤 菜奈子(さいとう ななこ)

札幌市立高等学校 教諭


アフリカやアジアで、教育担当官として児童や教員の支援に携わった後、十数年前に公立高校の英語教諭に転職。勤務校では、海外の高校との交流、フェアトレードやSDGsをはじめとする実践を通じ、英語を使いながら学び、多様な文化への興味関心を高め、地域社会や海外に貢献する教育活動を取り入れている。
社会活動では、米日カウンシル が主催するTOMODACHIイニシアチブで、大学生のメンターとして四年間活動し、女性・若者のリーダーシップ能力育成に努めてきた。

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